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□FはフレンドのF
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入部してから2週間。

土日も関係なく部活に追われる日々を過ごし、少しずつではあるができることが増えてきた。転ぶ回数も怒られる回数もあまり減っていないけれど。

一番嬉しいのは、やはり練習風景を間近で見られること。



「風、もうちょい高めにして」

「はい」



スパイク練習では、セッターの研磨さんにボールを出す係をすることもある。手が空いていればの話。

みんながバシバシスパイクを打っていく様は、まさに圧巻。これぞバレー部。で、ついにやにやしていたら、「なに笑ってんだ」と控えていた夜久さんに怒られた。回収したボールでいっぱいになったかごを移動させるときに転んで、また怒られた。

そんな感じで、もうわくわくが止まらない今日この頃。追い打ちをかけるように、さらにわくわくする出来事が待ち受けていた。否、使い方間違ってるとか言わないでね。良い意味での追い打ちだから。これは悪タイプじゃなくて、フェアリータイプの技だから。

その追い打ちとは、梟谷学園高校との練習試合。

元々我らが音駒は、お偉いさんか誰かの発案でできた梟谷学園グループなる組合のようなものの中に組み込まれている。他にも関東圏の強豪校が名を連ね、たびたび練習試合を行なっているそうだ。

強豪校との練習試合は、経験値を底上げするのに最適といってもいいだろう。他を知るとは己を知ること。なんて、ちょっとカッコつけてみたりして。



「なんか楽しそうだね、蜜森くん」



放課後の練習の後に床のモップがけを1年のみんなとしていると、近くを通った芝山くんが話しかけてきた。



「ん? いつも楽しいよ?」

「や、いつも以上に機嫌良さそうに見えたから。なにかいいことでもあった?」



そういえば、山本さんに鼻歌なんかうたってんじゃねーよ、と1回怒られたなぁ。なにをうたっていたのか覚えがないけど。



「だって、明日梟谷行くでしょ」

「ああ、練習試合? それが嬉しいの?」

「芝山くんは嬉しくないの?」

「うーん……まぁ、レギュラーじゃないしね。万が一に出してもらえたとしても、すごいスパイカーがいるって話だから」



嬉しいより不安が大きいかな、と無意識なのか胃の辺りをさする芝山くん。胃薬どうぞ、と差し出せば、少し驚いた顔をして受け取ってくれた。



「なーに弱気なこと言ってんだよ、芝山! 先輩たちにもフクロウダニの人たちにも、自分の実力見せつけるいいチャンスだろ!?」

「や、だから俺レギュラーじゃないから……」

「俺も楽しみ! やっぱ練習試合ってわくわくするよな!」



芝山くんとの会話に割って入ってきたのは、モップでふざけて戦っていた灰羽くんと犬岡くんだ。フクロウダニって、灰羽くんが言うとなんだかダニの種類のように聞こえるね。

そういえば、僕の勘違いか、それとなにか企んでいるのだろうか。最近、灰羽くんを見る監督の眼力が異様に鋭いように感じる。アナライザー・アイでも発動しているのかと思いましたよ。熟練の監督ともなれば、裸にならなくても正確に視認できるんでしょうね。
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