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□向上心、空回りのち奇跡?
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次の日も、その次の日も、またその次の日も。

鬼のような基礎練習をこなして、くたくたのボロ雑巾のようになって帰宅し、泥のように眠る。そんな日々の繰り返しだった。同学年で入部した者の中でもリタイヤした者がちらほらいて、気づけば数十人と大勢いたはずの同期が、十人を超えるかどうかというほどしか残っていなかった。そのほとんどが、中学時代にバレー部に所属していた経験者だった。



「お前、よく続いてんな」



クラスメイトの数人から、似たような言葉をかけられた。その表情は、呆れや感心、からかっている雰囲気の者など、様々だった。俺はその問いに、必ずこう答えた。だって『部活』ができているから、と。

確かに、思ったようになんて全然いかないし、なにが楽しいのかと疑問を抱くのは間違いではないだろう。だが、ろくにボールに触れられなくとも、基礎練習だけで終わっても、これが部活なのだと実感できるだけで十分だった。

欲を言えば、あのときの、京治曰く武勇伝のあのサーブ。思いきり打った感触は悪くなかった。ホームランせずにちゃんと入れば、そしてあわよくばサービスエースなんてとれたら、それはそれは気持ちがいいだろう。そんなふうに想像する余地まであるから、やめたいなどという考えは微塵もわいてこないのだ。



「…………」

「すいませーん。姫野がまた突き指しましたー」



このとおり、ケガは多いけれど。手当てしてくれるマネージャーの、雀田さんあるいは白福さんが「またか」という目をするようになったのも、お約束である。



「今日はここまで。自主練していく者は……」

「はーい監督! オレオレ!」

「……するのは自由だが、後片付けと施錠。くれぐれも忘れるなよ。以上だ」



「お疲れっした!」と、運動部らしく省略された挨拶が体育館に響く。

この日の放課後も、各々がゾンビ化しながら終了時間を迎え、体育館から着替えのために部室へと戻っていく。しかし、その中で監督の号令に割って入った人物だけは、ボールを手に辺りをそわそわと見回していた。

俺が初めてサーブをしたとき、ただ一人応援してくれた人物。名前は、木兎光太郎。2年生でエースを豪語していて、練習中も騒がしくて一番目立っている人だ。



「なあなあ、アカシくんだっけ」



モップがけをしていると、木兎先輩が京治に近寄って声をかけていた。



「いえ、赤葦です」

「Sだよな? ちょっとスパイク練習付き合ってくんない?」



木兎先輩の誘いに、京治は「じゃあ少しだけなら」と承諾した。
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