DC小説
□突き放されたらそばにいたくてたまらなくなるの法則
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初めての直接会話による任務は、理解不能なうちに失敗に終わった。
降谷の安否については、昨日数時間後に「無事だ」という一言だけのメールをもらったことで確認できた。ただ、安堵したのは束の間の出来事だった。
今朝のニュース番組の話題は、国際会議場の爆破事件でもちきりだった。各国の要人が集まる予定だった場がそんなことになってしまったのは十分大事件だが、注目すべきは早々に容疑者として挙げられた人物。
それは、毛利小五郎。
いてもたってもいられなくなり、部屋を飛び出して探偵事務所へ慌てて向かった。
「雄飛さん!」
事務所が見えてきたところで、反対側の歩道にいたコナンに呼ばれ、駆け寄った。
「ニュース見たぞ。大丈夫か」
「……うん」
大丈夫なわけがないだろうが。
沈んだ様子のコナンは、俯き加減で返事をした。
ニュース番組で報道されたということは、容疑者として浮上した小五郎はすでに警察に身柄を拘束されているのだろう。その場にいたであろうコナン、そして娘の蘭の心境を考えると心が痛む。
「これからどうする」
「警視庁に行って、捜査状況を確認してみるよ」
「お前1人で?」
「目暮警部に連絡とってあるんだ。新一兄ちゃんに頼まれたって言ってね」
「……じゃあ、そっちは任せた。俺もネットから情報収集してみる」
容疑者として逮捕されたら、次の段階は起訴、つまり裁判だ。裁判が始まってしまえば、証人以外の外部の者は一切関与できなくなる。時間はあまり残されていない。
「雄飛さん……手伝ってくれるんだ?」
「あ?」
「それとも、それも安室さんからの指令?」
訝るような目を向けられ、意気揚々と情報収集にあたろうとしていた気持ちがしぼんでいった。
「……どういう意味だ」
「知らないわけないよね? おじさんが犯人だって証拠を見つけてきたのも、逮捕に踏み切ったのも……公安の人たちだよ」
二の句が告げなかったのは、コナンの疑念に満ちた鋭い目線にやられたからではなく、告げられたその事実に対してだった。
証拠を提示し、小五郎を逮捕したのは公安? つまり、それは降谷の指示? 一体なんのためにそんなことを。
謎が謎を呼び、混乱してきた。それでもなんとか我に返り、目の前の子供の姿の新一と向き合う。
「……分かった」
それだけ言って、踵を返した。