我が名はヒーロー (オリジナル)
□5.旅の終わり
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1.殴り込み
リムジンから降りて葬儀会場の入り口に姿をあらわしたスサと俺の姿に、会場の中からざわめきが起こった。
ざわめかないでくれよー。
別に俺達が、惑星知事を殺したわけでも何でもないんだからさー。
心の中で言い訳しながら俺とスサが通路を歩いていく間、ざわめきの波も俺達を追いかけて移動していく。
俺達に与えられた席は、祭壇から見て真ん前の左端だったから、会場にいる人みんなが俺とスサを眺めたことになる。
俺達は、当然喪服を着ていた。
俺の旅のお支度の中にきっちり喪服が入っていたのも、「はめられた」気分を増幅したが、ここまで来た以上俺は「アレン・ナントカ伯爵」の顔をしてこの葬式をやり過ごすしかなかった。
スサは、黒の丈の長いドレスにチュールレースのついた帽子で顔を隠している。
俺も、スサみたいに女顔だったらよかった。そしたら、せめてベールで顔ぐらい隠せたのに。
最前列の真ん中の席、ちょうど左側の列の始まるあたりに「葬儀委員長」ドン・ガルツィアが座っていた。
俺は軽くやつに会釈をして前をとおりすぎたが、あの下まつげの長い目が俺達をねめつけているような気がして、生きた心地がしなかった。
無事に前をとおりすぎたときには、ため息が出そうになったほどだ。
程なく司祭が祭壇上に現れて、葬儀が始まった。
葬儀自体は立派なもので、在りし日の惑星知事の「非凡な」業績や「温厚な」性格について、次々とスピーチが行われた。
「月姫様御名代、アレン・ナントカ伯爵。」
俺の名前が呼ばれた。
スピーチだ。
ろくに原稿も用意していなかったが、ここで引き下がるわけにはいかない。
俺は立ち上がり、演台に向かった。