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□朝寝坊
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今日も寝坊した。寝坊したことがばれて親に怒られ、学校に行ったらまた部長に怒られるだろうから、寝坊するのはよくないことだらけだ。
長く寝られること以外は。
「あ、リョーマ様ー!!」
ほら、うるさいやつがやってきた。朝からよくあんなに大声を出せると思う。
ま、そいつがいるってことは、悪いことではないんだけど。だって、ほら、
「お、おはよう…リョーマ君…」
竜崎がいるってことだから。
でもおかしい。小坂田がいるはずのところより遠くから声が聞こえる気がする。
ああそうか。竜崎は小坂田の後ろに隠れている。…どうして?
「ちょっと聞いてくださいよリョーマ様!今日桜乃ったら寝坊したんですって!」
「ちょ、朋ちゃん言わないで!」
「だから私、桜乃が時間がないっていうから、私が髪の毛縛ったんです!」
「ふーん。それで?」
「何と今日は、桜乃、ポニーテールなんですよ!!」
…は!?
俺は自分が自分の予想以上に驚いてるのを隠そうと必死に無表情(のつもり)で聞くことにした。
「私が他人の髪の毛でできる髪型ってポニーテールしかないんですよねぇ。」
「しかも、この前新聞部のテニス部特集してた時、リョーマ様ったら好みの子のところ『ポニーテールが似合う子』なんて言ってるじゃないですか!だから今日は私、張り切っちゃいましたよ!」
「ってことで、今日の桜乃、可愛がってあげてくださいね!!じゃ、お先です!」
そう言って小坂田は先に歩いて行ってしまった。
思わず俺はにやりとしてしまう。小坂田も気がきくところあるじゃん。
「あの…リョーマ君…?」
「寝坊するのも、案外悪くないね。」
「? どうして?」
俺はその質問には答えずに歩き出した。
「イイモノ見せてもらったからね。」