サイレンSS

□disappear
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『…痛い?痛くないわよね?散々今まで自分で自分を傷つけてきたもの。』


反射的に、ビクッと身体が跳ねる。

いつも サイレンで負った怪我に紛れて判らないようにしていたけど…


『アタシにはごまかせない。みーんな知ってるもの…平手打ちなんて序の口!カミソリで切ったり、爪で掻いて削ったり…ライターで髪を焼いたりもしたわねぇ?
…クスクス それに…』

「嫌!!イヤあァァ!!言わないで!それ以上言わないで!!!!」

『アハハハハハ!!みっともない!不様ね、生きる価値も無いこのメス豚め!!』


頭を踏まれ、額が地面で擦れて血が滲む。


『涙は出ないのね…血は出るくせに。』

再び髪を掴み、[私]は顔を覗き込む。


『辛いでしょう…? 汚いまま生きるのは。』


無意識に 頷いた私。


『そうよね…そうよね…ホントに最低な[私]。』

彼女は、私を抱きしめ
耳元で囁く。

『でもね、諦めれば みーんな忘れて 綺麗になれるわよ?』

「……ホント?」

『うん!ホントよ。

思い出したくもない親の事も

傷口をぐちゃぐちゃにしたサイレンも

アンタのせいで死んだ人達の顔も

誰も信じられなくなってしまった事も

…孤独も

終わりに出来るよ。全部!』



どうして…こんなに苦しいんだろう


頭が割れそうに痛い。


ちらっと

祭先生や夜科の事を思う

けれど…


『…覚えて無いんでしょ? アンタに優しくしてくれた人の事を…』

「うっ…ううッッ!!」

『この…裏切り者!!』


「う…うわあぁぁあァァ!!!!
イヤぁぁぁぁー!!」


頭が…痛い
胸が 痛い


大切な人達だったのに
大切な思い出だったのに


『アンタは何も覚えちゃいない…酷いわ。皆が可哀相!!』

「忘れたくて忘れたんじゃない…!!うっ…うう…」


涙が 止まらない

空っぽになっていく

隅に残っていた
心が、[私]が
ぽろぽろぽろぽろ
壊れて 零れて


無くなっていく
失くなっていく
なくなっていく
ナクナッテイク


キエテシマウ



『フン…やっと泣いた この泣き虫!その顔が見たかったのよ 遂にアンタの負け!!アハハハハハ!!』



ふっ…と、冷たい物が首に当たった。

『[狂気の鎌]…脳内での神経直接切断よ。動かないでね…すぐに楽になるわ。
これで、アンタの魂に括られた重い重い十字架の鎖を切ってアゲル。』



動きたくても

動けない

寒くて

身体が震えて…



『アデュー!!みっともない[私]! 安心しなさい…[綺麗]に生まれ変わった私が、アンタの忘れた[大切な人達]と上手にお付き合いして、愛されてあげる。』



…あぁ


祭先生


夜科…


「よ…しな…」



大好き。

私、それだけは忘れなかったから


それを


伝えられなくて
ごめんね。


沢山、愛してくれたのに

私 忘れちゃった

みんな なくしちゃった

私、もう空っぽだよ…




あれ… 声が出ない




まっくら


さみしいな…



サミシイ




サヨナラ





The end
.
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