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□今度こそ。
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ごめんなさい。
そう、泣きながら呟くあなたの顔が思い浮かぶ。
あれから何年経っただろうか。
あなたは今どこで何してるのかな。

その時はまだ、あなたに再び出会えるなんて思ってもみなかった。


「え..七瀬...?」
「麻衣さん....」
「な、え...?」
仕事終わりに寄ったカフェの中で通り過ぎていく車たちを見ながら
1日が終わったという充実感にひたっていた。
そんな時声をかけられた。
私は固まった。
何年かぶりに見た彼女は私の知る頃よりも
ずっとキレイな女性になっていた。
「場所、変えへん?」
「...うん、」

話すとめちゃめちゃ長くなるけど、私たちの話をしよう。
私たちは付き合っていた。
高校生の時だったからー...
私は十八、七瀬は十六。
私は三年、七瀬は一年。
きっかけは私の一目惚れ。
学校でたまたま一年生のクラスに用があって
行ったらまぁ、可愛い子がいて。
その時は何も出来ずに終わってしまったけど
友人でクラスメイトの奈々未とか美彩とか色々協力してもらって
何とか名前を聞き出すっていう...
いや、ヘタレすぎる私にしてはよくやった方だよ。うん。
美彩と奈々未とかその他もろもろの友達にはもはや呆れられてた。
そこからは私が積極的に教室行ったり、
勇気をだして連絡先を交換したりして。
そしたら好きな物とか結構気があったり、
さらには家が近いという奇跡によって一気に距離が縮まった。
お互いの事を「七瀬」「麻衣さん」と呼ぶようになった。
本当は「麻衣」がよかったけど
どうしてもと拒むから仕方ないと思い諦めた。
家が近いと発覚した時から、登下校を一緒にするようになった。
そんな時私はふと思った。
告白して引かれて距離を置かれるよりも
告白なんてしない方が。
この関係のままの方が。
今から思えばただの都合のいい自分勝手な考えから心が折れかけていた。

いつもの帰り道。
ある大きな出来事が起きた。
「麻衣さんって好きな人とかおるん?」
心臓が止まるかと思った
「え、」
あまり恋愛的なことを話さない七瀬の口からそんな言葉が飛び出した。
「あ、えーと...」
そんなこと言い出すと思わないし好きな人とか七瀬だし
でもそんなこと言えないし
あぁ、七瀬めっちゃ興味津々じゃんめっちゃこっち見てくるぅ...
「で、おるん...?」
「いやぁ...いないかなぁ...」
「ふーん...」
死ぬかと思ったぁ!!
はぁ、やばいそうゆう話題は心臓に悪すぎる。
七瀬はあんまり納得してないみたいだけど。

「ななは、麻衣さんのこと好きなんやけどなぁ...」

ん?え?はっ?ん?なになに?え?
「七瀬?もう1回言ってくれないかな?ちょっとよく聞こえなかった」
「だーかーらー!」

「ななは麻衣さんのこと好きなの!!」

しばらくの思考停止
頭真っ白開いた口が塞がらない

「おーい?麻衣さーん?」
「はっ...!」
「あ、戻ってきた」
「ななななな七瀬っ?そそ、そそれはほほほホントなのかな...?」
「ほんまやって...何回言わせるんよ...」
「ええ、ええええええ...」
「でも麻衣さん好きな人おらんのやろ?」
「いやっ、それは...」
ここで私は気づいた。
七瀬は私が七瀬のことを好きなのを知っている。
こやつさては小悪魔だな...?
「おらんのやろ?」
ええい、こうなってしまったからには想いを伝える他ない。
「すっ、」
「す?」
「す、」
「す?」
「すき...です、」
「なんで敬語...」
「いや、だって...」
「麻衣さん」
「な、なに?」
「付き合って下さい」
っていうことがありーの私達は付き合い始めたわけですよ。
付き合ってくださいって言った時の七瀬可愛かったなぁ...
あれは忘れないわ。まじ鼻血もん。

それから半年後。
私たちは別れた。
別れを告げたのは七瀬の方。
卒業式の日だった。
退屈な式が終わり、クラスでみんなで寄せ書きとかしてる時。
七瀬から放課後教室で待っててとの連絡があって。
いつも七瀬から教室に来てくれることなんてあまり無いから
ドキドキしながら待っていた。
そしたら
「ごめんなさい、別れてください。」
って。
訳を聞いたら
「麻衣さんも大学に行くやろ?」
私は東京にある大学へ進学する予定だった。
でもその前も、遠距離恋愛しようと二人で話していた。
「でもよくよく考えたら、っやっぱり、忙しいっやろうし、邪魔になるだけやなって、思ってもうて。」
涙を目にためてぽつりぽつりと言う七瀬。
そんな、そんなことない。
「私、七瀬がいないと、むりだよ...」
「ごめんなさい。麻衣さん」
教室を出ようとする七瀬。
「やだ、待ってよ七瀬。ねぇ。やだ。」
「卒業おめでとうございます。」
そう言い、教室を去っていった七瀬。
追いかけられなかった。
七瀬の居なくなった私一人だけの教室。
窓の外には私を慰めるように、雨が降っていた。
絶望感と悲しみだけが私を包み込んでいた。

それからいくつかの年が経った。
だいぶその時の傷も癒えた。
そう思っていた。
七瀬と偶然再会した。
そこで冒頭に至る。
「...」
「...」
七瀬と再会したカフェから場所を変え、
今は七瀬の家にいる。
...なんでこうなった?
沈黙が重たい。
「...久しぶり、ですね。」
「そうだね。卒業式以来。」
私達はあの卒業式の時から連絡をとっていなかった。
七瀬も私も連絡先を変えたから。
「あの時は本当にすみませんでした。」
「いやいや...七瀬も考えて考え抜いた結果の答えだったんだろうし」
「今から思えば自分勝手なだけの考えで...」
再び広がる沈黙。
それを切り開いたのは私だった。
「...ねぇ、連絡先交換しない?」
「え、いいんですか...?」
七瀬の目が一気に輝いた。
「もちろん。」
連絡先の欄にある『七瀬』の文字。
それだけで心が踊った。
時計を見ると8時半だった。
「そろそろ帰ろうかな」
「あ、もうこんな時間。」
「今日はありがとうね」
「いえいえこちらこそ。」
そう言い玄関の扉を開けようとした時。
「麻衣さん」
「なに...んっ、」
名前を呼ばれて振り向いた。
近づく七瀬の顔。
唇に触れるもの。
懐かしい甘い香り。
やがて遠のいていく七瀬の顔。
「ごめんなさい...」
「いやっ、...」
「私、ずっと今でもあの事を後悔しとるんです。」
「...」
その後の言葉。
少し期待した。
「あの頃からずっと今も麻衣さんのこと好きやから...」
「七瀬...」
気がつくと七瀬のことを抱きしめていた。
「麻衣さん?」
「私もっ、私も好きっ...ずっと、七瀬のこと忘れられなかった...」
「っ...」
「七瀬、付き合ってください。」
「うんっ...よろしくお願いします...」
「嬉しい...」
「今度は絶対に離さないです」
「んふふ、七瀬大好き」
「ななも大好きです」
耳元で聞こえる七瀬の柔らかい声。
「今日泊まってってもいい?」
「えぇー変なことしんといてくださいよ?」
「しないよそんなこと...」

今夜は長くなりそう。
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