パパは◯◯です!

□パパは風使いの陣です。
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パパは風使いの陣です。



「パパーっ」

わたしは今、音をならして吹く風の中にいます。足は地面についていません。大きな木だって、今はずっと下にあって、アリンコくらいに見えます。

「おー!」

おんなじ高さを飛んでいるパパを呼んでみると、お返事してくれました。でもちょっと離れているので、パパのすがたは小さく見えます。

わたしのなまえは名前です。あっちにいる、赤い髪に角がひとつ生えているのがわたしのパパ。
わたしたちは風と仲がよいので、こうして空たかく飛ぶのはとくいです。

「行っくよー?」

うでをぐるぐる回しながら聞いてみると、パパが向こうの方で「いいぞー」と手をふっているのが見えました。

「よーいどーん!」

かけごえと一緒に勢いをつけて飛んでいくと、小さく見えていたパパはすぐに目の前になりました。

「しゅらせんぷーけん!」

ゴッ!

そのパパめがけて、腕をぐるぐるさせて作った竜巻をくりだします。けっこう大きな音がして、その辺を飛んでいた鳥が驚いてあっちに行ってしまいました。ごめんね。

「そりゃっ」
「あー!」

わたしはわりと本気でパパをぶっとばそうと思っていたのですが。ふつーに片手でうけとめられた上に、はじかれて消されてしまいました。

「パパ、子供あいてにおとなげないんだー!」
「おめ!この前は手加減すんなって泣いて怒ってたのは誰だっつの」
「てかげしないパパを、ドーン!てしたいの!」
「そんなら、名前が強くなるしかねぇべさ」

パパはそう言うと、ぷーっとふくらませたわたしのほっぺをつついて、プスッと空気をぬいてしまいました。

今わたしは、パパに風のあやつり方を色々と教えてもらっていたのです。上手にできたと思ったんですけど、やっぱりパパには勝てませんでした。

「パパはやっぱ強いねー」
「あったりめーだべや」
「ねぇ、名前もそのうちパパみたいに強くなれるかな?」
「勿論だ!名前は俺の子だかんな!」

そう言うと、パパは嬉しそうにわははと笑って、わたしの頭をくしゃくしゃなでてくれました。

風をあやつる風使いの陣。
それがわたしのパパの名前です。
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