アンバランスなキスをして
□三話
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「ふぁー。さっぱりしたぁ」
一日の疲れをお風呂で綺麗さっぱりと洗い流し、部屋までの渡り廊下を歩いて行く。
私の部屋は母屋の一番奥の方で、お風呂場から少し距離がある。
冬場は寒くてちょっと辛いけど、今みたいな春先の夜は、中庭を見ながらこうして歩くの好きなんだよね。
はー、これでこのままベッドにダイビングして眠れたら、きっと最高に気持ちいいに違いない。てかそうしよう。
心の中で深く宣言し部屋の障子をスパーンと開け放てば、誰も居ないはずの室内に黒い影が…。
「うわ!吃驚したぁ!」
「相変わらずの間抜け面だな」
「そっちも相変わらず口が悪いね」
開けっ放しの窓の淵に腰掛けて気怠そうに視線を向けて来たのは、数日前に顔を合わせた飛影だった。
「こんな夜更けに何の用?もしかして夜這い?やだ襲われちゃう、きゃー」
「………。霊界からの指令のビデオだ」
「ちょ、…お願いだから無視だけはしないでよ…、わわっ!」
呆れまなこの飛影に、テープを投げてよこさ
れる。
「今時ビデオなんだね…。あれ?飛影、帰っちゃうの?一緒に見ようよ、これ」
「貴様と馴れ合うつもりはない」
私が宙に舞うテープをキャッチしている間に窓の向こうに降りていた飛影は、そう言い残すと、また姿を掻き消してしまった。