浮竹十四郎

□別れが来るとしても
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ダダダ、と廊下を走る。
目指すは十三番隊。



(浮竹さん…!)



ーーー
ーー




数分前。


私はいつも通り四番隊で仕事をしていた。


「ふぅ、在庫整理はこんなもんかな」


包帯や薬などの整理をしているときだった。



「苗字四席!大変です!」


浮竹隊長が倒れられたそうです!


その報告を聞くやいなや名前は飛び出す。
浮竹が倒れたとなれば、なりふり構っていられない。



「浮竹隊長…!」


バン!と乱暴に襖を開ける。



「ん?おお、名前じゃないか。そんなに慌ててどうしたんだ?」


「……えっと」


そこには布団に座っている浮竹の姿があった。
襖をちゃんと閉め、名前は浮竹の横に座る。



「倒れられたと、聞いて、飛んできたのですが、」


「あーそれか。いや、ちょっと目眩がしただけなんだが、みんな相変わらず大げさだなぁ」


ははは、と笑う浮竹。



「はぁ…。いつも言っていますが、体調がいいからと言ってご無理だけは、と」


「すまんすまん、今日は大丈夫だと思ったんだが」


いつもすまんな。
そういってどこからとなく出した飴を渡す。


名前は飴受け取ると口の中へと放り込む。
苺の味が口いっぱいに広がる。


隊長はいつも私に飴をくれる。
謝罪のつもりか、子供だと思われているのか。



(それで許す私も私だけど)



「まったく、とりあえず今日は安静にしていてください」


そういって立ち上がる。


いつもならそのまま部屋を出て四番隊に戻るんだけど、その日は違った。



「名前」



浮竹が名前の手を掴む。


珍しい、隊長が私を引き止めるなんて。


「どうたんですか隊長。…本当はどこか具合でも」


「いや、違うんだ」



浮竹は一瞬迷いながらも。


「名前の人生を、時間を。俺の少ない命のために奪ってもいいのだろうか」


俺なんかといるより、同世代の友や恋人といた方がいいんじゃないか。


「俺は、こんなこと言うもんじゃないってわかってはいるが。そんなに長生きはできない。だから」



「別れた方がいい、なんて言わせませんよ?」



名前はもう一度座り、自分を掴んでいる浮竹の手を握る。


「人なんていつか死ぬんです。それが早いか遅いか、それだけです」


だから別れるなんて、あんまりじゃないですか。


「それに浮竹さんにはまだまだ長生きしてもらわなくちゃ。勝手に死ぬなんて許しませんよ?」


私のこと、幸せにしてくださるのでしょう?



「あぁ、そうだったな。すまん、まったく。君には敵わないな」


時々不安になることがある。
それでも君が安心させてくれる。



「俺と一緒にいてくれるか?」


「はい、もちろん」


二人で笑いあう。
この瞬間が一番幸せだから。





別れが来るとしても





それでも最期まで貴方の側に。





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