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□愛されっ子
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日がもうすぐ変わる時間帯。
(眠れない…)
目が冴えてなかなか寝付くことのできない私。
ただぼーっと天井を眺めているのも飽きたので、ベッドの脇に置いてあったスマホをいじる。
そういえば今日の休憩の時に撮ったメンバーの写真があったことを思い出し、確認するためにフォルダを開く。
フォルダを開いてまず目に入ってきたのは、画面いっぱいにふざけた顔をして映るチェヨンの姿だった。
小さく笑いつつ画面をスクロールしていくと、私の大好きなオンニ達が映った写真に行き着く。
私がスマホを構えているのに気づいたオンニ達が走ってこちらに向かっている瞬間を撮った写真だからか、躍動感溢れる2人の姿は思わず吹き出してしまうほど面白い。
(モモオンニ…サナオンニ…起きてるかな?)
画面の中の2人を見つめているうちに、だんだんと2人に会いたい気持ちが強くなっていく。
(2人とも寝てるかな…こんな夜中に電話したら迷惑だよね…)
そう思いつつも指は自然と着信履歴を押し、その1番上に出てきたサナオンニの名前に触れる。
プルルルル…と耳に響くコール音。
4コール目で諦めて電話を切ろうとした時、不意にコール音が途切れた。
『ダヒョナ!どうしたん?』
そして聞こえてきたのは聞き慣れたサナオンニの声で…
「サナオンニぃ…」
思わず情けない声を上げてしまう。
それにしても何故か電話越しに聞こえてくるサナオンニの声が少し慌てているような気がする……気のせい?
『なあにダヒョナ〜寂しいん?』
「寂しいです…」
『ん〜〜もうダヒョナは可愛いなぁ、しゃーない今からそっち行ってあげるから待っててな』
「うぅ〜オンニありがとうございます…」
サナオンニの笑い声とともに電話が来れる。
その直前、なぜかモモオンニの声がしたような気がしたんだけど…気のせいかな?
***
5分後、トントンと玄関のドアが叩かれた。
ベッドから飛び起きて急いで扉を開けると、目の前にサナオンニがニコニコ笑いながら立っていた。
「オンニ〜」
「あはは〜甘えん坊さんやなダヒョナ」
思わずサナオンニに抱き着くと、オンニは優しく頭を撫でてくれる。
と、不意に横からガシッと肩を掴まれた。
「ダヒョナ〜うちもいるんやで?」
「っモモオンニ!なんで!?」
サナオンニから身体を離して横を向くと、すぐ目の前にモモオンニの怒ったような顔があった。
なぜかモモオンニの髪の毛は乱れ、服もぐちゃぐちゃだ。
「ダヒョナはサナの方が好きなんやな」
拗ねたように口を尖らせるモモオンニ。
わけがわからずオロオロしていると、サナオンニが、
「はいはい、嫉妬も程々にな」
と言ってモモオンニの手を引っ張って部屋の中へと入っていく。
そして当たり前のように私のベッドに腰を下ろす2人。
「相変わらず綺麗な部屋やな」
「モモの部屋と比べたら誰の部屋も綺麗やろ」
「はぁー?何言うてんの」
軽口を言い合っている2人の前でどこに座ろうか迷っていると、すぐにオンニ達は間を空けて私を入れてくれた。
「寂しかったん?ダヒョナ」
「よしよし」
そして交互に頭を撫でてくれるオンニ達。
「オンニぃ…」
2人の優しさに胸がジーンと暖かくなる。
ありがとうございますと口の中で呟いて2人に抱きつくと、なぜか2人は急に静かになった。かと思えば…
「なんやこの可愛い生き物…」
「そんなんされたら我慢できひんやん」
「?モモオンニ?サナオンニ?どうし…ひゃっ!?」
突然固まってしまったオンニ達を不思議に思いながら身体を離すと、不意にサナオンニに肩を押された。
その勢いでベッドに倒れる私。
「え、?オンニ…?」
「ごめんなぁダヒョナ、うちもう我慢できひんねん」
「ダヒョナが可愛いのが悪いんやで」
戸惑う私を他所にオンニ達はベッドに上がってくる。
2人の潤んだ瞳に見つめられ、顔に熱が集まってくるのが分かった。
「なあダヒョナ」
私の頬に手を這わせつつ、モモオンニが言う。
「うちらさっきまでプロレスごっこしててん」
プロレスごっこ?
一体何のことだろうと首を傾げた時、モモオンニの首にポツンと赤い痣があることに気づいた。
「モモオンニ、それどうし…………あ、」
プロレスごっこ。
…まさか。
「あ、気づいたん?」
目を見開いてモモオンニを見つめると、その横でサナオンニがコロコロと笑って言う。
「うちめっちゃ消化不良やねん今」
「うちもや。なぁ、ダヒョンちゃん」
分かってるよな?
2人は声を揃えてそう言うと、目を細めて妖しく微笑む。
その後、無事に食べられた私は翌朝、腰と背中と股関節を痛めたのだった。
fin