サイレンSS

□disappear
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『ねぇ…生きていて 何が楽しいの?』



あんた、誰…?


『アタシは[私]よ、雨宮桜子』




* * *




もう一人の[私]と出会ってから、彼女は事ある毎に私に話かけてくるようになった。

尤も、[話]と云うよりは[説得]だと思う。

彼女は[私]を消したいのだ…

[生きる事、存在する事を諦める]説得。


詰るように、抉るように

時に甘く 優しく

時には虫を潰すように無情に



* * *


「ヤメテ…」

『ねぇ、さっき読んだ雑誌にね [今モテるのは楽カワ女子]とか書いてあったわ』

「………。」

『アンタみたいに心にも生活にも余裕が無くて、ひたすら頑張っちゃうようなタイプって男の人は嫌いみたいよ…クスクス』

「………。」

『きっと夜科だって、クラスに居るようなカワイイ女の子の方が好きよ。
アンタみたいに重くなくて、もっと素直で自然体で。
そうゆう女の子、沢山居るものね?
そして…そんな女の子達から嫌われて、友達の一人も居ない[私]』


クスクス クスクス

冷笑が続く。


『ね、可愛い可愛い可哀相な[私]?もうこんなのやめなさいよ』

彼女は 俯いていた私の顎に手をかけて
グイと上を向かせた。

『今日 イイモノ見付けちゃった。…これ、なーんだ』

「…?」

ピラピラと紙切れを鼻先でひらつかせる。


「!!あ…あぁ」

『ふふふっ そう、あんたの[遺書]よ。』

「やめて…返して!…見ないでッ!!」

『アハハハハハ!自分のモノなのに返すもクソもない…今読んであげるわ』

頭を鷲掴みにされて抑えつけられた私

脚に力が入らない

動けない


『…ちょっと前のね。あぁ、コレ あんたの母親が出て行った時の日付だわ』

「…止めてください…」

『クスクス…イヤよ。なになに…アハハ、何コレ!爆笑だわ!!見なさいよ』


突き付けられた紙には一言


【私の墓は作らないで】




『ふふふ…覚えてる?[私] この意味を。』

「………。」

『アタシ知ってるわ! 父親に家庭ごと捨てられて、母親にも見限られた[私]!!』

頭を掴んでいた手が不意に緩んだと思ったら

バチィ!!!!


頬に激痛が走る。


『サイレンで死ねば遺灰すらも残らないのにね…この馬鹿が』

容赦無い平手打ちが何度も何度も飛んでくる。


『誰にも愛されない、惨めで醜い[私]!!
身勝手で腐った両親が大嫌いで…
何よりもそんな親から生まれた自分の事が大嫌い!!
生きていた証すら遺したく無い程に!!
そうでしょう!?間違っていないハズよ!!』


私は…

何も言い返す事が出来なかった。



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