浮竹十四郎
□別れが来るとしても
1ページ/2ページ
ダダダ、と廊下を走る。
目指すは十三番隊。
(浮竹さん…!)
ーーー
ーー
…
数分前。
私はいつも通り四番隊で仕事をしていた。
「ふぅ、在庫整理はこんなもんかな」
包帯や薬などの整理をしているときだった。
「苗字四席!大変です!」
浮竹隊長が倒れられたそうです!
その報告を聞くやいなや名前は飛び出す。
浮竹が倒れたとなれば、なりふり構っていられない。
「浮竹隊長…!」
バン!と乱暴に襖を開ける。
「ん?おお、名前じゃないか。そんなに慌ててどうしたんだ?」
「……えっと」
そこには布団に座っている浮竹の姿があった。
襖をちゃんと閉め、名前は浮竹の横に座る。
「倒れられたと、聞いて、飛んできたのですが、」
「あーそれか。いや、ちょっと目眩がしただけなんだが、みんな相変わらず大げさだなぁ」
ははは、と笑う浮竹。
「はぁ…。いつも言っていますが、体調がいいからと言ってご無理だけは、と」
「すまんすまん、今日は大丈夫だと思ったんだが」
いつもすまんな。
そういってどこからとなく出した飴を渡す。
名前は飴受け取ると口の中へと放り込む。
苺の味が口いっぱいに広がる。
隊長はいつも私に飴をくれる。
謝罪のつもりか、子供だと思われているのか。
(それで許す私も私だけど)
「まったく、とりあえず今日は安静にしていてください」
そういって立ち上がる。
いつもならそのまま部屋を出て四番隊に戻るんだけど、その日は違った。
「名前」
浮竹が名前の手を掴む。
珍しい、隊長が私を引き止めるなんて。
「どうたんですか隊長。…本当はどこか具合でも」
「いや、違うんだ」
浮竹は一瞬迷いながらも。
「名前の人生を、時間を。俺の少ない命のために奪ってもいいのだろうか」
俺なんかといるより、同世代の友や恋人といた方がいいんじゃないか。
「俺は、こんなこと言うもんじゃないってわかってはいるが。そんなに長生きはできない。だから」
「別れた方がいい、なんて言わせませんよ?」
名前はもう一度座り、自分を掴んでいる浮竹の手を握る。
「人なんていつか死ぬんです。それが早いか遅いか、それだけです」
だから別れるなんて、あんまりじゃないですか。
「それに浮竹さんにはまだまだ長生きしてもらわなくちゃ。勝手に死ぬなんて許しませんよ?」
私のこと、幸せにしてくださるのでしょう?
「あぁ、そうだったな。すまん、まったく。君には敵わないな」
時々不安になることがある。
それでも君が安心させてくれる。
「俺と一緒にいてくれるか?」
「はい、もちろん」
二人で笑いあう。
この瞬間が一番幸せだから。
別れが来るとしても
それでも最期まで貴方の側に。
あとがき→