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□パパとママとサラの小話
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【小話01】
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「サラこれ行きたーい!」

家の食器洗いに洗濯物に部屋の片付け、何から家事を片付けようか頭の中で整理してる時、声が聞こえた。
「テレビ!テレビみて〜!!」
そんな元気な声が聞こえた先を見れば、まだ小さい3歳の娘がテレビの前でぴょんぴょんと跳ねていた。
「ふーん、新しいアトラクション出来るんだって」
娘の横に座っている金髪ブロンドの夫は私の方をチラッと見ながら言う。
そういやあの遊園地何年も行ってなかったなぁと私もテレビに目を向けてボーッと考えた。
テレビの向こうの遊園地はまだ付き合ってもない頃にベルくんと行ったっきり。
そこから時間はかかったけどやっと一緒にいれるようになって、子供も出来て、幸せな今である。
映像に映った過去に乗った事のあるジェットコースターを見てついつい振り返ってしまう。
「パパもサラちゃんも行きたいの?」
と問いかけてみると「行きたい!!!」とすぐさま元気な声が返ってくる。
ベルくんはサラちゃんの横でニコニコしてる。多分あれは行きたがってる、多分。
「んじゃパパがお仕事お休みの日に行こっか」
私がそう言うとそれはもう笑顔でサラちゃんはパパに飛びついてた。

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当日、2人を連れて母国である日本に飛び、案内した。普段イタリアにいるから懐かしみを感じながら乗り換えをこなす。

人が多い中、ようやく遊園地に着いた。

この遊園地、世界的に有名なキャラクターを積極的にアトラクションに取り入れてるユニバーサルでスタジオなジャパンの遊園地である。休みだからか人が溢れる中、逸れないようにベルくんにサラちゃんを抱っこしてもらい、私はベルくんの手を引いて入場ゲートへと向かう。
老若男女、出身国関係なく、いろんな人間が吸い込まれる様にゲートへと足を向けている。それがなんだか謎に一体感を感じてしまい不思議な感覚に感じる。

ゲートを抜けると、キャラクターの着ぐるみとの記念撮影の列が見える。
すると「写真とれるの!?とりたいとりたい!」とサラちゃんが目を輝かせながら興奮気味に言う。
さっきまで「入場したらスパイダーマンのアトラクションに行こう」と話していたのに、今この彼女の頭の中では着ぐるみと写真撮る事しかないのだろう。
「あれ?スパイダーマンは?」と声をかけても、「写真!とるー!」しか返ってこないので、割と並んでる記念撮影列に並ぶ事にした。
暫く並んでいると順番が回ってきたので、いつも娘とパパの2人の写真を撮る癖でスマホのカメラのシャッターを押そうとするとスタッフの方から「お母さんも是非入って下さい!」と声がかけてもらった。
いつも撮る側だから撮られる事に緊張を感じながらも2人の隣に並ぶ。
サラちゃんはベルくんに抱っこしてもらってる状態で着ぐるみに抱きついている。よく見ると娘の腕は着ぐるみの首に回っていて強く締まってるように見える。
きっとパパに抱っこしてもらえてる事の嬉しさと着ぐるみとの写真撮影にテンションが上がって、腕に力が入ってるのだろう…心なしかウッドペッカーが苦しそうに見える。
「サラちゃん、ちょっと、締まってるから!ウッドペッカー苦しそうだから!これじゃ鳴き声も出ないから少し力抜こうね」
「?」
当の本人はあまりよくわかってないままやっと力を抜いた。
「はい、では撮りますよー!3.…2…」とスタッフの言葉に促さられるまま、3人で写真を撮ってもらった。

写真を撮り、ようやくアトラクションに向かおうと足を向けた。洋風な造りであるショップがいくつも並んでる可愛い通りの中を、人混みを縫うように歩く。
すると移動式の露天のようなグッズの売店があるのにサラちゃんが近寄って行く。
「なにこれー!これ頭につけるのー?」と目をキラキラさせながらスヌーピー耳のキャラクターカチューシャを頭に付けていた。
親バカかもしれないがそれがとてもよく似合っていて可愛い。
「サラちゃん似合うね〜!可愛い!さすがうちの娘!見てパパ」と振り向くとベルくんはもうすでに娘のお揃いのカチューシャを頭に付けていた。
まぁこの親子見た目は金髪で目が隠れているせいでよく似てるが、それと同時に耳カチューシャは2人ともとてもよく似合っている。
「似合うじゃん」
「パパも〜!似合うー!」
2人して顔を見合わせて小首を傾げている。
耳がよく似合って可愛い。
「ママ、どうしようかな、何付けようかな
!?どうしたらいい!?シュレック!?!」
「ママ!?」
国宝級に可愛すぎる父と娘のカチューシャ姿に自分が並び立つに相応しいのは?!と思わず緑の化け物のカチューシャを手に取ってしまう。
テンパった私を見てびっくりしてるサラちゃんが何か見つけたのか、他のグッズを持ってきた。これは…サメ?
「ママはこれ!これがいい!」
カチューシャではなく、鮫の被りモノである。首に巻きつけるようにして被ると鮫にかぶりつかれているように見える。
こうして娘たっての希望で緑の化け物から一転、鮫に食べられる被害者になってしまった。
そのまま三つを会計して、アトラクションへと向かった。

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そこからテレビのCMで映っていたジェットコースターに乗ったり、売店で買ったチュロスを食べながらパレードを見たり、昔ベルくんと遊びに行った時に乗った乗り物や催し物を思い出し、また感慨深くなる。
昔2人で遊んだ所が、今度は3人になって、しかもその子供とで…とお土産のショップをぼんやりと眺めていた。
すると「ママこれ買ってー」とパタパタと何かグッズを持ってサラちゃんがこちらに駆けてきた。
「何それ?恐竜?」
恐竜の被り物である。
鮫にかぶりつかれるような被り物と同じ感じで恐竜にかぶりつかれる被り物だ。そういうシリーズなのかもしれない。
ジョーズの次はジュラシックなパークの被り物を持ってくる。どうやら娘は人に選ぶ時はカチューシャより被り物が好きらしい。
「うん!これお土産!」
「いいけど、誰に?あ、好きな子とか出来た?その子とか…この話やめよか…パパ変なオーラ出さないで…」
『好きな子』という単語を出しただけでパパから殺気がでたのと、こちらをジッと見ているのが耐えれなくなったので話すのをやめた。
「えへへ、ひみつー」
そうやって娘は悪魔のようなパパとよく似た顔で天使のような笑顔をを浮かべ、恐竜の被り物をギュッと握っていた。

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日は暮れ、朝は入場ゲートに駆け込んでいた人達は退場ゲートに歩いて行く。
「今日楽しかった?」と娘に問い掛ければ「うん!」と耳カチューシャの耳をギュッと両手で握りながら返事が返ってきた。
パパはポップコーンケースを持ってポリポリと摘みながら歩いている。
「パパも楽しかった?」と小声で聞いてみるとベルくんはポップコーンケースから手を離し、娘の同じ様に自分の耳カチューシャを両手でギュッと無言で一握りして、ニッと笑う。そしてそのままサラちゃんの手を引いてスタスタと前を歩いて行ってしまった。
相変わらず娘とよく似た顔で笑みが溢れてしまう。
「パパ、待ってったら!」と私が追いかけると「ばーか」って声が前から聞こえる。
何やら娘と何か話しているが会話まではちょっと聞こえなくて、小走りで2人に追いつこうと駆け寄った。




「パパ、ニコニコだね〜!」
「(サラ、シーーッ)」
「しー?」
「待ってってばー!」

/担当なもと

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