我が名はヒーロー (オリジナル)
□2.泥沼は続く、どこまでも
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1.涙のおハイソ修行
俺とスサは、王宮の広間に座っていた。
貴婦人達が絹の裳裾をひるがえして踊っている。バイオリンが、きいきい鳴っている。頭が割れそうだ。
ワルツが終わり、盛大な拍手が起こった。壇上にきらびやかな礼服をきたグリーンスパン少佐があらわれたのだ。
少佐はゆっくりとマイクを取り、言った。
「本日は私達の仲間に入ろうという者を、二人連れてきております。皆様、御注目、お願いいたします。」
かっと俺達にスポットライトが当たった。
「惑星エトナから来ました、シーア君、スサ君です。」
少佐は、にこやかに俺達の名を呼んだ。にこやかだが、目が笑ってない。唇がやたらに赤く見える。
楽団が、いきなり演奏を始める。
「さあ、シーア君、スサ君。まずは一曲踊りましょう。」
ま、待ってくれ。俺、まだちゃんとステップ、踏めないんだ。パートナーの足、踏みまくってること、あんただって知ってるじゃないか。
スサは、どこかの女と一緒にフロアに出ていった。どうすればいいんだ。先輩の威厳が...
迷子のようにスポットライトの中できょろきょろしていたら、ぐいと胸ぐらをつかまれて広間の中央に引きずり出された。
振りほどこうとしても、鋼鉄のような手首はびくともしない。もがけばもがくほど首がしまる。
「うちから逃げられると思ったら、大間違いやで。ちゃーんとやることはやってもらわんとなぁ。」
鋼鉄の手首の持ち主は、聞き覚えのある声でそう言うと、俺をぶざまに広間の床に投げ出した。
「メイジャー。かんべんしてください。俺、これだけはだめなんです。」
「何がこれだけや。まともにでけるもんなんか、なんもないやんか。がたがたゆうてんと、はよ踊ったらどうやの。」
俺は立ち上がろうとするが、足が鉛のようにこわばって、立つことが出来ない。
いつの間にかスサは、階段の上にあがってくるくると踊っている。
「せんぱーい、上がってこないんですかぁ。」
人をばかにしたような声が聞こえる。
ずるずると体を引きずって階段の下までいくと、いきなりこめかみに冷たいものが当たった。
こ、これはもしかして、拳銃。
「ひさしぶりだなあ、シーア。元気そうじゃないか。」
つうっとあげた視線の先にはエトナのマフィア、ドン・ガルツィア。
隣には、真っ赤な口紅のメイジャーと、これまた唇を赤く塗った少佐。
「!!!!!」