本棚

□一目惚れ。
1ページ/1ページ

初めて見た時私は恋に落ちた。
いわゆる一目惚れってやつ。
まさかほんまに一目惚れなんてものがあるとは思わんかった。
恋愛に疎かったななは今まで恋心なんてものがわからず
誰々が誰々を好きで、とか、誰々と誰々が付き合ったらしい
なんて色恋沙汰に全くと言っていいほど興味が無かった。
好きな人ができたことも多分無い。
付き合った事ももちろん無い。
でもその人を好きになってから全てが変わった。
好きな人ができると世界が違って見えるとか言うけど
それはほんまのことやった。


一目惚れしたきっかけは入学式の時。
ウチの学校は学年ごとに上履きの色が違くて
その上履きの色で何年生かを判断していた。
私達1年生は黄色。2年生が青。3年生が緑。
廊下ですれ違ったその人の色は緑色やった。
その事で3年生ということは分かったけど
名前までは分からなかった。

入学式から2ヶ月ほどが経ったある日
「うわぁ...雨降ってるやん...。」
傘を忘れた。
お天気お姉さんっ!!
雨降らんゆうとったやんか!
しかも結構降っとるし...
いつも持ってる折りたたみも家に置いてきたし...
最悪や...
「待つしかないか...」
「ねぇ...」
「あ、はいなんですk...」
「傘忘れたの?」
「...」
しばし呼吸を忘れた。
なんてったって話しかけてきたその相手はまさにななが今
恋している人だったから。
「え...大丈夫?」
「え、あっ、はい…傘、忘れてもうて...。」
「入ってく?」
「うぇ!?え、いや、大丈夫ですっ!止むまで待つんで!」
「えぇ...。でも止むかわかんないよ?」
それは、まぁ、確かに...。
「じゃあ、お言葉に甘えて...」
「家の方向どっち?」
「えっと、あっちです」
「あっ、一緒一緒!」
「ってか名前聞いてなかったね」
「私は白石麻衣。あなたは?」
「西野七瀬です」
「七瀬ちゃん...。」
ドキッとした。
いきなり名前で呼ばれるなんて思わんかった。
「1年生?」
「そうです!」
「何部なの?」
「美術部です」
「へぇー、絵上手なんだ?」
「いやぁ、そんな事は...」
「私の友達でね、いくちゃんって言うんだけど絵がまぁ下手くそで...」
さっきから心臓が鳴り止まない。
ドキドキが白石さんに伝わってしまうのではないかと心配になる。
あと白石さん距離感が近い...。
こんだけ近づいてるのにほんまキレイな顔してるなぁ...
肌は白いし、髪サラッサラ。
キューティクル神やな。髪だけに。は?
「ん?どうかした?」
「あ、いえ、なんでも...!」
なんて面白みの欠片もない馬鹿なこと考えてる暇はない
「そう、」
なんてったってこの後も家に着くまで話し続けた白石さん。
これがほんまの弾丸トーク。
白石さんのクラスメートの人の話とか、
家族の話とか。
中学の頃はソフトボール部だったらしい。
美人で運動できて性格もいい、だけど飾らないから
友達もいっぱいできるんやろなぁ....
さぞモテることだろう。
ってか改めて考えると白石さんカンペキなのでは...?
お勉強の方は...聞いたけど何も答えなかったので
触れないようにしとこう。
そんなちょっと隙のある所も好きだけど。
...変態みたい。

「私の家ここっ!」
そんなこんなで話している(色々見とれてて半分聞いてなかったなんて言えない)内にいつの間にか家の近くまでついていた。
「私もう4つ向こうです。」
結構近かったねって白石さんが笑う。
かなり家近かったことに驚く。
なんで今まで会わなかったのだろうか。
「じゃあ、また明日ね。」
「はい…!」
また明日って言葉に嬉しさを隠しきれない。
今顔ユルユルやろなぁ。
なんて思いながら家の扉を開けた。

その人の名前は白石さん。
部活は弓道部でしかも部長さん。
家は私の家の4軒前。
私が一目惚れした初恋の人。
次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ