六人衆夢短編
□六人衆と激甘デート
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初まりはそう、静かな朝餉の席での、ほんのささやかな会話からだった。
「えーっ?!名前、お前今日が誕生日なのかよ?」
「ん?うん」
やや声を荒げる鈴駒に対し、なんてことない表情でおひつから丁寧に白米を盛り付ける名前に対して、その場に揃う男性陣の視線が瞬時に集まった。
胸中で叫ぶ言葉は仲良全員一致して、
「「「「「「(今日!)」」」」」」
もうこの時点で、誰も寝ぼけ眼の者などいやしない。
「誕生日なんて、自分以外はただの平日だよ」
一瞬止まった手を再び動かして茶碗の中身を満たしながら、彼女は笑ってそう返す。
何がどうしてそういう会話になったのかは、この際どうでも良い。問題はただ一つ、自分達が落としたい女の記念日が突然降って湧いた事実だけ。
「名前。今日予定入れるな、空けとけ。いいな?」
「えー?なんで?」
「察しろよこの流れで!」
その場の男性陣を代表して、正面に座した鈴木が口火を切った。
「いいじゃん。丁度日曜だし、名前も学校ないんだろ?おいら達が祝ってやるよ。デートでもしよーぜ!な?」
「俺もたまには名前と外に出てみてぇだ」
「う、うん…?」
感情の駆け引きに疎い彼女には、直球わんこ系のおねだりが一番有効だということに、この居候生活でとうに彼等は学んでいる。
鈴駒と陣の一見無垢に見える笑顔にさっそく大きな手応えありだった。
死々若お前、頼むから今だけはいつものツンデレで絡むなよ、黙ってろ!と思ったのは鈴木だけではなかった。
「そんじゃあまぁ、名前は可愛く粧し込んで来いよな?」
「え」
「堅苦しく考えなくていいだろ、要は楽しく過ごすというだけだ」
「…そう、なの?」
押せ押せの空気の中で王手を決めたのは、落ち着いた大人組の酎と凍矢両名だ。
「そっか…それじゃあ、今日は皆よろしくね?」
その間も人数分の腕と汁物の用意をし続けていた手を終えて、その人は遠慮がちに微笑んで。
それまで黙して場を見守っていた幻海は一人、溜息をついたのだった。
水面下の争奪戦 -start-
「名前とデート!やったぜーっ」
「とりあえずルールを決めておこう。六人もいるからな、ひとり一時間、無理強い禁止、連れ去り禁止、以上」
「飲酒はいいのか?」
「名前にあまり飲ませるなよ…?」
「楽しみだっちゃ!」
「……俺はもう喋っていいのか…?」