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□恥ずかしいところを…
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「…あふ…」
「しのーかー?あくびなんか珍しいね。眠いの?」
「うん。崎玉のデータ整理してたら寝るの遅くなっちゃって…。」
最近席替えをして隣になった水谷が千代のあくびを目ざとく見つけた。
来週末には崎玉との練習試合がある。今日か明日のうちにデータを整理してほしいとの監督の要請に頑張って応えたのだろう。
「頑張るのはいいけどあんまり無理しちゃダメだよ?」
「ありがとう。私は大丈夫だから。」
笑顔を向けてくれたようだが、眠いようなのであまりちゃんとした笑顔ではない。
それでもかわいいと思ってしまうのは恋は盲目と言うやつなのかな、と水谷は内心考える。
「眠かったら次の授業寝ちゃいなよ?」
「化学室まで行く間に目覚めるだろうから大丈夫だよ。」
そう言われると反論ができない。正しいことを言われてるのだから。(実際教室を移動する間に目が覚めることは多いと思い返してみる)
水谷が考え事をしている間に、いつの間にか千代が教室を出たのが見えた。
俺も行かなきゃ。
化学室までだらだら歩いていると、移動教室から帰ってきたのだろう、9組の連中がこちらに向かってきた。
「よー!しのーか!」
千代の三メートルくらい後ろを行く水谷の位置からでも聞こえた。田島の声だ。三橋もいる。
田島は大体部活の連中に会うと挨拶してくる。でかい声で。千代も例外ではない。
しかし、答える方の千代は眠いのが残っているのか、声は聞こえない。
後ろにいる自分も一緒になって足を止める、ということはせず(だって離れてるのにおかしいでショ)、千代に近づいていく。
一応自分も田島達に話しかけようかな。そういえば田島や三橋はウチの部活でいちばんちっさいのに篠岡と比べるとでかく見えるなぁ…。
そんなことを考えた矢先。
千代の体が傾いた。
「あっ!」
「え!?」
「ぅわぁ!?!?!???!」
水谷、田島、そして三橋がそれぞれ声を上げ、手を伸ばす(水谷に限っては走った)。
がしっ
千代の体は、三人が伸ばした手の中にすっぽり収まった。
「しのーか、寝てる?」
「寝てる。」
「えっ、ど、どうすれば…!?」
「とりあえず保健室だろ。」
いつの間にか田島たちの後ろから来た泉が声をかける。
「しのーか寝かせてやれよ。その体制はお前らにもしのーかにも大変だろ。」
「あ、う、うん…。」
「そ、そうだね。」
千代を支えている三人の気持ちを知ってか知らずか(知ってるが)泉は遠まわしに保健室へ連れて行けと言っている。
さて、誰が連れて行こうか?
あとがき
おお振りでした。水谷・田島(・三橋)→千代の構図。
このあと千代ちゃんは自分が保健室で目を覚ますことに驚愕します。
誰が連れてきたかはご想像にお任せします。誰がいいでしょうかね?