PEACE MAKER

□服の話(その4)
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「烝!!!」

花の手を掴んでいた左手がグイと引っ張られる。
反射的に手を離すと、「わ!?」と小さく叫んで花が勢いよくこけた。





…沈黙。






地面に座り込んだまま何も喋らへん花の顔を覗き込む。

「どっか捻ってへん…」

言い終わらへんうちに左頬が熱くなった。
パシンという乾いた音に数瞬遅れて痛みが走る。

「離してって言ったじゃん!!!」

「すまん…」

反射で言葉が出る。
手を貸して道の端に座り直させる。
幸いどこも擦りむいてはいなさそうだが。

「なんで引っ張るのよ!先輩と話してたじゃん。あんなの失礼でしょ!?」

涙を目にためて懸命に一点を見つめて肩で息をしている。
小さい頃からこけた時はいつもこんな顔しとった…で、この5秒後に泣き出す。

こんな往来で泣かれても困るので「すまん」と繰り返す。


なんでと聞かれても、困る。自分でも気ぃついたら花の腕を掴んでいた。
せっかく並んでいたパンケーキもほっぽりだして。

話しかけてきたのがサークルの先輩やということはすぐ分かった。
なんやよう分からへんけど確かブーブーモーモーの会みたいな名前やった気がする。
2人の会話を聞くともなしに聞いとったら、花が笑って答えた。

「まさか!違いますよ!!」

デートかと聞かれて、そう答えるのは実に正しい反応や。
俺も同じように聞かれたらそう答える。
ただそこで先輩の腕を引いて列を抜けた花を見ていると、またあのイライラが首をもたげた。
いつまで話しとんねん…

早よ列が前に進んで花を呼び戻せへんかなと、前方に気を取られとったら、先輩と肩を組んで顔を引っ付ける花の姿を見て我を失ってしもた。
しかも、こっち見てニヤつきよった…なんやねん。


「烝。」


呼ばれて見下ろすと、俺が大分長いこと自分の世界に入っとったんか、花が口をタコの形にしていじけていた。

「お腹すいた。」

「…すまん。」

そういえばコイツは朝も食べてへんかったんやっけ。
しかし先程の店に戻る気にもなれない。

「別の店入らへん…?」

提案してみる。

「うん。」

素直にうなづいてくれたので、周囲をぐるっと見回して先程の店以上に彼女を満足させることが出来そうな店を探す。

そういえばこの近くに…
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