鬼滅の刃〜if(もし)の世界〜
□すれ違いの愛情表現(炎柱×主人公)
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『……ハァ、ハァ、ハァ………ッ、ハァ、ハァ………』
一人の少女が、夜の闇に染った山中を大急ぎで、下山して行く。
その少女は、透き通るような長い銀髪を後頭部できつく纏め、漆黒の闇夜にでも、月光に照らされ、美しく映える。
しかし、少女の顔面には、狐の半面をつけており、表情は、まるで見えないが、どこか、焦っている様だ。
『……氷河!……ハァ、ハァ…ッ、れ、煉獄さんが……、負傷したって、本当なの!?』
『氷河』と呼ばれた鎹鴉は、少女の鴉であり、他の鬼殺隊員達とは違い、珍しく白い鎹鴉である。
『桜雪、急ゲ!!炎柱・煉獄杏寿郎ハ、無限列車ノ怪異ヲ他ノ鬼殺隊・竈門炭治郎、炭治郎ノ妹・禰豆子、ソシテ、我妻善逸ト嘴平伊之助ニヨリ、鬼舞辻無惨ノ手下デアル、下弦ノ肆ノ鬼・魘夢ヲ討伐!!ダガ、ソノ後二上弦ノ参ノ鬼・猗窩座トノ死闘ノ末、煉獄杏寿郎ハ致命傷ヲ負ッタトノ事!!』
『桜雪』と呼ばれる、少女の鎹鴉『氷河』は、他の鎹鴉からの伝達を、彼女に手短に状況説明した。
『(………ッ、煉獄さん、…煉獄さんッ!!死んじゃ嫌!!………お願い、神様……ッ、もし、もし、この世に……、神様が居られるのなら、煉獄さんを……ッ、杏寿郎さんを、まだ連れていかないでぇッ……お願いします…!!!)』
桜雪は、祈る様にまだまだ続く暗い闇夜の山中を足を止める事をせず、杏寿郎と鬼殺隊一同の居るであろう現場へと急いだ。
桜雪は、彼女自身気付いていないが、当の本人は、同じ『柱』である、『炎柱』・煉獄杏寿郎に想いを寄せている。
しかし、それは、あくまでも、柱の『先輩』であって、決して『恋情』ではないと……、少なくても、桜雪本人は、その様に割り切っていた。
だが、日に日に杏寿郎を目の当たりにすると、不思議な事に、ここ最近、自身の胸が高鳴るのだ。
その事に桜雪は、困惑するが、任務に支障をきたす訳にも行かず、今日(こんにち)に至った。
たが、その行動が裏目に出たのか、杏寿郎の負傷を知った桜雪の、現在の心境は、精神は、破綻寸前である。
『(……私は、……いつから………、煉獄さんを……、いつから……、こんなに好きになっていたの?……もう、もう嫌なの!!……もう、大切な人が……、私の元から離れて行くのを……、ただ、ただ、見送るだけの、立場にいるのは……、もうたくさんなのッ!!)』
気付けば、桜雪の瞳からは、とめどなく涙が頬を伝っては地面へと零れていた。
狐の半面を付けていても、その涙は、隠す事も出来ない程に。
『……桜雪………。』
桜雪の鎹鴉である、氷河は彼女の心境を察したかの様に、小さく彼女の名を呟いき、静かに桜雪の頭上を飛んでいた。