PEACE MAKER

□お出かけ(私の場合)
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ぷらぷらと歩いてうどん屋に向かった。
多分烝は歩くのが早いからもしかしたら途中で追いつかれちゃうかもしれない。
そしたら待ち合わせの意味がないので、私は少し早足で待ち合わせ場所に向かった。

それにしても、わざわざ着替えてくれるなんて珍しいこともあるものだ。

うどん屋の前で待っていると中から店員さんが声をかけてくれた。

「どうしたんだい?待ち合わせかい?」
「はい、お昼はうどんにしようって。」
「それなら中に入って待ってると良いよ。この時間はすぐに席が埋まってしまうから。」
「良いんですか?」

お言葉に甘えて暖簾をくぐる。出汁の良い香りがする。
お腹がすいてきた。
外が見える席に入れてもらってここから烝を待つことにしよう。

と、血相を変えた烝が走ってきた。なんでそんな走ってきたんだろう…。
キョロキョロと辺りを見渡している。
あ、私が外にいないから探してるんだ。
私は慌てて暖簾から顔を出した。

「烝?どうしたの?」

今まさに元来た道を戻ろうとした烝に声をかける。

「お腹空いたから先に入っちゃった。」

えへへと笑って烝に謝る。
烝はその場にがっくりとしゃがみ込んでしまった。
本当にどうしたというのだ。

「烝?走ってきたの?すごい格好。」

烝の着物は裾がはだけているし、よく見たら先日おろしたてのはずなのに砂埃が酷い。

肩で息をしている烝をまずは落ち着かせようと肩に手をおく。

「とりあえず中入ろう?お水もらおっか。」

そう言って、店員さんにお水を頼みに店の中に戻る。
入ってきた烝に水を入れてやると、烝は一気に飲み干して私の隣に腰を下ろした。
珍しい、烝がこんなに息を切らすなんて。

「そんなに急いで来なくても良かったのに。」

あまりに疲れきっている烝を見て苦笑する。
急いで来てくれたのは嬉しいけど。

見かねた店員さんがうちわを渡してくれたのでお礼を言って受け取る。

「落ち着いたら食べようね。烝は何にする?」
「冷やし…」

確かに今の烝は冷たいものの方が良さそうだ。
可笑しくなって私は笑ってしまう。

「それがいいね。私はあったかいの食べようっと。」

店員さんに注文して、烝に風を送ってやる。
それにしても…

「なんでそんなに急いで来たの?」
「…」

烝にギロッと睨まれてしまう。

それも可笑しくって私はますます笑いをこらえられない。

「なんで怒るのよー。」

烝にうちわを渡して、懐から手ぬぐいをだして烝の汗をぬぐう。

「誰にも声かけられへんかったか?」

ボソッと烝が呟くように聞いた。

「え?別に?ここの店員さんに待ってるなら中に入りなよって言ってもらったくらいだよ。…心配してくれたの?」

もしかして烝がこんなにも一生懸命に走ってきてくれたのは、1人で先に行った私のことを心配してくれたからなのか?
なのに烝はうちわの柄で私の頭を叩く。

「痛っ!何するの!」
「知らん。」

抗議の目を向けるも、烝はムッとした顔で黙ってしまった。
そこに店員さんが申し訳なさそうにうどんを持ってくる。
ここは一時休戦だ、とりあえずご飯を食べよう。
私は美味しそうに湯気を立てているうどんに集中することにした。

「ふう!美味しかった!」

あったかいお出汁もたっぷり味わい、少しお腹が苦しいけれど、満足だ。
普段は烝と2人でご飯なんてありえない。
隊士でごった返す部屋で食べるか、烝1人で先に食べてしまっているかだ。
そうなったら鉄君と食べるんだけど。

無言とはいえ、烝と2人きりの食事を楽しんだ私たちはお腹を落ち着かせるために散歩することにした。
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