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□恥ずかしいところを…
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「まずは馬跳びだ!」


 服を着たゴリラ…もとい、斉藤田先生が怒ってもないのに吠える。

 今は体育の授業だ。この学校では体育の授業の初めに『補強』という名目で腕立て伏せや腹筋をやることになっている。
 今日の馬跳びもその一つだ。


「ねえ桜乃、一緒にやらない?」

 朋香が声をかける。交遊の多い朋香とは違い、桜乃は引っ込み思案の為友達も多い方ではない。
 ほっと一安心して二人で馬跳びを始めようとした。


「えー、これじゃあ一人余っちゃうじゃん。全員で円になってやろうよ。」

 女子の一人が声を上げる。なるほど、そう言われてみれば人数は奇数だ。
 女子全員が賛成する。


 桜乃は少し不安になった。

 桜乃は馬跳びが得意な方ではない。

 その上、体育は二クラス合同で行われる。1組は2組と一緒に授業を受けている。
 それはつまり、『彼』に無様な姿を見せてしまうかもしれないわけで。
 彼だけではない、同じクラスや隣のクラスの人にも…。


 今日のところは彼がいることを(珍しいことに)気にすることなく体育の授業を受けていたが、急に緊張してくるのがわかった。きっと今の自分は顔が赤い。


「あ、リョーマ様!!」

 そんな桜乃の心を知ってか知らずか、目ざとい朋香がリョーマを見つけ出した。もちろんリョーマもこちらに気が付く。

 これで自分がへまをおかしても逃げることができなくなった。

 リョーマは堀尾と共だってこちらに近づいてきた。

「リョーマ様、男子は二人ペアでやるんですか?」
「おう、俺等は女子と違って人数は偶数だからな!」
「あんたには聞いてないわよ。」


「はじめるよー!」

 堀尾と朋香の話を中断するようにして向こうの方から声がかかる。あわてて女子で大きな輪を作った。


 リョーマはまだ近くにいる。近くにいるだけで顔が熱いのに、失敗するかもしれないという想像をしてしまい余計に顔が熱くなってくる。ごまかすようにして馬跳びの馬の形になった。



「次、桜乃ちゃんだよ。」

 最後に跳んだ人から声がかかる。彼女が跳んだのを確認してから顔を上げた。


 リョーマと目が合う。


 あわてて朋香の背中に手をかける。

 朋香は桜乃がお世辞にも運動神経が良くないことを知っているので、少し小さくなってくれていた。
 気を引き締めて跳ぶ。


「やった…!」

 うまく跳べた。思わず声をあげてしまう。

 二人目、三人目と続けてしっかり跳ぶことができた。


 しかし、桜乃に合わせて背中を小さくしてくれる人は少なかった。後ろがつかえていることに気付く。
 あわてて手を誰かの背中にかける。


「あっ…!」

 あわてた所為で手を滑らせてしまった。

(落ちる…!)


 覚悟して目を閉じた。

 しかし、地面に落ちた時に来るはずの衝撃がいつまでたってもやってこない。



「…竜崎軽スギ。ちゃんと食べてんの?」

 聞き覚えのある声に心臓が跳ね上がる。

 恐る恐る目を開くと、地面に手が届くか届かないかというところで体が浮いていることに気がついた。
 そして隣には、

「リョーマ君…!」
「え、越前君!?」



「ったく…。」
 リョーマは呆れたように溜息をついた。
 恥ずかしいところを見せてしまった。そのことで頭がいっぱいになる。
 その所為でリョーマの最後の言葉が聞こえなかった。



「…俺の前以外でやったら承知しないから。」


「え?今何て…?」
 

「別に。焦ったらこけるって言っただけ。」
「ごめんなさい…。」
「それより、後ろつまってるけどいいの?」

 あわてて後ろを振り返ると数人がこちらを見て桜乃を待っていた。

「ご、ごめんなさい!!」

「竜崎さんは馬小さい方がいいかな?」
「あ、よろしくお願いします…。」


 一連の騒動を見て、これから桜乃に跳ばれる馬となる人たちの背中が低くなった。


「桜乃。こういうときは『ありがとう』って言うの!」
「あ、ありがとう…!」

 前で待っていてくれた朋香に言われ言いなおす。



 和やかな雰囲気で終わろうとしていたところに、耳障りなゴr…斉藤田先生の声が聞こえてきて、女子の輪はあわてて馬跳びを再開した。







あとがき
短く切るつもりだったのに長くなった…!リョ桜でした。

このシリーズはちょっとづつ増やすつもりなのであとがきは同じページに書きます。
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