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□ニックネームは悪口であってはならない
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「ダッツ以外な」
「じゃあハイパーカップでいい?」
「いいけど、カップアイスは歩きながらじゃ食べづらくないか?」
「別に気にしませんけど」
「ならいいけど」
俺はハイパーカップの超絶バニラ味を選び、京治は無難に棒つき氷菓子のソーダ味を手にとった。
京治がレジに並んでいる間、俺はてきとうに店内を見てまわった。すると、冷蔵コーナーのスイーツが置いてある棚の前に、あのそばかす君を発見した。シュークリームやプリンの他、チーズケーキやショートケーキなどの本格スイーツをじっと凝視している。
「おぬし、やりおるな」
「へっ!?」
「寝る前にスイーツとは、相当の甘党と見た」
そばかす君―—もとい、山口の隣に移動してふざけながら声をかけると、山口は俺の存在に気づいていなかったらしく、びくりと体を震わせて軽く飛び上がった。
「あ、こ、こんばんは」
「こんばんは」
「えと……あの、これは俺のじゃなくて……」
「なに。誰かにあげるのか。夜中スイーツなんてただの嫌がらせだろ」
「で、ですよねぇ」
山口は苦笑しながら笑い、頭をかいた。すぐに視線が下に向く。覇気がまったく感じられない。
「ツッキーなら大丈夫だぞ。ふっきれたっぽいからな、ある程度は」
「え……?」
「俺じゃなくて光た……木兎さんのおかげだけど」
「そう、ですか……! よかった」
山口が顔を上げて、今度は明るく笑った。
「ツッキーにも分かってほしかったって気持ちがあって、でもやっぱさすがに言いすぎたなって思ってて……」
「へー。なんの話かよく分からんが、別にいいんじゃねーの。お前ら友達なんだろ? チームメイト以前に」
そういうもんだろ、と続ければ、山口は目を見開いて、笑顔で「はい!」と元気よく返事をした。
山口と別れて、会計を終えて入り口付近で待っていた京治に駆け寄った。外に出てからアイスを受け取ると、早速開封して歩きながら食べた。
「……俺らってさー」
「うん?」
「ケンカ、したことねーよな」
「したいのか?」
「したくない」
「なんだそれ」
「だって、京治相手じゃケンカになんねーって。理詰めで言いくるめられてはい論破って感じになりそう」
「そこまでじゃないと思うけど」
「そうかね」
ぼんやりと京治の横顔を一瞥して、こいつとはケンカなどして別れたくはないな、と心の中で強く思った。
続く