小説
□第一章
2ページ/2ページ
大学の入学式が終わったあと、俺は家に帰り、音楽制作に励んでいた。
『こんなもんかな、よし終わったー』
と言い、その曲をアップロードした。
今回の曲は恋愛を意識して作ったので少し時間が掛かってしまった。恋愛には疎いからな。前世でも彼女いない歴=年齢だったからな。勿論今も居ないよ(悲)
そんな無駄話を駄弁っている間にバイトの時間が来てしまった。どこでやっているかって? 特別に教えてあげよう。音楽に因んで楽器の店だ。店長が俺の知り合いで、しかも音楽関係なので喜んでバイトしている。
あの人は早く行かないと怒られるので俺は素早く準備する。と言っても特に準備するものはないのだが。
??「お久しぶり〜遼君。今日、大学の入学式だったんでしょ?どうだった?」
この人がここの楽器店「MELODY」の店長
尾崎花乃さんである。花乃さんは昔、バンドをやっていてその名残でこの店を開いたらしい。
『お久しぶりです。大学はですね、、、まぁ、普通でしたよ。過ごしやすそうな所でした。』
花「そう?良かった。それでね、今日は遼君に合わせたい人がいるの。」
俺は正直驚いた。自分で言うのも何だが、俺は人とは余り接点を持たないからだ。それだから友達や恋人が出来ないんだろうなー
俺が絶望に耽ていると花乃さんが遠慮がちに俺に声をかけた。
花「大丈夫?顔色悪いけど」
俺はすぐさま表情を直し、
『いえ、大丈夫です』
と言った。良かった、バレては無い。
花「そう?じゃあもう会ってもらってもいいかな?あの人も忙しいらしいから。あそこのドアを開けたところにいるよ。」
『はい、分かりました。では、店番宜しくお願いします。』
花「分かったよ。失礼がないようにね。」
どういうことだ?それ程大物だということか?なら、一層疑問が出る、何故俺に用があるんだ?花乃さんが音楽のことを話したのかな。
俺は思考に陥りながらドアをノックした。
『松浦遼です。失礼します。』
??「入りたまえ。」
この声、、、どこかで聞いたことが、
俺がドアを開けると、そこには朗らかな表情をした、中年の男性がいた。そして俺はその人を見てさっき抱いた違和感に気づいた。
??「どうも、秋元康です。」
テレビやラジオで何度も見たことのある顔だった。
『本物ですか、、、?』
俺が質問すると秋元さんは少し微笑み、答えた。
秋「はい。私がAKBグループ及び坂道グループのプロデューサーです。」
『はあ、お会いできて光栄です。けど、そんな有名な方が何故私に会いに来たのでしょうか?』
秋「まぁ肩苦しいことはなしで、敬語もなし。それでいきましょう。座ってください」
俺は言われるがままに従った。
秋「今日、私が貴方に会いに来た目的は是非、欅坂のマネージャーをやって頂こうかなと思いまして。」
俺は今世紀最大に困惑した。は?何で俺如きが今、話題沸騰中のアイドルグループのマネージャーになるんだ?
『え、何でですか?理由が分からないんですけど。』
秋「松浦さんは音楽をやっていますよね。貴方の音楽に感銘を受けましたのでマネージャーとしてテレビ出演について学んでもらい、メジャーデビューしてもらおうかと思いまして。」
やっぱり花乃さんが教えていたか、別にメジャーデビューするつもりはないのだが。
丁重に断らせていただこう。
…
俺は今、天秤にかけている。何をかって?
それは坂道グループのマネージャーになるか否かだ。実を言うと俺は欅坂46のファンなんだ。幼い女の子たちが人を喜ばせるためにあんなに頑張っているなんて。
俺は欅坂46のライブを見てそう思った。俺の音楽にはない。そんなものがあった。
『メジャーデビューはする気はないのですが、、、』
秋「良いですよ、マネージャーをしているうちにその気持ちになるかもしれませんから。」
『分かりました、ではやらせてもらいます。』
俺がそう言うと秋元さんは喜んだ表情となり、
秋「じゃあ、明日にでもあの子達に会ってもらおうかな、予定は大丈夫かい?」
大学の入学式の翌日から休むとか評判が悪くなりそうだが、まぁいい。最悪学校を辞めればいいし。
『はい、大丈夫です。どこに行けばいいでしょうか?』
秋「ここのビルに行って欲しい。そこの受付で今野さんという人に会いに来たのですが、と行って欲しい。今野は欅坂の責任者と言っていいやつだ。じゃあ私は用事があるので、失礼するよ。」
『はい、ありがとうございました。』
そう言うと、秋元さんはこっちを振り返り、微笑みながら言った。
秋「いや、お礼を言いたいのはこっちだよ。欅坂のマネージャーを引き受けてくれてありがとう。これから宜しくね。」
『はい!よろしくお願いします!』
秋元さんが帰った後、俺は花乃さんに問い詰めていた。
花「あ、おかえり。どうだった?」
そう言われたとき少しイラッと来たが、抑えておこう。
『どうだった、じゃないですよ。驚きましたもんね!まさか花乃さんが秋元さんと接点を持っていたなんて。』
花「いやいや、ごめんごめん。遼くんのことが心配だったから。」
どういう事だ?別に心配されることはないのだが、、、
俺が言葉を発さずにいると、花乃さんが続けていった。
花「遼くんが大学で友達が出来無さそうだったから、マネージャーになって欅坂の人と友達になってもらおうと思って」
そうだったのか、、、俺は心配されていたんだ。
『え、じゃあメジャーデビューさせるというのも花乃さんが言ったことなんですか?!』
花「そうだよ、貴方は幾ら経ってもメジャーデビューしなさそうだったから。」
『けど、俺はする気ないですよ。』
花「貴方はネットという小さい鳥籠の中だけで生きようとするの?貴方ほどの才能はこんな小さい世界だけで発揮されるものじゃない。この現実という大きな世界でも通用するよ!もっと自分に自信を持って!」
花乃さんはそう言いながら俺を抱き締めてくれた。俺は思わずなきそうになった。
『けど、俺、、、やっぱりまだ自信が持てないよ。でも、マネージャーとして働く中でそれを見つけてみせるよ。』
花乃さんは微笑み、言った。
花「わかったよ。見つけてみせて。困ったらちゃんと相談してね」
俺はその言葉に違和感を覚えた。
『どういう事ですか?まるで俺が辞めるみたいになっているじゃないですか。』
花乃さんはご名答と言わんばかりに目を見開いた。
花「そうだよ。マネージャーとバイトを両立できないでしょ。名残惜しいけどね。」
花乃さんは悲しそうに言った。
『仕方ないですね。じゃあ俺は心を入れ替え、マネージャーとして頑張ります。』
花「うん!頑張ってね。じゃあもう帰って良いよ。」
『はい、失礼しますね。』
そうして俺は「MELODY」を出た。
そして、帰り道、俺は思考に耽ていた。
今日は忘れられない日になったな。まさか俺の好きなアイドルのマネージャーとなるなんて。転生してからいい事だらけだな。
、、、まぁ小学生時代にあったんだがな、あの忌まわしいことが。あれは俺が十割悪いんだがな。あいつは元気にしているかなぁ。俺はあいつに謝られければならないことがある。
俺は帰路に着きながらそんな事を考えていた。そして帰り、深い眠りに付いた。
欅side
菅井「今日から新しくマネージャーさんが来るらしいよ〜」
菅井がそうみんなに言うとわっと騒がしくなった。
関「どんな人なんだろうねー」
守屋「すぐに辞めない人がいいね。」
そうなのだ。欅坂46は2018の紅白歌合戦で悪い印象が付いてしまったせいでマネージャーが辞めるという事態が発生していた。
平手「ごめんね、みんな私のせいで、、、」
その元凶の平手はその日から凄く落ち込んでいた。
長濱「てちのせいじゃないよ。そんな落ち込まないで。」
平手「うん、、、わかった。」
菅井「けど、その人の情報が何も無いんだよねー秋元先生に聞いても教えてくれなかったし。」
これは彼女たちの話の約3時間前の話である。
俺は昨日秋元さんに聞いたビルの住所に着いた。何かしっかりとした感じのビルだった。ここにこんなやつが入ってもいいのかってぐらいだった。恐る恐る入ると中は結構ざわざわしていた。俺は早足で受付へ行くと美人な方が声を掛けてくれた。
受「なにか御用でしょうか?」
聞かれたので答える。
『18時30分から今野さんに用事があるのですが。』
受「分かりました。確認いたしますので少々お待ち下さい」
そう言い、パソコンで調べ始めた。
待っていると入り口からエレベーターが開いた。そこには欅坂46の一人、菅井友香さんがいた。因みに俺の推し。菅井さんは俺に気づくことなくその場を通り過ぎていった。
受「はい、確認致しました。六階の第二会議室へどうぞ」
『はい。ありがとうございました。』
そういい、俺は菅井さんに会った喜びを隠しきれず、少しスキップしながらエレベーターへと向かった。
六階についた。エレベーターを降りた俺は案内板を見て第二会議室へと向かった。そしてドアの前に立った。
昨日の秋元さんで緊張は緩和したが、まだ緊張するな。まぁ開けないことには意味がないのでノックする。
コンコン
『今日、呼ばれた松浦遼です』
すると、鋭い声で返答が来た。
今野「お入りください」
ガチャっとドアを開ける。すると会議室の一番奥に座っていた男性がゆっくりと立ち上がり、こちらへとやってくる。それはまるで此方を威嚇するように。
今野「どうも、松浦遼さん。私が乃木坂46、欅坂46及びけやき坂46の代表取締役です。」
改めて見ると凄く貫禄のある風貌だった。それにちょっと怯えそうになったが、一応こちらにプライドというものがあるので対抗していく。
『どうも。松浦遼です。これからマネージャーとしてよろしくお願いします。』
今野さんはマネージャーという単語を聞いた瞬間、待ってましたと言わんばかりに話しだした。
今野「ああ、それなんだけどね、僕は君をマネージャーとして認めてないから。」