鬼滅の刃〜if(もし)の世界〜

□反発、のち、愛してる……(炭治郎×主人公)
1ページ/13ページ

朝日が山々の間から朝の訪れを知らせる中、その山中を鬼殺隊である一組の少年と少女が下山していた。

しかし、少女は狐の半面を被っており、その面からでもわかる程、額から出血している他、満身創痍状態で、少年に肩を貸してもらいながら歩くのが、やっとのようだ。

『桜雪…?……大丈夫か?しっかりしろよ』

少年は、『桜雪』と呼ばれる少女に励ましの言葉をかけながら、近場の藤の花の家を目指し、歩みを止めない。

『……うん、私は大丈夫…。ごめんなさい……、炭治郎。…結局、私…、足手纏いになってしまったね……』

桜雪は、『炭治郎』と呼ばれる少年に、息も絶え絶えながら謝り続けていた。

『何言ってんだよ!君が…、桜雪が……、一早く気付いてくれたお陰で、俺は助かったんだ!寧ろ…、謝りたいのは……、
俺の方だっ……!!』

炭治郎は、今にも泣き出しそうな悲しげな表情を桜雪に見せまいと、ただただ、前だけを向き、彼女を気遣いながら、目的地を目指し、歩みを進めていた。

『……………ッ!!(この人……、……一体どこまでお人好しなんだろう……)』

そんな炭治郎の優しさを他所に、桜雪の冷めた本心が、心の中で密かに木霊していた。

炭治郎の嗅覚が、優れている事を知っている桜雪は、今の自分の心の声が『匂い』となって伝わっているだろうに…、どうして、こんなに弄(ひねく)れた自分に、懲りもせず、優しく、そして、暖かく接してくれるのだろう……と、桜雪自身、悪態を付きながらも、内心困惑していた。

彼女『氷室塚桜雪』は、鬼殺隊同期生の『竈門炭治郎』に、かなりの苦手意識を抱いていた。

……と、言うのも、桜雪は、他人からの『優しさ』や『愛情』、『心の温もり』と言う感情が、イマイチ理解できず、他の鬼殺隊員達からは『氷使いの狐お嬢』等と囁かれているぐらい、協調性に乏しいのだ。

それに対して、炭治郎は、笑顔を絶やす事なく、誰にでも対等に接する。

……例え、それが、彼自身が辛いときであっても……。

鬼殺隊の初任務で、初対面の時は、満面の笑みで挨拶と握手を求めてきた炭治郎に、桜雪は、狐の半面越しから、『よろしくお願いします。』と一言、挨拶と軽い会釈を済ませると、彼に背を向け、その場を離れた事すらあった。

同じ同期生である『我妻善逸』や『嘴平伊之助』にも同じ様に、あっさりとした態度で…。

善逸には、『桜雪ちゃん、そんなに冷たくしないでくれよォ〜!!』と言われ、伊之助に至っては、『雪女?氷女か?それとも女狐半人か?』と、挑発を煽るように、顔を合わせる度に散々言われる。

『………あッ、っう……!』

なんて、そんな事を思いながら、歩いていた所為なのか、桜雪のおぼつかない足は、力尽きたかの様に、膝から崩れ倒れた。

『………ッ!!…桜雪!?……もう無理して歩かなくていい!俺に負ぶされ!!』

突然、転倒した桜雪を、心配した炭治郎は、即座に自らの腰を下ろし、『さぁ!』と彼女を背に負ぶさる姿勢を見せた。

桜雪は、負傷の負担が相当身体に来ていたのか、目前の視界も、狐の半面を被り続けている為か、半ば、ぼやけ始めており、判断もままならない状態で、気が付けば、無意識に炭治郎の背に己の体を委ねていた。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ