DC小説
□告白は捨て台詞のように
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都内でIOT家電が暴走する事件が多発しているというニュースを耳にして、俺もすぐに呼び出された。
アパートの管理人さんに。
「ごめんねぇ。ドラマ見てたら、急にボンって爆発したのよ。もう怖くてねぇ。どう? だめそう?」
「……そうですね」
今年70になった老齢の女性は、新しく買った携帯の設定方法を俺がレクチャーして以来、携帯はもちろん他の家電トラブルについても相談してくるようになった。
ただ、念のために言うが、俺はハッカーであって電気屋ではない。突然爆発したというテレビを取扱説明書片手に見てみても、対処方法なんて分からない。
「他にネット接続できる家電はありますか?」
「え?」
「……他の家電もこれみたいにならないように、チェックさせてもらってもいいですか」
「ええ。お願いね」
ひととおり見て、他の家電はどれもずいぶん前に買いそろえた物だと分かり、当然ネットに接続できる機能はついていなかった。最低でも今日1日は携帯の電源を切っておくように伝えると、お礼としてうぐいす餡入り饅頭を3つほど手渡され、ようやく解放された。
どうやら、IOT家電の暴発事件が起きているのは都内だけのようだ。今捜査中の事件と関わりがあるのかは不明だが、仮に関わりがあるとして、では犯人の目的は一体なんなのか。
……トリックやら動機やらを推理するのは専門外だ。ここは、専門家からの連絡を待つほかない。
『雄飛さん! ごめん、大丈夫!?』
そうして、IOT家電暴発事件が始まった次の日になって、ようやくヤツから連絡が入った。
「……ごめんってなんだ。お前、俺のこと忘れてたな?」
『う、ご、ごめんなさい。それで、雄飛さんの方は大丈夫? パソコンとかテレビとか』
「テレビのコードはとっくの昔に抜いてある。パソコンと携帯には自前のセキュリティがつけてある」
どちらもだめになったら、そうやすやすと買い替えられる物ではない。故に、以前小五郎のパソコンに設定したものよりも、ずっと強固なものを組み込んであるのだ。他者に遠隔操作されてしまうような、ぬるいプログラムではない。
『そっか。よかった』
「犯人、分かったぞ」
『そうなんだ……って、ええっ!?』
「なんだよ」
『も、もしかして、ユーザー特定できたの!?』
「だから、そう言ってんだろ」
電話の向こうで、言葉を失った後でかすかに笑うような声が聞こえてきた。
『じゃあさ……答え合わせする?』