(´ω`)φ【wammy's invention laboratory】


□「心の奥底」(さる作)
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最近ブラックアウトは面白くないと感じている。

理由は簡単・・・付き合い始めたバリケードの事だった。と言っても、バリケード本人が如何とかそう言うものではない。バリケードを取り囲む、周りの雰囲気が変わった事が面白くないのだ。
以前は刺々しい雰囲気で話し掛けても面倒臭そうな表情を浮かべ返事もしない事が多かったが、いまは面倒くさそうなのは変わらないがまともに返事をするようにしている。酒にも少し付き合うようになった。その時に不意に浮かべる笑みに、一瞬皆が見惚れる場面なども見られるようになる・・・・これがブラックアウトの胸をジリジリと焦がす原因だった。

今までの事を考えれば、皆がバリケードと話すようになったのは好ましい事だ。争い事も無くなるし、統率が取れるようになってきた。
若手の纏め役として考えるならば、良い事尽くめではあるが恋人としては少々問題ありだと考える。
もともとその見目の良さから注目は集めていたが、それに加えて柔らかさが加われば口説く奴も出て来るからだ。メガトロン様の情人だった時はそんな度胸のある奴はいなかったが、いまは自分にもチャンスがあるのでは無いかと思いブラックアウトの見ていない所で激しい攻防が起きているとスコーが教えてくれた。

『孤立していた時よりマシだし、バリケードはお前といるから雰囲気が変わったのだから大丈夫だ。』

ボーンクラッシャーはそう呑気に言う。
納得する自分もいれば、納得できない自分もいる・・・・複雑な気分だった。そこへ輪をかけて心配の種が持ち上がる。それは最近スタースクリームの取り巻きの1人が、バリケードに対し執拗にアプローチをかけていると言う事だ。そいつは同じ航空部隊ではあるが、飛空猟兵の自分とは全く違うジェットロンだった。スタースクリームを始めとしたジェットロンは、戦闘力もさる事ながらそのフォルムの美しさでも郡を抜いている。無論、プライドも高い奴も多いのも特徴の一つだ。無骨な俺からなら、簡単に奪い取れると思っているらしい。

『バリケード・・・お前最近良いな・・・俺と付き合えよ。』

『・・・酒なら付き合うぞ・・・。』

『つれないな・・・まぁ、そんな所も良いんだが。俺ならブラックアウトよりも良い思いさせてやるぜ?考えといてくれよ。』

娯楽室の片隅でそんな会話が繰り広げられている・・・・その時はスコルポノックが一緒だと言う事もあり、相手はそれだけ言うとバリケードの肩を2〜3度叩き去って行った。相手が去って行くのを確認し、スコルポノックが口を開く。

『・・・・・なんだいアイツは・・・・気に入らないねぇ。』

『構うな・・・・構うだけ時間の無駄だぞ。』

バリケードはグラスに残っていた酒を一気に飲み干しながら、スコルポノックにそう言うと席を立った。

『何処行くんだい?』

『部屋へ帰る・・・汚い物が触れたからな、シャワーを浴びたくなった。』

バリケードのその言葉に、スコルポノックも聞き耳を立てていた奴等もほくそ笑んだ。

『そうかい?じゃあアタシも行くよ・・・あいつが待ち伏せてるかも知れないしね。』

『・・・・良い。』

『アタシじゃ不満かい?じゃあ誰にする?アンタを送りたい奴は大勢いるよ?』

クスクスと笑いながらそう言うスコルポノックに、バリケードは眉間に皺を寄せつつも苦笑いを浮かべ答える。

『・・・・・お前で良い。』

僅かに期待しながらもそう答えたバリケードにガッカリしながら、浮かべた苦笑いすら眼の保養になるとその場にいた者は考えていた。

『途中で格納庫に寄っておくれ、ボーンクラッシャーがいる筈だから拾って行きたいんだ。』

『分かった。』

そう言いながら娯楽室を出ると、スコルポノックがバリケードに耳打ちした。

《・・・アイツには気を付けな。気に入った奴に、片っ端声掛けてんだから・・・手が早いって噂だしね。》

それを聞いたバリケードが訝しい顔で聞き返す。

『・・・・・何を如何気を付けるんだ?』

『アンタの好い人がいないうちに、何とかしようってぇ魂胆見え見えなんだよ。アタシにも声掛けてきてるし、自分のハーレムでも作ろうとしてるんじゃないの?だいたいアタシとアンタが、ブラックアウトの元にいるのが気に入らないとか言ってたしね。気に入らないのはこっちも同じだってぇの!?・・・・全くふざけた奴だよ。』

矢継ぎ早にそう怒るスコルポノックに、バリケードは眼を丸くし微笑むと頭をポンと軽く叩いた。

『・・心配するな。俺はあいつ以外と付き合う気は無い・・・それに余り怒ってばかりいると疲れるぞ。』

その意外な行動と言動に驚きながらも、本当に良い風に変わったなとスコルポノックは思った。だから俺にこう注意を促す。

『少し柔らかくなったって事は、油断しやすくなったって事だよ。気を付けておやり・・・アタシ達も出来る限り協力はするけど、最終的にあの坊やを守れるのはアンタだけだからね。』

そうだ・・・・いくら和平条約で結ばれ、平和に暮らしているとは言え俺達はディセプティコン・・・・欺瞞の民なのだ・・・・。
互いが互いを出し抜き、メガトロン様に認められようとしている輩なのだ・・・・。腹の底で渦巻く野望も何もかも含めて俺達なのだ。

『あぁ・・・スコー・・・すまんな・・・気を付けるよ。』

俺はそう答え、バリケードの部屋へと向った。

『バリケード・・・入るぞ。』

そう声を掛け、返事を待たずに中へと入る。
丁度バリケードがシャワーから出てきた所らしく、その身を飾る黒が艶やかな色を浮かべていた。

『ブラックアウト・・・・如何した?何か用か?』

その艶やかさに見惚れながらも、俺はバリケードにさりげなく声を掛ける。

『・・・いや、今日はお前の顔を見てないなと思ってな・・・ちょっと顔を見に来た。今日は何をしていた?』

『特に何もしてない・・・さっき娯楽室でスコーと飲んだぐらいか?お前は?・・・・今日1日基地にいなかったようだが・・・?』

『俺か?俺はメガトロン様とスタースクリーム・・・・それとオートボットの連中と1日中会議室に缶詰だ。オプティマスの奴が、また何かやろうと言い出してるらしい。』

『・・・・暇な奴だな・・・・。』

フッ・・・と微笑しそう言うバリケード・・・。俺はそのバリケードに近付くと、そっと頬に触れた。上気した頬に流れる雫が綺麗だと思った。バリケードは俺の手に心地良さ気にし、真っ直ぐな眼で見詰め返す。

『・・・・・・スコーに何か言われて来たのか?・・・心配性め・・・・。』

『・・違ぇよ・・本当に顔が見たかったんだ。』

その言葉に切なげに笑い俺の首に手を回すバリケードは、小さな声で囁いた。
それが俺のスパークを鷲掴みにする。

『・・・・俺はお前とだけ・・こうしたいんだ・・・他の奴に興味は無い・・・。』

そうして薄く形の良い唇を重ねてくる・・・俺の方がでかいからか・・少し背伸びをし不安定な身体を、俺は抱き上げベッドへと運んでいく。
バリケード曰く

『女みたいだからこう言う運び方は止めろ。』

と言われるが、俺的にはそのまま押し倒せるから好きだ。ベッドに横たえた時に垣間見る、バリケードの上目遣いで不満そうに睨む顔が堪らない。
そのくせ指や唇を身体中に這わせると、直ぐに熱い吐息を漏らし始める。
この縋り付く腕を・・・求める声も・・・熱い吐息も全部・・・俺の物だ。誰にも渡さないし、手放す気はない。俺の下で熱く喘ぐお前は、こんな俺をどう思っているのか・・・・。聞けないままにお前を抱き、眠りに付く日々が続いた。

そんなある日・・・・俺はメガトロン様の護衛で1日基地を空ける事になった。
オプティマスが数ヶ月も軟禁状態の俺達ディセプティコンの為に、少しではあるが遠出ができるように取り計らってくれたのだ。その下見を兼ねて、一番にメガトロン様とスタースクリーム、サウンドウエーブ他数名が外出する。無論オプティマスとアイアンハイドが案内と言う名の監視役付きではあるが、久し振りの自由な外出は皆の気分を良くした。

『じゃあ、行って来るな。夕刻には戻れる筈だから、スコー達と待っててくれ。』

別れ際・・・そう言う俺に、バリケードは口元で笑いながら無言で頷いた。その表情は困った奴だと言いたげだったが、どこか嬉しそうな気もするのは俺の願望だろうか・・・?

『何も問題を起こさなければ、次は俺達も行けるんだろ?しっかり見張って、若い奴等を押さえててくれよ!?』

人の背中をバシバシと叩きながらそう言うボーンクラッシャーは、俺の顔を見るなりニヤリと笑った。言いたい事は理解していると言いたげだが、やや呆れている感じもする。
そんなからかわれる様な視線に見送られながら俺は基地を後にした―――。

『・・・・やれやれ、1日遠出するだけでこの騒ぎかよ。随分惚れられてるなぁ?』

ニヤニヤと笑いながらそう言うボーンクラッシャーに、バリケードはキツイ視線で返事をし踵を返した。

『何処へ行くんだ?俺達といろって言われたろうが。』

『・・・部屋に戻る。用があったら来れば良いだろう。』

『何だ・・・照れてんのか?』

そう言われ一度は振り返るも、睨み付けるだけで何も言う事無く足早に歩いて行ってしまった。

『馬鹿!何怒らせてんのよ!?』

スコルポノックがボーンクラッシャーの腕を叩きそう言うと、やはり笑いながら優しげにこう答えた。

『いやぁ・・・可愛くなったなぁって思ってよ。以前のアイツなら否応無く殴ってたからな・・・ま、少しやりすぎたがな。スコー、お前追い掛けて一緒にいてくれ。俺は少し時間を置いてから行くからよ。』

『ったく・・・仕方が無いねぇ・・・直ぐに連絡付くように、回線は空けてておくれよ?・・・バリケード・・・待ちな!?』

振り向きもしないバリケードを追い掛け駆け寄るスコルポノックを見送り、ボーンクラッシャーは1度自室に戻りバリケードお気に入りの酒でも持って行こうと考えた。以前・・・ブラックアウトに頼まれ、取り寄せて置いた物だった。

『本当に惚れて惚れられてんな・・・久々の良い事って感じだ。』

仲間の幸せを感じながらも一抹の不安も感じつつあるボーンクラッシャーは、視線をある方向へと流し1人の男を見詰める。
それはバリケードにアプローチを続けていたジェットロンだった。その男は仲間と話をしているようだったが、そいつ等の視線の先にはバリケードとスコルポノックの姿がある。その眼は獲物を物色する雄の光が宿っている事を、ボーンクラッシャーは見逃さなかった。

『・・・・な・・・良いだろ?』

『確かに魅惑的だが、相手が悪いだろ?』

『恐い奴が後ろに控えてるしなぁ・・・やばいぜ?』

『だがそいつも今日はお留守だ・・・。』

クスクスと笑いながらそう言い合う男達に、ボーンクラッシャーが親しげに話しかけて行く。

『よぉ・・・お前等も今日は留守番か?』

その笑顔を不審そうに眺めながらも、男は同じ様に親しげな口調で答えた。

『あぁ、退屈だよ。何か面白い事でもあれば良いんだけどな。』

『全くもって同感だな。ここは俺達には退屈すぎる。まぁだからと言って、何かしでかせばメガトロン様の恐いお仕置きが待っているしな。』

さり気なく釘を指すボーンクラッシャーの言葉に、鋭い目線を向けながら男は嫌な笑いを浮かべこう言い切る。それは無謀な言葉にも、挑戦的な言葉にも聞こえる物だった。

『・・・・そうだな。見付かったらタダじゃすまないな・・・だが・・上手くやれば美味しい思いも出来る訳だ。まぁ・・・ご忠告ありがとうよ・・・せいぜい肝に銘じとくぜ。』

取り囲む仲間がやや不安げに見守る中、ボーンクラッシャーは口元だけで微笑みながら言葉を返した。

『あぁ・・・そうしておけ。でないと何時頭を叩き割られるか分からんからな。』

『何・・・・!?』

流石にこの言葉は聞き捨てなら無いと男が睨み付け何か言おうとするが、逆にボーンクラッシャーの紅く見据える眼に畏縮する。
そして思い出す・・・この男もブラックアウト同様に、危険極まりない者だった事を・・・・。
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