鬼滅小説


□捌
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金属がぶつかり合う、甲高い音が何度も鳴り響く。それは、刀と刀がぶつかり合う音。

実力は拮抗していて、手に汗を握るような戦いが続く。が、ついに勝敗がついた。



「っ……」



一方の刀が一方に振り払われ、払った方が丸腰になった方の首元に剣先を突きつける。遅れて、弾かれた刀が二人から離れた床に突き刺さって止まった。



「はい。錆兎の勝ちー」



審判役をほぼ無理矢理させられた俺が勝敗を宣言すると、二人はほぼ同時に張り詰めていた緊張をとくように大きく息を吐いた。



「義勇、お前強くなったな」

「……世辞を言うな。それとも、嫌味か」

「違う。お前がガンガン強くなるから、こっちも休んでられないって話だよ」

「それは嫌味じゃないのか」

「なんでそんなひねくれた考えしかできないんだ」

「はいはーい。そのへんにしてちょうだいな」



一触即発な雰囲気の二人の間に割って入り、仲裁する。

ちなみにここは、蝶屋敷の道場。本来は傷病者の機能回復訓練に使われる場所である。もちろん、この二人はどこも悪くしていない。

否、しいていうなら、頭だろうか。



「お前らさぁ。手合わせがしたいなら、他にも場所あるだろ。なんでわざわざうちに来るわけ?」

「十羽の顔を見にきたら、たまたま義勇も来てたから。手合わせする以外にないだろう。な?」

「な、じゃない。義勇も頷くな」



錆兎が同意を求めると、義勇も当然だといわんばかりに真顔で頷いた。

主であるカナエ様に先にお伺いを立てると、笑って許してくれた。一方で、しのぶ様は苦い顔をしていた。言いたいことは俺と同じだろう。



「じゃあ、次は俺と十羽な」

「な、じゃない。俺はやらないからな」

「なんでだよ。お前だって日輪刀持ってるだろ?」

「持ってるよ。万が一のときの護衛用にな」

「そんなの飾りにしてるようなものじゃないか。いざってときに使おうとしても、腕も刀も錆びてたら元も子もないぞ」

「十羽、錆兎が嫌なら俺が相手をする」

「いいですか、義勇さん。錆兎が嫌なんじゃなくて、そもそも手合わせするのが嫌なんですよ俺は」

「おい義勇。俺が先に十羽を誘ったんだぞ。人の獲物をとるな」

「錆兎が、十羽が嫌がることをするからだ」

「ちょっと人の話を聞け、お前ら」



蝶屋敷に勤めるようになったと打ち明けてから、何度似たような光景を見てきたか。
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