DC小説


□T
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首都高で大規模な多重事故があったという一報が入った。

巻き込まれた乗用車の運転手によれば、車ごと宙に浮いて落ちたときに大型トラックと衝突したそうだ。その衝撃で車は炎上。ケガ人なし。奇跡だ。

ぶつかってきた最初の1台を追うように、白と赤のスポーツカーがカーチェイスをしていたという証言もあったらしいが、その3台の行方については現在のところ不明。これ以上確かな情報が入る見込みはないため、編集長から別の記事を依頼された。

その記事とは、事故とは真逆の世界。最近、リニューアルオープンしたばかりの東都水族館である。



「なーにが悲しくて、野郎1人で水族館来なきゃなんねーのかなぁ」



チケットを購入して中に入り、1人虚しい呟きをもらす。

先輩である女記者と一緒にいくはずだったが、数日前にお転婆をやらかしたとかでその火消しに回るはめになったという。なにをやったのかは、まぁ、聞かないでおいた。君子危うきに近寄らず。

ひとまず、1日ですべてを回れるようにリサーチはしてあるので、それに従って回ることにした。

何ヶ所かアトラクションを見て――水族館じゃなくて遊園地だろ――写真を撮りつつ歩き、一番の目玉である二輪式観覧車の入り口付近にさしかかったときだった。見知った人物たちを見かけ、足を止める。



「あー! 雄飛お兄さんだ!」



まっさきに気づいたのは、ヘアバンドをした少女。その声に引かれて振り返る、他の面々。プラス、見知らぬオッドアイの女性。



「よー、チビッ子連合諸君。会いたくなかったぜー」

「えー!?」

「なんだよそれ!」

「心外ですね。そのチビッ子連合っていう言い方も、いい加減やめてください」



歩美、元太、光彦の抗議を受け流し、きょとんとして黙っているコナンと哀に近づく。



「で、誰」

「唐突だね……あのお姉さんのことなら、まだはっきりしたことは分からないんだよ」

「んー? どーゆーことだぁ?」



コナンが手招きをする。その場にしゃがみ、耳を寄せた。



「……入口近くのベンチに1人で座ってたんだ。で、話しかけてみたんだけど、なにも覚えてないって」

「つまりー、どこぞのベタなドラマかマンガでありがちな設定、記憶喪失だとー?」

「う、うん。そうみたい」

「お前の見解はどうなんだぁ?」

「おかしなところはなかったよ。嘘はついてないと思う」

「はぁ……まー、名探偵がそーいうんなら、そーなんだろうなぁ」



どこの誰なのか分からない謎の女性。片方が白目と同等の薄い色をしたオッドアイ、薄いグレーのセミロングヘアー。なにをしていたのか、服のところどころに汚れやすれたような跡がある。なにかの事故にでもあって、その衝撃で記憶を失ったとかか?
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