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□PはプロブレムのP
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時間はあっという間にすぎる。いえ、別に忙しすぎてここ数日の記憶がないとか、そんなことはないですよ。断じて。
季節は、真夏。夏休みも終盤に入ろうとしている。そんな時期になにが問題になるかって、そう。例の長期合宿。夏休みの宿題じゃないですよ。あんなの、序盤にちゃちゃっと片付けちゃいましたからね。
今回の合宿地は、埼玉の森然高校。学校全体を貸し切って、我らが音駒高校、梟谷学園高校、そして前回の合宿と同じく烏野高校も加わって行われる。一同が同じ体育館に集まって練習をする様は、まぁなんていう巨人の巣窟でしょう。僕はおいしくないですから。ホントに。
とにかく邪魔にならないよう、周りをよく見ながらマネージャーとしての仕事をこなしていく。初日はそんな感じで気を配っていたので、割とリベロの夜久さんの近くにいたことが多かった気がする。
「お前さ。1日でもいいから今日は1回も転ばなかったって日を見せてくんね?」
「ないこともないです」
「ほー? いつだよ?」
「えっと……確かあれは小学生の……」
「そんな昔のはノーカンに決まってるだろ!」
と、いうようなカンジで叱咤激励されていました。
そして、1日目の夜。
練習後も自主練をする人は予想以上に多く、そんな戦場の中を使用済みタオルの回収に走りまわっていた。
「あ、風! まだ仕事してんのか?」
「お疲れ様、リエーフくん。これ済んだら一応終わりだよ」
全体練習の分は、だけど。音駒の人たちも自主練する人がいるみたいだから、まだ上がれそうにない。
「そっかー。じゃあ、俺も手伝ってやるよ!」
「え? や、大丈夫だよ。疲れてるでしょ?」
「いいっていいって! いつも風には世話になってるから……」
「じゃあ、手始めにこっち手伝ってくんねぇかなぁ」
使用済みタオルでいっぱいのカゴを持とうとしたリエーフくんの肩を、背後に立っていた人が叩いた。ものすっごい、黒いオーラを発しながら。
そのオーラに当てられたリエーフくんは、冷や汗を流しながらガタガタと震えだした。
「お前は蜜森の手伝いしてる場合じゃねぇだろ! この合宿中に、基礎は全部完璧にできるように叩きこんでやるから覚悟しろ! まずは基礎中の基礎! レシーブ練だ!」
「これからっスか!? ちょ、カンベンして下さいよぉ!」
「ぐだぐだ言うな!」
身長差をもろともせず、夜久さんはリエーフくんのシャツの背中部分をつかんで引っ張り、強制連行していった。頑張って、と意味をこめて手を振っておいた。
あれ。そういえば、黒尾さんの姿が見当たらないけれど。また木兎さんに自主練のお誘いがあったのかな。ドリンク用意した方がいいかな。
「ねぇ」
カゴを持ってえっちらおっちら走っていると、近くで誰かが声をかけてきた。