(´ω`)φ【wammy's invention laboratory】
□「SHADOW」(さる作)
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メガトロンの事を考える―――。
胸が熱くなり、笑みが浮かぶ。
だが同時に・・・例えようも無い黒い感情が奥底で鼓動を打つのを感じる。
それが背中からジワリと身体を包み込み、私と言う者全てを飲み込もうと不気味に蠢く・・・・。
抗おうともがく私に、聞き覚えのある声が囁く・・・・。
《 お前はメガトロンを――たいのだろう? 》
『 !? 』
深夜―――悪夢で目が覚め飛び起きる。
現実感のない暗闇を見回し、全身に感じる凍てつくような感覚に思わず身震いする。
早鐘のように打つスパークを落ち着かせようと、私は胸に手を当て深呼吸しながら呟く。
『・・・・大丈夫・・・・これは現実・・・・ここは私の部屋だ・・・・。』
微かに震える手から感じる温もりに、少しずつ落ち着きを取り戻しふと溜息を付いた。
ここ数日・・・・何度もこんなふうに悪夢で飛び起きる。
その度にこうして1人息を整え、朝まで眠れない時間を過ごすのだ。
何故と自問自答するも、理由は定かではない・・・。
ただ・・・メガトロンが関係しているという事以外は―――。
『・・・・まだ片付いていない書類があったな。』
理由を考えたくない私は、自室の灯りを点け机へと向かう。
何故《 考えたくないのか 》を考えない為に、明日片付ければ良いと渡された書類に目を通し続ける。
朝になれば・・・明日になってしまえば、新しい1日が始まる。
そうすれば訓練や会議で、こんな風に悩まなくて済むのだと言い聞かせながら―――。
『 オプティマス・・・顔色が冴えないが、どこか具合でも?』
だから会議が終わった後、ラチェットにこう言われるまで自分の具合の悪さに気付けなかった。
『・・・いや、何でも無い。』
悟られてしまったバツの悪さから、つい素っ気なく答えてしまった。
だが昔からの付き合いであるラチェットに、何でも無いと言う言葉が通じる訳もない。
それどころか、近くで会話を聞いていたアイアンハイドまで話に加わってきてしまう。
『・・・・お前が何でも無いと言う時は、大概何かある時だ・・・。何処か具合でも悪いのか?』
子供の頃から傍にいるこの2人に、変な誤魔化しはきかない・・・。
どんなに隠そうとしても、私の些細な変化を読み取ってしまうからだ。
『・・・・少し眠りが浅いだけだ・・・心配には及ばない。』
だから出来るだけ本当に近い事を話し、微笑んで見せるのだ。
夢の事を話したくない・・・そんな一心で。
『 本当に?それだけ? 』
疑い深く問うラチェットに頷き、もう一度微笑んで大丈夫と告げる。
そんな私にアイアンハイド強く腕を引き、自分の方へと顔を向かせる。
『 ・・・っ!? 』
驚く私を力強い碧い瞳が覗き込む。
そして暫しの沈黙の後、有無を言わさぬ強い言葉でこう告げた。
『・・・・・・今日のお前の予定は俺とジャズで片付ける。お前はこのまま自室で休め・・・1人が嫌なら、ラチェットの部屋で休むんだ。明日の実地訓練でヘマをしたら、若い奴らに示しがつかん。』
しかし・・・と言おうとする私に首を振り、そのままラチェットに後は頼むと言い残しアイアンハイドは会議室を後にした。
唖然とする私に、ラチェットは苦笑いを浮かべながら肩を叩いた。
『 君のお目付け役は目ざとい・・・それともオプティマス・・・貴方が嘘をつくのが苦手なだけかな?』
『 私は嘘など・・・!? 』
『 そうですな、嘘はついていない。だが言わない事もあるでしょう?取り敢えず、今日の所はアイアンハイドの言う事を聞いて頂けると軍医として有り難い。』
ニコリと微笑むラチェットに、困惑する私はそれまで保っていた緊張を解いてしまう。
そのせいだろうか・・・急に足元が揺れ、まともに立っていられなくなってしまった。
『 ・・・オプティマス!? 』
倒れそうになる私を、慌ててラチェットが支える。
『 すまない・・・少し眩暈がしただけだ。』
『 では少し横になりましょう。ここからは私の部屋の方が近い・・・良いですかな?』
無言で頷く私を、ラチェットは引き摺るようにしながら歩き出す。
眠るのが嫌な私が僅かに抵抗を試みるも、身体がそれを拒否しすべての動きを鈍くし始めるのを感じた。
―――あぁ・・・そう言えば、もう何日もまともに休んでいなかったなと鈍くなったブレインが思い出したように告げる。
ようやく辿り着いたラチェットの部屋・・・医務室のベッドに横たわった途端、私の意識は暗闇へと堕ちていった・・・。
『 オプティマス・・・?』
遠くに響くラチェットの声を聞きながら、ゆっくりと夢の中で目を開く。
その奇妙な感覚に戸惑いながらも、何時もの夢だとブレインが告げるのだ。
そしてその先の続きを思い出し、周囲に目を向ける―――。
《 あぁ・・・同じだ・・・ここはセイバートロン・・・ 》
紅蓮の炎を巻き上げ、空を黒煙が覆い尽くす。
足元には同胞やディセプティコンの動かなくなった欠片が散らばり、私はそれを踏みしだきながらある場所へと進んで行く―――。
《 嫌だ・・・・行きたくない・・・・ 》
その思いとは裏腹に、私は自分の腕を武器へと変え丘を目指し脚を進める。
この後・・・目の当たりにする光景にスパークが悲鳴を上げる。
《 来たか、オプティマス! 》
辿り着いた先で聞いたその声に、私の視界は足元から声の主へと移り変わった。
その声の主はメガトロン・・・。
敵であった頃の、周囲を照らす色と同じ紅蓮の瞳で私に不敵な笑みを浮かべている。
《 メガトロン・・・! 》
唇から溢れる私の声には、憎悪が込められていた。
その声に惹かれるように武器を構え近付いて来るメガトロン。
踏みしだくのは共に戦い生き抜いてきた、ラチェットやアイアンハイドの―――。
《 ・・・・・メガトロン!? 》
憤怒と憎悪に支配された私は、メガトロンと武器を交え死闘を繰り広げる。
《 ―――嫌だ。》
目の前で弾ける火花・・・戦いで高揚する心。
《 嫌だ・・・・!? 》
口元に笑が浮かんでいるのを感じ―――。
《 止めてくれ!? 》
メガトロンの武器を弾き返し―――。
《 止めろ――――っ!? 》
その逞しい胸に自分のブレードを深く突き刺す―――。
《 ――――――っ!? 》
崩れ落ちるメガトロンと、それを冷徹な笑みを浮かべながら見詰める私・・・。
紅い眼から光を失い、私の足元へとその身体を横たえる。
苦痛に耐えながら私の腕を掴む指が・・・刹那に見詰めるその視線が・・・消え失せた瞬間の高揚感・・・。
夢だと分かっているのに、夢の私が感じている物に怖気立ち声なき悲鳴を上げる。
《 何故・・・・如何して!? 》
苦しみもがく私の背後に何かが近付く気配・・・ドロリとした感覚・・・。
それに気付き逃げようとする私を、それが絡め取り毎日のように繰り返される言葉を囁くのだ。
《 お前はメガトロンを・・・壊したいのだろう? 》
《 っ!? ・・・・違う!? 》
必死に絡め取られた身体を動かし、それから逃げようとする私の視界に見慣れた指が眼に映った。
――――それは私の指。
自分を絡め取る、自分の腕。
《 離せ・・・!? 》
背筋が凍り付く・・・逃げたくてもがく。
その私が目の端に見たのは、私。
同じ顔、碧い瞳。
違うのは笑みを浮かべながら、動かなくなったメガトロンの身体を踏み付ける事。
《 素直になれ―――早くこうしてしまえ・・・そうすれば永遠にお前の物だ―――。 》
その言葉が囁かれた瞬間・・・絡み付いていた腕や指が、ズブズブと私の中へと沈み始める。
驚きに声を奪われ、沈んでゆく物の感触に全てが凍り付く。
《 ・・・・・あ・・・あ・・・・ 》
例え様もない感覚に足が震え、ブレインが高温を発し喉が引き攣る。
誰か助けてくれと思う私に、半身までその身を沈めた私が言う。
《 ・・・・いい加減、私を受け入れろ・・・そうすれば楽になれる・・・・。》
溺れる感覚に苦しみ、それでも嫌だと否定する私は辛うじて左手を動かした。
何かを探し求めるように、懸命に指を動かし掴もうとする。
《 ・・・・助けて・・・・くれ・・・ 》
そう思った瞬間、私の蠢く指先に何か温かい物が触れた。
次の瞬間には、その温もりが私の手を強く握る。
私はその温もりに必死にしがみつき、沈み行くもう1人から逃れようともがいた。
《 ・・・もう少しだと言うのに・・・ 》
恨めしそうに舌打ちし、私から剥がれてゆくそれの言葉が夢の最後だった。
『 オプティマス。』
現実に引き戻された私は、最初に聞いた言葉。
目の前には心配そうに覗き込む、メガトロンとラチェットの顔。
夢ではないと分かる、左手を掴み込むメガトロンの大きな手。
『 ・・・・メガ・・・トロン・・・ラチェ・・ット・・・? 』
戸惑い気味に声を発する私に、2人に安堵の表情が浮かぶ。
『 ・・・・分かるのだな?』
私の頬を撫でながら、メガトロンがそう囁く。
困惑する私は、ラチェットへと視線を向ける。
『 貴方が眠りに落ちて暫く経ったら急にうなされ出したので・・・特効薬に来て貰ったんです・・・。しかし正解のようでしたな。』
『 大丈夫か?・・・お前がうなされる等、いったいどんな夢を見たのだ・・・・?』
メガトロンの指が、ゆっくりと顔を撫でてゆく。
その感触が心地良くて・・・手の温もりに安堵して・・・何時もとは違うまどろみが瞼を重くする。
『 ・・・・・何でも無い・・・・・少し・・・悪い・・・・夢・・・・を・・・・・。』
『 オプティマス?』
『 ・・・・お前さんが来て、安心したのだろう。今度は良い夢が見れるよう、そのまま傍にいてやると良い。』
まどろみに支配され・・・落ちてゆく意識の中、ラチェットのそんな言葉を聞いた。
しかし・・・きっと行ってしまうだろう・・・彼にはやらなければならない事が多くある・・・。
微かに開いた眼が、メガトロンの表情を覗き込む。
それに気付いたメガトロンの、この上なく優しい眼差しと笑みが恐怖に凍り付いたスパークに火を灯す。
『 ・・・・・お前が目覚めるまで、俺がここにいてやる・・・・安心して眠るが良い。』
『 メ・・ガ・・・・・・ン・・・』
泣きたくなるほどの感覚に、私は心から安堵し柔らかい眠りに付く。
きっとあの夢は見ない―――。
だが・・・・・微かに聞いた声を私は忘れない。
皆を―――メガトロンを守る為にも。
《 お前は俺 俺はお前 何時か必ず 夢は現実に 》 《完》
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