浮竹十四郎

□心配させないで
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俺の彼女は優しくて、明るくて、一緒にいるととても賑やかだ。
ただ一つ、心配事があるとすれば…。



「あ!浮竹隊長!おはようございまーあぁ?!」


バタン!と名前は盛大に転ぶ。


「おい、大丈夫か」


浮竹が駆け寄ると、名前はヘラっと笑う。


「えへへ、また転んじゃいました」


「まったく。いつも言っているが、あまり心配させないでくれ」


名前を起こし、怪我の状態を確認する。


大した怪我もなく、俺は胸をなでおろす。


「すみません、気をつけます。あ、でも私が転んでも隊長が助けに来てくれますし」


「俺だっていつも助けに行けるわけじゃない。いつまでも、君の側に…」



居られるわけじゃない。
その言葉だけは言えなかった。



「隊長が私の側に居られなくても、私が隊長の側にいますよ」


だから安心してください。
そう言って笑う名前。


そういうことじゃないんだが。
そう思っても彼女の言葉が嬉しい。


「そうだな、君がいてくれるなら心強い」


「任せてください!」


名前の頭を撫でる。
いつまでも君の側に。
いや、君が怪我なんてしなくて、元気でいてくれればそれでいい。



それが今の俺の願いだ。



「あぁ!そうでした!今日お部屋に行けなくなっちゃいました…」


「珍しいな。何かあったのか?」


実は虚退治に行かなくちゃいけなくなっちゃって。
急遽人員を増やすってことになったみたいです。


「久しぶりにゆっくり出来るって思って、楽しみにしてたのに」


「そう落ち込むな。虚退治が終わってからでも来ればいい」


遅くなっても待ってる。
その言葉に名前の顔が明るくなる。


「はい!ぱぱっと倒して、すぐ行きます!」


「ぱぱっとはいいが、転ぶんじゃないぞ?」


大丈夫ですよ!じゃあ行ってきます!
ブンブンと手を振りながら走って行く。


「気をつけるんだぞ!」


俺は不安を抱きつつ彼女を見送る。





それから昼を過ぎた頃、俺の耳に信じられない報告が入る。


"苗字三席が負傷して、今四番隊に"



ーー…



「名前!」


「…っ、びっくしたぁ。そんなに慌ててどうしたんです?」


ポカンとする名前。


「負傷したって聞いて飛んできたんだ。怪我は大丈夫なのか?」


「負傷って大げさな…。ただ着地に失敗して転けただけなのに。」


あはは、と笑う彼女。
俺はとっさに抱きしめていた。


「君にもしものことがあったら、俺は」


「もう、心配症なんだから。言ったじゃないですか、貴方の側にいますよって」


よしよし、と慰めてくれる彼女。


「俺も言ったはずだ。心配させないでくれと」


「うっ…それは、ごめんなさい」


気をつけます。


「いや、言い過ぎてしまった。名前が無事ならそれでいい」


名前のおでこにキスをする。


恥ずかしそうに照れる彼女。



「ゴホン。ここは二人きりの場所ではないのですよ。控えていただけますか?浮竹隊長?」


あ、卯ノ花隊長がちょっと怒ってる。
私達は謝りながらその場を収める。


「怒られちゃいましたね」


「だな。さて、部屋に戻るか」


卯の花隊長からの許可も出たことだしな。


「ですね、今日は隊長の部屋に行けますし」


「だからって俺を心配させたんだ。部屋に戻ったらお説教だな」


ええー、と嘆く彼女。


これも全部心配させた君が悪い。
戻ったらどう叱ってやろうか。


と思いつつ、彼女と居られるのが嬉しい浮竹だった。





心配させないで





それでも全部含めて君が愛おしい。





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