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□HはホリデイのH
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中間テストはみんな、無事に突破した。赤点ギリギリの教科があった人もいたみたいだが、パスしたことには変わらない。うん。受かればいいんだよ、受かれば。

ちなみに僕はというと、見事ギリギリ30位になれたので、約束どおりシフォンケーキを作ってもらえましたとさ。ちゃんちゃん。

これで、6月末に行われるインターハイ予選に集中できる。今までどおり練習に明け暮れる日々を過ごして、その日はあっという間に過ぎ去った。

そう、過ぎ去ってしまったのだ。



「…………」



昼休み、前を歩くリエーフくん、犬岡くん、芝山くんの背中は、丸まっている。明らかに落ち込んでいるように見えるその理由は、痛いほど理解できる。

我が音駒高校男子バレー部の今年度の成績は、都大会ベスト8で終わったからだ。

試合後はみんな口数少なく、必要最低限の言葉はほとんど出なかった。未だにそんな状態だ。そんな人たちに、自分はなにができるというのか。

ふと、試合前に黒尾さんが必ず言っていたことを思い出す。研磨さんは脳で、みんなは血液。

じゃあ、僕は? 音駒という体を作るなにかに、なれているのだろうか。



「今日は元気ないね、犬岡くん」

「えっ」



大会があった関係で、今日は部活が休みだ。それでも、いつもの習慣でみんなそろって部室で昼食をとっていた。

ターゲットにしたのは、いつもは猛烈な勢いでお弁当を口に詰めこんでいるはずの犬岡くん。妙に大人しく、うつむき気味だったので声をかけると、すぐに顔を上げて驚いた表情を見せる。



「好きなおかずが入ってなかったとか?」

「……そんなんじゃないけど」

「そう? みなさんも、お葬式みたいな雰囲気ですけど。どうかしました?」

「どうかしたって、お前な」

「? 楽しみじゃないんですか? 次は春高ですよ」



全員の動きが一斉に止まった。

ぼんやりと弁当あるいは購買のパンを食べていた人も、顔を俯けたり、遠くの景色をぼんやり眺めたりしていた人も、空気読まないアホの子に怒りの矛先を向けていた人も。



「7月に入ったら合宿が立て続けにあるし、夏休みが明けたらすぐ予選ですよ。都大で負けた相手にリベンジできるかもしれませんよ。ね、楽しみじゃない?」

「そうっスよ! 全員出ますよね!? まだ引退しませんよね!?」



リエーフくんが立ち上がり、固まって座っている3年生たち――黒尾さん、海さん、夜久さんに詰め寄った。僕は隣の芝山くんに話を振ったんだけどな。



「ばーか。当たり前だろ」

「引退とか、お前なにふざけたこと言ってんだ?」

「ぎゃ! 痛いっス!」



リエーフくんがまた夜久さんに蹴られている。あれは完全にとばっちりだ。

お葬式な雰囲気から一変、場の空気はいつものどうでもいい会話が飛び交う賑やかなものに戻った。これがいい。これが一番だ。
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