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□黒尾さんの場合
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監督からマネージャー志望の1年生が入ったと聞かされ、ほっとしたのも束の間。それは女子ではなく男子だという。

男子でマネージャーをやりたがるなんて、その動機はたかが知れている。他の部活に入るのが面倒だからとか、楽そうだからとか。大抵ネガティブなものばかりだ。

校則で部活に入ることを強制されている以上、そういう者が出るのは十分想定できる事象ではあった。それが、よりにもよってうちで起こるとは思いもよらなかったけれども。

姉が経験者でマネージャーの仕事については色々手ほどきを受けてあると聞いても、やはりネックになるのは本人がバレー自体は未経験だという点。急募していたとはいえ、やっぱ無理ですと即行で辞められる前に断った方がいいような気さえしてきた。



「明日からは入部した新1年生も練習に加わるから、承知しておいてくれ」

「はい!」



コーチの言葉に、全員でそろえて返事をする。直後、横で座っていた監督が立ち上がる。



「ああ、それとな。マネージャーが入ることになったから、大事に扱うように」

「えっ!? マジすか!?」



ああ、言っちゃったよ。

監督がいつもの不敵な笑みを浮かべて告げると、いち早く山本が反応する。ヤツは女子マネージャーの出現を部員の中で誰よりも切望していたからだ。『女子』マネージャーを。



「クロ」

「んー?」

「なに企んでんの?」



帰りの電車の中で、いつものように横に座っている研磨が、ポータブルゲーム機を操作しながら聞いてきた。
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