抹茶
□星空ノ下デ歌ウ
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「………」
ふと、目が覚めてしまった
隣からはナミちゃんの寝息が聞こえてくる
時計を見れば、まだ夜中の2時
珍しい事もあるものだ
再び横になり、目を閉じるも睡魔は襲って来なかった
「…あら…?」
波音に混じり、微かに聞こえて来たのは、おそらくギターの音
普段なら絶対に気が付かないような本当に小さな音だった
私はその音が妙に気になり、ベットから起き上がった
隣で眠るナミちゃんを起こさないように、静かに部屋を出て、この音のする方へ向かった。
―辛い時 辛いと言えたらいいのになぁ…―
外へ出た途端、音がはっきりとし、更に歌が聞こえて来た
聞いた事が無いけど優しげな歌
―僕達は強がって笑う弱虫だ―
こんな曲を歌えるのはこの船で彼しかいない
―淋しいのに平気な振りをしているのは 崩れ落ちてしまいそうな自分を守るためだけど…―
私は気付かれないよう、ゆっくりと彼の元へ近付く
近付くにつれ歌は大きくなるが、よくこの音量の歌が聞き取れたと思った
彼は船首にある、舵の後ろに備えられたベンチに腰掛け、ギターを鳴らし歌を歌っていた
「
…過ちも傷跡も 途方に暮れ べそかいた日も
僕が僕として 生きてきた証にして
どうせなら これからはいっそ誰よりも
思い切りヘタクソな夢を描いてゆこう
言い訳を片付けて 堂々と胸を張り
自分という人間を 歌い続けよう…
」
月光に照らされた彼の姿
普段からは想像もつかない用な気品とも言える物が感じられた
私は、彼のギターが鳴り終わると思わず両の手を叩いていた