文スト小説
□XV
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世間がどうなっているのか。
なんの知らせもないまま、2週間という長い時間が過ぎた。
1週間を過ぎた頃にようやく自力で動けるようになり、今は病室の中限定だが歩き回る許可をもらえている。寝たきりだったせいで衰えた筋肉が心配だ。
「……だいぶ残ってしまったな」
「なにがっスか」
「傷」
医師に包帯を替えてもらっていると、その様子を遠慮なくまじまじと見ていた織田が呟いた。
「まぁ、しょうがないっしょ。結構ひどかったわけですし」
「…………」
その難しい顔の理由はなんだろう。まだ根に持っているのだろうか。
「残らない方がおかしい。ちゃんと手当てを受けなかったのもある。お前さんのせいじゃなく、この莫迦者の自業自得だ」
「いてっ」
医師が包帯を巻き終えると、その上から強く叩いた。
自業自得は……まぁ、そのとおりとしか言えないけれど。それにしても、患者に対する接し方がおかしいのではないか。
「やぁ、お邪魔するよ」
医師が医療器具を片付けているのをのんびりと見送った。そこに、さりげなく現れた太宰。
違和感がなさすぎて、反応が遅れて固まった。織田も同じだったようだ。ただ、医師だけは普通だった。
「……太宰」
「やぁ、織田作。久しぶりだねぇ。いやいや、働いた。私、未だかつてないくらい働いてしまったよ。ドクター、ウィスキーを1杯」
「あるわけないだろうが、莫迦者。ここはバーじゃない」
「じゃあ、洗剤。水割りでいいから」
「よほど説教を食らいたいらしいな」
医師が拳を振り上げると、太宰は他人事のように両手をかざして「まぁまぁ」と宥めた。
彼を怒らせないでほしい。八つ当たりを食らうのは、絶賛お世話になっている最中のこちらだ。
「うざい。帰れ」
「え……ひどい。それ、人のために一生懸命働いた私に言う台詞じゃないよね?」
「人のために一生懸命働いてくださった太宰サン、どうもありがとうございます。ところで、うざい。消えろ」
「君、ドクターに口の悪さでも習ったの?」
包帯が飛んできた。こちらは首をそらしてよけたが、太宰は顔面キャッチしていた。
とうとう貴重な医療器具を武器に使い始めたか。そろそろこちらにも実害が出るかもしれない。
「それで、太宰。状況は?」
話が進まないといわんばかりに、床に落ちた包帯を拾った織田が尋ねた。