抹茶
□砂漠の1番槍
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『シュンイチ!この国を出てっちゃうって本当なの!?』
これは、何年も前の思い出
彼、シュンイチは私より年上で、優しくて色んな事を知る不思議な人だった
『んを?誰から聞いて…って、チャカしかいねぇ…』
『うん…それで本当なの?』
『おぉ、商船に乗せてって貰える事になってな♪やっと世界を見て回れるよ!』
彼は一カ所にじっとするのが苦手な人間だった
昔からずっと外の世界を夢見ていた
『ちゅー訳で、暫くはさよならだ!』
『…うん…』
『な、泣くなよっ!?泣かせたらイガラムうっさいんだから!!』
彼はイガラムに説教されるのが大嫌いだったっけ
最も…何時も逃げ出して、一回も真面目に説教された事は無かったけど
『分かった!お前が立派な王女様になったら帰って来てやるから!!』
『!本当っ!?』
『おぉ!!…多分…』
『あぁー!今、多分って言った!!』
『言ってないよ!!』
『言ったぁ!!』
砂漠の1番槍
「…さま…ビビさまっ!!」
「はっ…!」
「火薬は、まもなくセットされますが…いかがいたしましたビビ様?」
「チャカ…えぇ、ちょっとシュンイチの事を…」
「彼ですか…」
浮かぶのは何時も自分達を笑わせてくれた、少年
やたら足が早く、超カルガモと勝負して勝った時は誰もが驚いた
槍と小さな荷物だけを持って、旅に出た彼は今頃何をしているのだろうか…
「案外、何処かの島で、珍味だとか言って獣を追いかけてたりして!」
『見ろビビ!サンドラ大トカゲだ!ウメェぞ!』
「もしかしたら、槍片手に戦士として名乗りを揚げているかもしれませんね」
『チャカー!兵士弱すぎだぞ!?落ちてた古槍で十人抜き!!』
思い返せば誰よりも破天荒で、誰よりも強かったシュンイチ
あの日、ビビを狙った悪党と砂砂団が戦いで、遅れ来たシュンイチが大人二人をボコボコにしたのもよく覚えている
「どうしてるのかな…シュンイチ…」
ちょうどその時、『F−ワニ』に乗り、砂漠を越えていく男がいた
「おいコラっ!もう少し急げワニ太郎!!」
「グルルン!グルルッ!!」
「あぁ!?てめぇ数年の内に随分態度がデカクなったな!?鞄と財布にすんぞっ!!」
「グルルッグルルン!?」
「分かりゃいいんだよ♪」