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□三橋の非日常
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犯人に気付かれないように、そろそろとオレンジ色のボールを手に取る。
硬球のボールに似せるためだろう、縫い目の形がついている。
でも、重さも、触り心地も、いつも触るボールとは何もかも違っていた。
栄口君に大丈夫かと目配せをするが、桐青の試合の最後に花井君が叫んでくれた時と同じ目で「大丈夫」と訴えてくれた気がした。
こうやってボールを投げようとして犯人をみていると、犯人がナイフと言うバットを持ったバッターに見えてくる。
向こうを向くバッターは、袋にお金が入って行くのを心配そうな目で見ている。
このバッターは緊張しているんだ。自分が失敗すれば、これから後のバッターに迷惑がかかる。失敗はできない。
そんな表情をしていた。
でも、こちらも守りぬかなければならない。
点数を取られるのは、いやだ!
家にある的で言うと左上の位置に向かって狙いを定めた。
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