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□田島の記念日
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日中は日差しも強く暑いとも言える日があるが、最近はさすがに朝は寒い。
「あーっす!」
ユニフォームは勿論、アンダーまで半そでで登場した彼には、そんなこともお構いなしのようだが。
「はよ。うわぁ田島、それ寒そうだね。」
「今寒くても朝連終わってる頃には汗だくだろー?だから今からあっつくないカッコしてんの!」
「そうだねー。」
寒そうと言った栄口が納得する。それだけ練習は朝からハードなのだ。
「でさー、おれ今日なーんか忘れてる気がするんだよねー。」
「何が?」
「いや、家族みーんなニヤニヤしてこっち見てたんだけど、なんだったかなー。栄口、おれなんか顔についてる?」
「ついてないよ?」
そんなことを話していると、次々に部員たちがやってくる。二人の会話は中断された。
いつもの通り瞑想をしてストレッチをしてから、ボールに触れる練習を開始する。
「あーっす!」
遅れてやってきたのは、マネージャーの篠岡だ。彼女はいつも部員たちより遅く登校してくる。しかし、彼女の手早さがあればその時間で十分なのだ。
やがて練習が終わり、元気な田島が一番にベンチに戻ってくる。
「しのーかー!今日のおにぎりのおかず何ー?」
「あ、田島君!」
田島は昨日のおにぎり争奪戦で一位を取ったのだ。
「田島君は今日は海老天!」
「おお、今日も海老天あんの!?」
「うん、楽しみにしててね!」
「おうっ!」
いつもの(田島が一位になった時の)会話。いつもはここで終わるのだが、今日は続きがあった。
「あ、そうだ。田島君って今日誕生日だよね!」
「・・・あ!そうだった!!」
朝から家族がニヤニヤしていたのはこれが原因だったのか。忘れていた。
「田島君誕生日おめでとう!」
自分だけに向けられた笑顔。これは自分が誕生日であることが故の特権である。
「お、ありがとな!」
いつものとおりの返事ができただろうか。篠岡にそんなことをされるとなぜか緊張してしまう。
そんなことを考えていると、後ろから声がかかった。
「あ、田島今日誕生日なんだ。おめでとう。」
「お、おめでとう・・・」
「おめでとう。」
口々にみんなからお祝いされる田島。
誕生日・・・そういえば三橋もお祝いしたっけ・・・。
「なあ、今日の放課後集まってパーティーしねぇ?」
「はぁ?」
「だって三橋ばっかりずるいじゃんか!俺もあんな風にお祝いされてぇよ!」
そこへ突っ込みが入る。
「でも今日も部活終わるの遅いぜ?それ以上遅くになんてできねぇだろ。」
「そうだよなぁ・・・。」
そこへ、珍しく口を出したのは西広だ。
「週末にやらない?」
「ああ、それいいねぇ。」
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