窓から差し込む朝日が眩しく目を覚ます。珍しく早起きをしたようで隣の後輩はまだすやすやと眠っている。規則正しい呼吸音が聞こえ少し安堵する。数日前風紀委員の仕事で怪我をした時は苦しそうにしていたのを何度も目撃した。結局私は何もしてあげれなかった。それが虚しく辛く。だから私は何もしてあげれなくてごめんと後輩に向かって謝った。私はあんたのお姉様なのにって。なのに後輩は「私の不注意ですので」と弱弱しい声でそう告げた。私の不安を取り除くかのように儚い笑顔を浮かべて。

珍しい後輩の寝顔をいつもの仕返しで見てやろうと後輩の近くに歩み寄る。幼さの残る顔立ち。もちもちとした白い肌。

「私なんかがお姉様でいいのかな。」

後輩はいつも私を慕ってくれる。私を肯定してくれる。私を助けてくれる。それに比べて私はこの子に何ができているだろうか。ひよっとしたら何もしてあげれてないのかもしれない。それなのにこの後輩は笑って私の隣をちょこちょこと着いてくる。それこそ母親の背中を追いかける子供のように。時に恋する少女のように。

「黒子…」

この後輩を思うと胸が苦しくなる。そして自分の虚しさを実感させられる。後輩は器用な子だ。私が何をしようと何も聞かずにずっと待っていてくれる。弱さを隠すように。でも、私はこの子のように器用には出来ない。この子が1人で何かを抱え込んだ時私は無理矢理にでも吐かせるだろう。でもこの後輩はそれをしない。ただ優しい笑顔で送り出してくれる。きっとそれにはたくさんの意味があるんだも今の私にはよく分かる。私もできる事なら全てを話してこの子の不安を取り除いてあげたい。でも誰かの心に寄り添い人の事で泣けるこの子はあんな事を知ったらきっと私より苦しんでしまう。だから話せないのだ。

「ごめんね。黒子…。」

寝ている少女にゆっくりと話しかける。私の本当の思い。素直な想いを、。

「私はまだ知りたくない。知ってしまえばきっと壊れるしあんたを壊しちゃうから。」

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