(´ω`)φ【wammy's invention laboratory】
□「それは突然に始まる。」(さる作)
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『なぁ・・・アイアンハイド、最近のオプティマスの様子がおかしいんだが何かあったのか?』
定期訓練の後、唐突にレノックスからそう切り出された。その声はかなり心配そうに響き、面持ちは深刻な感じがする。
『様子がおかしいって・・・?』
そう聞き返しながらも、アイアンハイドは何と無く検討が付いていた。多分・・・数週間前のメガトロンとの事が原因だろう。
アイアンハイドのその問い掛けに、レノックスは溜息交じりである方向を親指で指し示した。その何とも言い難い表情のレノックスを一瞥し、その指し示す方向にゆっくりと視線を流す。するとそこには同じ様に訓練を終え、格納庫に帰還するオプティマスの姿があった。
一見・・・何事も無く何時もの様に優美な姿で戻るオプティマスだったが、一部分かなり違う違う部分がある。普段の姿で格納庫に入るには屈まないといけない為、普段は車の姿のまま入るのが暗黙の了解だった。しかし、オプティマスは何処か上の空で、自分でその事に気が付いていない様だ。アイアンハイドは慌てて声を掛けようとするが時既に遅く・・・・オプティマスは格納庫の入り口に思い切り額をぶつける。
《 ゴワ〜〜〜ン!? 》
格納庫内に響き渡る鈍い鐘の音と共に格納庫の天井部分は歪み、入り口に激突した本人はそのまましりもちをつきへたり込んでいた。痛かったのと何が起こったのか理解出来ない様子で、額を摩りながら目を丸くしている。
『オプティマス! 大丈夫ですか!?』
『『『司令!如何なさったの!?』』』
その場に居たジャズやアーシー'Sがトランスフォームし、心配そうに駆け寄って行く。それを遠巻きに見ているサイドスワイプやディーノ、ジョルトは信じられないと言う感じで声も出ないでいた。ただ1人・・・・バンブルビーだけは、怒っている様な泣きたい様な複雑な表情で見ていた。
『・・・・・ディセプティコンはいまここに居て、平和協定も無事結んではいる。けど、肝心のオプティマスがあれじゃあいつ等何時手のひら返しするか分からないぞ?定期訓練も、その時に備えてやってると言っても過言じゃないんだし・・・・・なぁ、何か知ってるんじゃないか?』
・・・・・あぁ、知ってますとも・・・・。
知ってるけど、それをレノックス・・・お前に言うのは抵抗がある。
『あ〜〜〜〜・・・あいつも疲れてれば、たまにはああなるさ。レノ、お前もそうだろ?自分じゃしっかりやってるつもりでも、ついうっかりしでかす。そう心配するな。』
『機械の身体でも疲れるのか?』
『俺達だって完璧じゃない。怪我もすれば、疲れる時もある。お前等と一緒さ・・・違いは自分で修復出来るか、出来ないか・だ。奴もここの所休む間も無くやってるからな、今日の夜にでも俺から言っておくから心配するな。』
『そうしてくれ、俺も休みたいからな。』
笑いながらそう言うレノックスに、俺は肩を窄め首を傾げる。その少しおどけた様に見える仕草に又微笑み、レノックスは部下達と共に人間達の宿舎の戻って行った。その後姿を見送りながら再びオプティマスの方へ目をやると、自分のやってしまった事態に赤面し皆に心配ないと繰り返し言っている様だ。
そのオプティマスの醜態を、ディセプティコンの連中は嘲る様な表情で見ている。血の気が多い若手がその態度に物申そうと向かおうとするのを、そんな事で争ってはいけないと引き止める窘めているオプティマス・・・・そう、皆が知っているのは大概こう言う《オプティマス・プライム》だ。冷静沈着、戦いにおいては鬼神の如く舞い仲間には人一倍気を配る完璧なる者。
すべてにおいての《最上者》・・・しかし子供の頃から世話してきた俺にしてみれば、あれもオプティマスなのだ。何か気にかかる事や心配事、悩み事があるとその事を考えるのに全部を使ってしまう。子供の頃はもっと大変だった・・・・何かに気を取られ迷子になる、階段から落ちそうになる、ドアに激突する・・・・・まぁ・・・・その何れの事項も全部俺がフォローしてきた訳だが・・・・。
成長してからは余り見なくなった行動が、ここまで酷い状態で出るとはかなり思い詰めてるのか?・・・いや・・・逆に真面目に考え過ぎているのかも知れないな。
『オプティマス!』
俺はそう声を掛けながら、ゆっくりと近付いて行った。
『何やってるんだ、シャキッとしろ!』
立ち上がりかけてるオプティマスに、腕を振り上げながら俺がそう言うとすかさず周りから抗議の声が上がる。
『相変わらずデリカシーがありませんのね!』
『でかいのは声と態度だけですの?』
『懐も大きくないとつまらない男になりましてよ?』
とアーシー'S・・・・お前等は謙虚さをどっかで学んで来い!
『少し冷たい言い方じゃないか?俺達の為に苦労も多いのに、労わる気持ちは無いのか!?』
とジャズ・・・・分かってるなら、チビ達の教育にもっと手を貸してくれよ・・・・。
『あの・・・リペアとか必要なら言って下さい。俺達の部品とか・・・。』
『そうそう、司令が元気になるなら何でもしますぜ!?』
とジョルトとディーノ・・・・いやそこまで身体張る決意をするほどでもないから!?
『ん・・・?バンブルビー・・・如何した?』
何か言いたげな顔のバンブルビーが、俺の腕を掴み小さく引いた。だが何かを言うでも伝えてくるでもなく、言うか言うまいか悩んでいるようだった。その様子を不振に思った俺が、バンブルビーの顔を覗き込むと突然オプティマスの声が響いた。
『バンブルビー!』
それは別に叱りつけてる様な声でも何でもない声なのに、バンブルビーの身体はやたらと大きく跳ね上がった。・・・・如何したんだ本当に???
『あ・・・・んんっ・・・!すまない急に大声を出して・・・。皆も心配掛けた・・・つい考え事をしていてな、うっかりしただけだ。明日も訓練がある・・・もう自室に戻り、ゆっくりと身体を休めてくれ。あと・・・バンブルビー・・・その・・・今日はこの後、アイアンハイドと話をするから大丈夫だ。お前もゆっくり休むんだぞ?』
バンブルビーは俺の腕を掴んだまま一瞬間を置き、躊躇いがちに小さく頷いた。そして1度俺の顔を見上げると、双子やディーノと共に部屋へと向かって行った。
『オプティマス、アイアンハイドに話とは?』
『何かトラブルでも?』
残っていたサイドスワイプとジャズがそう質問すると、オプティマスは一瞬困った顔を浮かべた。それは本当に小さな変化で、俺にしか分からない様な変化だった。
『・・・さっきの攻撃方法の事だろ?』
『え?・・・あぁ!訓練時の事ですか?』
俺の言葉にサイドスワイプが喰い付く。
『あぁ・・・さっきの訓練で、俺が予定とは少し違う攻撃方法を試したんでな。その事で何か思う事があったんだろ?』
『・・・・・そうなんですか?』
訝しい顔で確認を取るジャズに、オプティマスはニッコリと微笑み無言で頷いた。如何やら俺の助け舟に乗ったは良いけど、自分は嘘が下手だから行動で表そうとしているらしい・・・。だがその行動が余計に説得力を高めたらしく、2人はあっさりと納得し俺に一言告げながら皆の後を追って行った。
『・・・そうですか。それはチームワークと言う点では許しがたいですね。しかしアイアンハイドは考えなしで動く男でもない事をお忘れにならないように・・・・。アイアンハイド、お前もいくらレノと気があっても無茶振りは止めてくれよ?些細な変更が皆に危険を及ぼす事もあるんだからな?』
『・・・・今度やる時は、ぜひ俺も誘ってくださいねv じゃっ、お疲れさまっす!』
2人の姿が見えなくなるのを確認すると、何故か俺達は同時に大きく溜息を付いた。
『!? ・・・何でお前が溜息付くんだよ?』
その溜息の大きさに驚いた俺がそう聞くと、オプティマスは小首を傾げながら俯き頭に手を添えた。これは相当悩みが大きいな・・・。俺は周囲に目を配る。遠くでディセプティコン達がチラチラとこちらを見ている。そして何かを小声で話しあったり、小馬鹿にした様な感じで笑ったりしているのが分かる。
『・・・・ここじゃ落ち着いて話も出来んな。』
『え・・・?』
『え・・・?じゃない!・・・話があるんだろう?俺の部屋に来い。』
『・・・あぁ・・・。』
自分で言った事なのに、心此処に在らずのオプティマスは他人事のように返事をする。
不味い・・・・これは末期症状だ・・・・俺はそう思った。
『コーヒーで良いか?』
『あぁ・・・すまない。』
俺の部屋に着いてからも何処か上の空のオプティマス・・・レノの考えも確かだなと感心する。確かにこんな様子では、全体の纏まりが悪くなる心配がある。ましてや大人しくしているディセプティコン達が、ここぞとばかりに良からぬ事を考えるかも知れない。
ただ・・・肝心のメガトロンは腰巾着共々、不気味な沈黙を続けている。奴が良しと言わない内はその懸念は無いと言っても良い。新年の《あの事》以来、奴は常に上機嫌だ。
『ほら・・・飲んで少し落ち着け。』
『有難う・・アイン・・・。』
手渡されたコーヒーを受け取りながらそう囁いたオプティマス・・・。久々に呼ばれる愛称に俺が戸惑っていると、ハッとし照れ臭そうに微笑んだ。
『・・・すまん・・・2人で居るとつい・・・。』
『仕方ないさ、子供の頃からそう呼んでるんだ。急には変えられん。』
実はオプティマスが囁いた《アイン》と言う呼び名は、昔オプティマスが俺の名前をキチンと呼べなくて付けた愛称だった。
まぁ確かに5歳の子供に《アイアンハイド》は呼びにくいしな・・・だから呼びやすく覚えやすい言葉に俺が変えて教えたのだ。この呼び名は俺と2人きりでも、余程の事が無い限り呼ぶ事はなくなったが・・・・それを呟いたとなるとかなりの事態だ。
『・・・・甘い・・・・。』
俺の手渡したコーヒーを1口啜り、そう呟いたオプティマスは隣に腰掛ける俺の顔を見た。
『好みの味だろ?まぁ、コーヒーと言うよりは、カフェオレだけどな。』
ブラックコーヒーを啜りながらニヤリと笑う俺に、オプティマスはようやくリラックスした表情を見せた。
『そうだな・・・子供の頃は好きだった。現在は・・・少し甘いな。』
そう言いもう1度コーヒーを口にするオプティマスに、俺は単刀直入で話を切り出した。
『お前の様子がおかしいのは、メガトロンのせいなのか?』
俺のその質問に、オプティマスは返事の代わりのコーヒーを噴出し激しく咳き込んだ。
『な・・・・!?』
真っ赤な顔をして俺を凝視するオプティマスに、俺はすまなさそうにこう言葉を続ける。
『あ〜〜〜〜すまん!? 実はお前とメガトロンがキスした時、俺は近くに居て見ちまったんだ・・・・。』
『え・・・!?』
赤い顔が益々赤くなり、このまま行くとオーバーヒートするんじゃないかと思った。そこで俺はそれを回避する為に、一時的に話を逸らす事にした。
『・・そ、そう言えば、さっきバンブルビーが俺に何か言いたげだった時・・・急に制止したけど何かあったのか?』
その質問をした瞬間に、いつかサムの家で聞いたやかんが噴く音が何処からか聞こえてくるじゃないか!しかもその音の原因がオプティマス本人で、頭からは火花が散っている。
『ん・・・何だ・・・・この音は・・・って!わ―――――っ!? ちょっ・・・オプティマス!? 落ち着け―――――っ!!』
《 小休止 》
――――1時間後・・・俺はショートサーキットを起こしかけたオプティマスを自分のベッドに寝かせ、その横に腰掛けていた。
『・・・・度々すまない・・・・』
半分シーツに顔を隠しながら、何とも気まずそうに言うオプティマス・・・。如何やら話せる状態になったようだ。
『取り敢えず、全部話せ。』
覗き込む碧い光が揺れる。
『お前が話している間、俺は何も言わないし顔を見るなと言うなら見ない。だからサッサと話して、解決策を練ろう。』
俺のその提案に暫し無言だったオプティマスは、ゆっくりと起き上がると小さく息を吐きながら囁く様に話し始めた。
『あの・・・・え・・・・じ、実は・・・・』
『うん?』
『その・・・アインが見ていたと言うキ・・キスの後・・・・事在る毎に・・そのメガトロンが・・・・キスを・・――――。』
『は? 何・・・?』
『〜〜〜/////・・・だ・・・だから、その・・・通路とか・・・・基地内の出会い頭とかに・・・・会う度にキスをして来るようになったんだ!?』
『・・・・はぁ〜〜〜〜!????』
恋する乙女の恋愛相談の如き話に、俺は驚きと混乱と戸惑いを感じずには居られなかった。ついでに言葉も失ってしまった。ので・・・この先の話はオプティマスの言葉と回想になる。
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