短編夢

□かくれんぼ
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「…んー…」

くのたまの生徒達は実習中…
…私はのんびり屋根瓦の上に寝転がる

今日は特に天気がいいし、ゆっくりと眠れる気がする。そう思いながら私は流れる雲をボーッと見つめる


「風も丁度良くて気持ちいいな…」


心地よい風、青い空に白い雲、空飛ぶ小鳥に、見慣れない忍装束…


…見慣れない……忍装束…

見慣れない…………忍…装束……?



「こんな所で何してるの?」

「…はっ!?」

視界の端に入っている程度だったその忍装束を着た男は私を覗き込み、私は今度こそそちらに視点を合わせるとバッチリと目が合った。

「くっ、くせもn「おっと」…!」

咄嗟に上半身を起き上がらせて″曲者だ!″と叫ぼうとした瞬間に口を塞がれ、そのまま後ろへと押し倒される

「っ〜!」

押し倒された衝撃により後頭部を打つと、目の前の男は「すまないね」と軽くあしらってきた

「んっ!」

自らの懐に手を入れて苦無を取り出し、後頭部の痛みに耐えながらすぐさま反撃しようとするものの、
今度は両手首を掴まれそのまま一纏めにされて頭上へと持っていかれたことにより抵抗もできなくなってしまいどうしようも無くなる。

「…何も取って食いやしないって」

目の前の男はそう言うと私の唇に人差し指を置き、「だから静かに頼むよ」と、言うとこちらの返事を伺っているようだったのでとりあえず頷く

するとその男はすんなりと私から手を離すと隣に腰を下ろしそのまま寝そべった。

明らかにこの学園のものじゃないというのに…なんという態度なのだろうか。

「…あなた…誰なんですか」

もう一度苦無を握り直して横から男の首元に刃先を向けるものの、全く動じない。
その様子を見てそれ程余裕があるのか、もしくはそういう演技か…内心二つの意見によって私は焦った。

いくら授業で習っているからといってもこんな強そうな忍者と戦ったことなどない。ましてや相手は私と違って男で大人だ。
戦いになれば圧倒的に不利なのは間違いない。でも私が今叫んで誰かを呼ぶことも私がやられるリスクが高い。
しかし、このまま放置しておくと他の皆が危険な目にあう可能性がある。

でも…もし私の思い違いでこの男になんの実力も伴わなければ逃げ出すことも可能で、ある程度負傷させることも出来るだろう。

下手に先手を打つべきではないか…
それとも相手の実力を試すためにリスクを覚悟で戦うか…。

考え出したらキリがない。早く行動に出なければと、思えば思うほどに額に冷や汗が滲む。

すると目の前の男はぽつりと呟く。

「…忍者の三病、これがわかるかい?」

「…は…?」

こちらはピリピリとした状況下に置かれている中、男は目を閉じたままそう尋ねる。
″忍者の三病″…もちろんそれくらい知っている。

「恐怖を抱く・敵を侮る・あれこれ思い悩む」

そう言うと男はまず人差し指を立てて言う。

「…一つ、目の前の不審な忍びに対して明らかに恐怖を抱く、その怯えた目は恐怖そのもの」

今度は中指を立てて言う。

「二つ、相手の実力が分からないからといって、
まだ未熟だと承知の上でも、大の大人に立ち向かおうとする」

さらに薬指を立てると同時に目を見開く。
そしてその鋭い目はしっかりとこちらを捉えた

「三つ…助けを呼ぶか、本当に戦うか思い悩む
…これが実技のテストなら落第だね」

「っ……!」

ぐうの音も出なかった。
目の前の敵に恐怖し、侮り、思い悩んだ。
これでは忍び失格だと自分自身で実感して憤りを感じて私は下唇を噛みしめた。

…しかし、男はそんな私を見てふっと笑うのだ

「な、何がおかしい!」

図星をつかれて悔しい気持ちと馬鹿にされた気がして声を荒らげる

「いや、素直で可愛いなーって」

「はぁ…?」

「敵の言葉にすんなり惑わされるのもよくないってこと。あっさり受け入れすぎたらダメだよ」

そう言うと男は私が首元に当てていた苦無を押し返してから上半身を起き上がらせた。

「ま、今後の反省として活かしていけばいいんじゃないかな?」

「……」

男はそう言うと私の頭を軽くポンポンと撫でてまた少し笑った。

「っ…!ば、ばかにするな!」

一瞬不思議な感覚に見舞われてしまったがよく考えろ私。こいつは敵だ、頭を撫でられて驚いている場合ではないのだ。


もういい、どうなっても知らない。
そう思って苦無で切りかかろうとした時だった。




「すみません、遅くなりました雑渡昆奈門さん
…って、あれ…?れいちゃん…?」

「い、伊作先輩…?」


そこに突然現れたのは包帯を抱えた伊作先輩で、目の前の男はその事が分かっていたかのように平然としている。

…私には何が何だかわからなかった。





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