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□みんなでやればきっと楽しい、いつも楽しい
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確かに俺はいいけれど、他の人を巻きこんでしまったのはいただけない。大部分を俺が担当するくらいの意気でいかねばならない。
こうして、時間がもったいないとして、俺プラススタメンの人たちで急いでプールまで移動した。水はすでに抜けていて、空っぽの状態になっている。
「広い……」
「覚悟はしてたけどなぁ」
「で、どうすりゃいいんだ?」
「まず側面の汚れを落としてから底という順がいいそうです。底を先に洗っても、側面の汚れが落ちて二度手間になってしまうので」
「よーし、じゃあ全員でかかるぞ!」
「おー!」
光太郎さんが号令を発して、俺が元気よく返事をする。他の面々は返事をせずに、各々でデッキブラシを手に取った。そして、京治の「濡れていて滑りやすいので気をつけてください」という注意を聞きながら、プールの中へと下りた。
普段から専門の業者が専用の道具で掃除してくれているおかげか、それほど汚れてはいなかった。だがしかし、一応罰ということなので、隅々まで洗うつもりでブラシを動かしていく。
「壁こすんの結構大変だなー」
「柄が邪魔だよな。ない方がいいよな、これ」
「なー見て見て。この汚れ……幽霊の手形じゃね?」
「え!? マジすか!?」
「……いや、それはただのシミだろう」
「誰か俺と競争しようぜ! こっからここまで!」
「勝手に1人でやってろ!」
「俺やるっスよ」
「転んで滑ってケガしたら問答無用でしばらく練習は見学にするからそのつもりで」
「……気をつけながら競争な!」
「ういっす」
光太郎さんと俺が競争という名目で手早くやったことで、意外にもさくさく進んだ。側面全体をこすり終わると、上からマネージャー2人がホースで水をかけて流した。そして今度は、底にたまった汚れをこすり落とす作業だ。
「なんだよこれ、全然落ちねぇんだけど……!」
「落ちない汚れにはこの洗剤使ってください」
「あ! 赤葦、俺に貸して!」
「誰が貸すか! お前絶対遊ぶつもりだろ!」
「マジメにやれよなー。誰のせいでこうなったと思ってんだよ」
「光太郎さん、競争は?」
「待ってろ。ちょっと洗剤を……」
「あ、てめ! ダメだっつっただろ!」
「よーし! いくぞ蜜森!」
「合点承知」
再び光太郎さんと競争をした結果、泡だらけになって水で洗い流すのに時間がかかり、日が陰る頃になってようやく終わった。結局予測どおり1日かかってしまった。
「なんだろう……めちゃくちゃ時間を無駄にした気分」
「右に同じ」
「すみませんっス。お詫びになんか奢るっスよ」
「言ったな!? コンビニアイス1つで許されると思うなよ!?」
疲労困憊状態の先輩方に言うと、木葉先輩と小見先輩と猿杙先輩がたちまち目を見開いて詰め寄ってきた。