(´ω`)φ【wammy's invention laboratory】


□「 FIRE ON THE MOON 」(さる作)
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《 オプティマス! 見てみて!? 》

日本から送られてきた画像に、バンブルビーが興奮気味にそう言う。
それは今年の5月21日・・・日本で観測された金環食の映像だった。

『 おぉ・・・・これは美しいな。』

嬉しそうに笑うバンブルビーの横で、オプティマスも優しく笑いながらそう答えた。

《 凄いなぁ・・・・オプティマスが隠れちゃったよ。》

バンブルビーが無邪気にそう言うと、オプティマスが不思議そうな顔をした。

『 ?・・・・どう言う意味だ?』

訪ねるオプティマスに、バンブルビーは微笑みながら答える。

《 皆で良く言ってるんだ〜〜・・オプティマスは太陽みたいだって。大きくて明るくて温かくて・・・で、おいら達は周りを廻っている星みたいだねって。
オプティマスが大好きだから、離れたくなくて廻りに集まるんだって言ってた。その太陽が月の影に隠れちゃうなんて不思議だね。》

バンブルビーの無邪気な言葉に、オプティマスは頷きながら頭を一撫でする。バンブルビーは嬉しそうに眼を細め、その画像を皆にも見せてくると言い残し走り去った。オプティマスはその背中を見送りながら手を振り、再び画像へと眼を向ける。あの輝ける太陽が月に隠れ、月の輪郭が燃えている様に見える。セイバートロンには無かったこの自然現象に感動しながらも、心がざわめいて仕方が無いオプティマスだった。

『 ・・・・・私が太陽ならば・・・・・メガトロンは月だろうか・・・・?』

碧い瞳に何故か悲しみを浮かべ、オプティマスはそう呟く・・・・。
先程のバンブルビーの言葉に胸が痛んだ。

私が太陽だと言うなら、私は皆に近付きすぎてはいけない。
私の発する光は余りにも大きく、近づく者を焼き尽くしてしまうからだ。
セイバートロンにおいて《 最上者 》は、確かに輝ける存在とされ皆に崇められる。
それ故に常に孤高の存在である事を強いられ、心許せる者など殆どいなかった。

その自分を慕う彼等・・・ジャズやバンブルビーが衛星だと言うならば、私は彼等を生かす為に常に1人で立ち見守っていると言う事になるのか・・・。
彼等が惹かれて集まっているのではなく・・・・私が彼等の近くにいたくてその引力で縛り付けているのなら・・・・こんな滑稽な事は無い。

『 メガトロンならば・・・・こんな事を考えもしないだろうな・・・・。』

寂しげな笑みを浮かべそう呟くオプティマスの脳裏に、雄々しく立つメガトロンの姿が浮かんだ。
彼の暗銀色の姿はこの月の光に似ている。
闇に浮かぶ静かな姿とは裏腹に、その引力で生命を生かしも殺しもする。
地球では月の光にあてられ、狂気する者も居ると聞く。
何処か危険で・・・・それなのに惹かれずにはいられない存在・・・・。

太陽の引力にも惑わされず、自分が選んだ星に添う・・・・それは己が選んだ道を信じ貫くメガトロンそのものだとオプティマスは思った。
そして自分はその姿に惹かれずにはいられないのだと・・・・・。
地球の外側から見れば、月の数億倍も大きな太陽・・・・。
だがここから眺めてみれば、あの小さな衛星に隠れ僅かに覗き見るだけの存在に成り代わる。

オプティマスは思う。
自分と言う存在もそうなのだと・・・・。
故郷も《 最上者 》と言う名も無くした時、名も無い惑星に辿り着けば私は私でしかないのだと。
そこにあるのは過去の名に囚われ、残された灯火で輝いているだけの自分なのだと・・・・。
この画像のように私が輝いているのか、月が輝いているのか分からなくなる時がある。
メガトロンが私を惹き付けているのか・・・私がメガトロンを惹き付けているのか・・・。

愛しくも欲し、その存在に嫉妬する。
この不可思議な現象を、人間達が心待ちにするのは何故なのか。
オプティマス達には瞬きほどの年月が起こす奇跡の美しさを求めてか・・・・。
恐れ敬う2つの存在が重なり合うのに狂気するのか・・・・。
真意は宇宙の闇の中へ溶け、伺う事は出来ない。

オプティマスは憂う。
求めて止まないメガトロンを、自分の光で何時か焼き尽くしてしまうかもしれないと。
その時・・・・自分と言う存在がどうなるのか・・・。
その屍を抱き狂喜するのか・・・孤独に苛まれ狂気するのか分からない・・・・。
この重なり合う美しさが永久に続かぬと同じ様に、変わり行く現実を恐れ彼を求める自分を哀れむ。

『 オプティマス・・・・何をしている?』

不意にメガトロンの声が聞こえ、物思いに耽るオプティマスの意識が現実へと戻る。

『 メガトロン・・・・これを・・・見ていた。』

柔らかく微笑、画像を指差す。
メガトロンはそれを一瞥し、再びオプティマスの方へと視線を戻す。

『 ・・・・・面白いが、ワシはお前を見ている方が良い。如何した・・・何か不安なのか?』

メガトロンの言葉にオプティマスは驚く。

『 どうしてだ・・・?』

『 ・・・・不安そうに見えたからだ。』

そう言いながらオプティマスの頬に触れるメガトロン。
その手の温もりを目を閉じ感じながらオプティマスは言葉を返す。

『 お前が居る・・・・不安など無い・・・。』

自分に言い聞かせるようにそう言い、再び眼を開く。
目の前のメガトロンの姿を永久に焼き付ける為に―――。       《完》

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