サイレンSS

□Pain
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湯船に浸かって、ぼぉっと蒸気の立ち込める天井を凝視する。



〔あげはぁ…しっかりして!〕


あぁ


〔おねがい、私をひとりにしないでぇ…〕



泣くなよ姉ちゃん。




***



「おとうさぁん!!どうしよう…!アゲハが、アゲハがぁぁぁ!!!!」

とおくで、ねえちゃんがさけんでる。

あぁ たぶん、父さんにでんわしたんだ…

オレ 何してるんだっけ



あ 赤い。

あかいあかいあかい

これ オレの血 だよな…

「おふろでっ…手首きったのぉ!すごい血でぅ…っううっ…
どうしよう!どおしよおおおおお!!」

あー

そうだ。

なんか、いろいろイヤになって

このあいだ見た ドラマの

ああやってフロで手首をナイフで切れば

死ねるんだっておもって…

「きゅうきゅうしゃ…よんだよぉ
後は…どうしたらいいのよぉお父さん!!何でいつも家にいてくれないのよう…
ううっひっく…うわああああん」


なんで ねえちゃん
あんなに泣くんだろう。

母さんが死んで
父さんも帰って来なくなって

きのうだって ねえちゃんが大事にしてた、とうめいなピンク色のなわとび

オレがおもちゃにして遊んでて
切っちゃって。

〔お母さんに買ってもらった大事な…大切なものなのに!!
アンタなんか…いなくなっちゃえ!!〕

たしかに…

そう いって いたのに


目の前が くらくなる。

きもちワルイ…

あー痛いなぁ



でも



もう あんまり


痛くなくなってきた





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