hq!!小説


□DはディナーのD
1ページ/4ページ



合宿は普段の部活とは違って、部員たちと寝食を共にする。

今回利用している合宿所では、食事もセルフで用意しなくてはならない。ようするに、練習中の仕事プラスアルファ食事の用意もあるということ。

限られた食費でおさまるように、かつ余りすぎないように献立を考えるのはかなり骨が折れた。合宿では、食事というのは一番といっていいほどの楽しみである。モチベーションをあげるのに重要な部分なので、各部員の好みを事前にリサーチして、なるべく取り入れるようにしつつバランス良い献立を考えて……ああ、頭がパンクしそうだ。

ところで、明日はいよいよ烏野高校との練習試合がある。力をつけてもらうべく、今日の夕飯のメインはがっつり系代表、鶏の唐揚げである。

食堂のテーブルには、山盛りの唐揚げが合計4皿。他は、変わり種として大葉巻きささみフライにアジフライ。レタスとトマトの生野菜サラダは小皿に1人1皿。汁物は中華風かきたま汁だ。



「うおおおお!!」



食堂に入るなり、奇声を上げた人物が1人。続けて、2人ほど。最初の声の主は、おそらく犬岡くんだ。実をいうと、鶏のから揚げは彼の大好物。



「犬岡、よだれ」

「あ、失礼しました!」



夜久さんに言われ、犬岡くんは我に返って垂れそうになっていたよだれを袖で拭った。



「お、アジフライまであんじゃん」

「なにこの細長いやつ」

「すげー! こんな山盛りの唐揚げ初めて見たんだけど!」

「たくさん作ったなぁ。大変だったんじゃないか?」



はい、黒尾さん。魚派の人のためにですよ。

夜久さん、それはささみフライです。

リエーフくん、雪崩起きたら大惨事だから崩さないでね。

海さん、いえいえそれほどでも。

それぞれの反応が面白い。作ったかいがあったというものだ。



「ご飯盛るので、好きな量の申告お願いします」

「蜜森! 俺、山盛り!」



真っ先に手を挙げたのは、やはりというか、犬岡くん。そうだね、君は白飯も好きなんだったよね。でも、上級生の分から先に盛っていくから待っててね。



「黒尾さんは何盛で?」

「大盛り」

「大盛りは六本木ヒルズ盛りと東京タワー盛りがありますが」

「……ちょっとなに言ってんのか分からないんですけど」

「ただのイメージです」

「ああそう……じゃあ、ヒルズ盛りで」



ただの大盛りとか並盛りとかいう普通の名前ではつまらないと思い、テキトーにつけただけである。ちなみに、山盛り、大盛り、並盛り、小盛りの4種それぞれに2種類の呼び方を考えてある。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ