(´ω`)φ【wammy's invention laboratory】


□「箱入り息子 Vol,2 《 キスの後には 》」(さる作)
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その日のオプティマスは、確かに少し酔っていた。

『・・・ほら、オプティマス!こんな所で寝てないで、とっとと自分の部屋へ戻れ。』

深夜の娯楽室・・・誰もいなくなった室内のソファーに、オプティマスは気だるそうに横たわっていた。何の事は無い・・・・若い連中と飲んでいて、つい飲みすぎただけの話だ。
たまには部下との交流をと思うオプティマスの気持ちは分かるが、あの底無しディーノと飲むのは俺を含めた他の連中の事も考えて止めて欲しい。現在だって『心配ないからと帰されたけど、やっぱり心配だから見て来て欲しい。』とジョルトに言われて来た位だからな・・・・。

『う・・・・アイアンハイド・・・?』

眠そうな目をこすりながら、少し顔を上げるも直ぐにまた眠ろうとする・・・・相変わらず酒は弱いのだなと俺は感じた。

『アイアンハイドじゃない!・・・・まったく・・・あまり強い方じゃないんだから、少しは加減して飲め!?』

少し語気を荒くしてそう言う俺に、オプティマスは目を閉じたまま答えてきた。

『・・・・そう言うな・・・・久し振りに皆が飲もうと言ってくれたのだ・・・それに少し眠いだけで、そんなには酔ってないぞ?』

・・・・・酔ってるから眠いんだろうが・・・。そう思いつつも俺はあえて言わず、自室に戻るように再度窘める。

『・・・・・そうか、そりゃ悪かったな。だけどこんな所で寝るな・・・ここは冷えるし、他の連中が来てもお前が気になってゆっくりできんだろうが。寝るなら自分の部屋で寝ろ。』

うんうんと頷きはするものの、いっこうに目を開ける気配は無い・・・。それどころか浅い眠りに付きかけている様にも見える。困り果てた俺は、兎も角どうにかして起こそうとオプティマスが横たわるソファに手を置き顔を覗き込みながら声を掛け直した。

『・・・・おい・・・・寝るなって・・・!・・・オプティマス・・・?』

イマイチ反応が無いな・・・と思い、更に顔を近付け様子を見る・・・うん、安らかな寝息を立てているな。

『・・・・はぁ・・・・仕方が無い・・・担いでいくか・・・。』

何時までも世話が焼けると思いつつ、俺がオプティマスの首の下に右手を潜らせ頭を支えつつ少し起き上がらせる。すると僅かにオプティマスの瞼が動き、そのまま薄く目を開いた。
俺が身体を起き上がらせた事で、少し目が醒めたのかと思った俺が声を掛けようとしたその時・・・不意にオプティマスが両腕を俺の首に絡み付けてきた。その行動に驚いた俺がオプティマスに声を掛ける為に口を開こうとした瞬間、何を勘違いしたのかオプティマスが何とも嬉しそうに微笑し近付いて来るじゃないか!

『・・・・・・メガ・・トロン・・・・・?』

そしてそのまま俺を強く抱き締め、甘える様に小さく頬擦りする・・・・。その時の俺の心情を誰が想像できる?キスされないだけマシだが、あのメガトロンと間違えられたんだぞ!?しかもこんな甘いオプティマスの声なんか、生まれてこの方聞いた事も無い!!

『・・・ふふ・・・温かい・・・・。』

父性なんだか兄性なんだか分からんが、物凄く複雑な心境な俺にオプティマスはまったく気が付いていない。ちょっと泣けるね・・・とか思いつつも、折角抱き付いてきたのだからこのまま部屋まで連れて行こうと俺は考えた。

『・・・行くぞ。そのまま抱き付いてろよ?』

『・・・ん・・・メガトロン・・・。』

そう囁きながら絡めた腕に力を入れてくるオプティマス・・・・だから俺は違うって!だいたいあんなに眼つき悪くないだろうが!?何と言うか、人を睨み殺すと言うか・・・・射抜く様に見据えると言うか・・・そう、丁度ドアの前でこっちを睨み付けてるあの図体のデカイ・・・・・・・・・メガトロン。

『・・・っ!?』

驚きすぎて声も出ない俺に抱きついたままのオプティマス・・・それを物凄っぉおおおおおい眼で凝視するメガトロン・・・・何も言い訳するような事はしていないのに、この気まずさは何なんだろうか・・・?

『め、メガトロン・・・別に俺はオプティマスを・・・。』

『・・・・分かっている。酔い潰れたそいつを迎えに来たのだろう?』

腰に手をあて不機嫌そうな低い声でそう言うメガトロン・・・一応状況は理解しているらしい。だが・・・・どこでそれを知った・・・?

『・・・何故それを?』

訝しげに聞く俺に、メガトロンは苛付きを隠しもしないで答えた。

『はっ!ここに来る途中に小耳に挟んだのだ。・・・気に入らないと言うなら、貴様の仲間に少し声を小さくするように言うのだな!?』

大方・・・ディーノとサイドスワイプ辺りが大声で話しながら歩いていたのだろう・・・。これはメガトロンの言う通りに厳重注意モンだ。時間も遅いしな。

『それは悪かった。あいつ等には注意をしておこう。いま直ぐこいつを退けるから、ゆっくり飲んでくれ。ほら・・・オプティマス、動かすからな。』

おざなり程度の謝罪を言い、俺はオプティマスを抱き抱え歩き始めた。それを面白くないと言わんばかりに睨むメガトロン・・・・これ位は別に良いよな・・・・?と心穏やかではいられない雰囲気だ。しかも当のオプティマスは俺に抱き付いたまま動こうとしない。

『・・・寝ているのか?』

横をすり抜け様とした時、不意にそうメガトロンに聞かれ俺は立ち止まった。

『酔って寝ているだけだ・・・心配すんな。』

目を逸らしながらも聞いてきた天邪鬼なメガトロンに、俺はそう言葉を返しそのまま娯楽室を後にした。

『・・・・何だ・・・・心配して来たのか・・・。良い所、あるじゃないか。』

クスリ・・と笑いそう呟く俺に、オプティマスは再び小さく頬擦りする。

『・・分かった分かった・・ったく、目が醒めたら良く言い聞かせないとな。』

俺はそのままオプティマスを部屋まで抱き抱えて行き、そっとベッドの上に寝かせるとそのまま自室へと戻って眠りに付いた。ただそれだけの事で終わる筈だった―――。

次の日、案の定二日酔いになったオプティマスは会議室で頭を抱えていた。
こんな時でも会議に出席するのは偉いとは思うが、そのしかめっ面は如何かと思うぞ?

『・・・・以上、今週の定例報告会議を終了する。次週の訓練での注意点を各自・・・・良く理解しておくように。』

自分の声すら頭に響くのか、こめかみを押さえながらそう言うオプティマスに当然皆困惑気味だ。

『アイアンハイド、オプティマスは如何したんだ?』

ジャズがそう聞いてきたかと思えば、横からバンブルビーが心配そうに覗き込む。

『あぁ、ただの二日酔いだ。犯人達も隅っこの方で伸びてるだろ?』

俺が会議室の一番奥・・・若手3人衆の方を親指で指し示すと、そこには机の上に突っ伏したジョルトとサイドスワイプの姿があった。

『あいつ等か・・・そうすると真犯人はディーノだな?』

『良く分かるな・・・兎も角、今日は仕事にならんだろうからこのまま寝かせる。お前達はなるべく静かにしてやってくれ。』

俺はジャズとバンブルビーにそう言うと、何も答えずにただ手を上げOKの意を示してくれた。そしてジャズは、そのままバンブルビーにそっと耳打ちし始めた。

《さぁバンブルビー・・・オプティマスに沢山お酒を飲ませた悪い兄さん達にお仕置きだ。》

するとバンブルビーは嬉しそうに頷き、ジャズと共にぐったりしている2人に近付いて行く。それに気付いたのか近くで2人を笑っていたディーノが逃げ出そうとするも、会議室の出口付近でラチェットに捕獲されそのまま何処かへ引きずられて行った。素直にジャズに叱られた方が楽だったと思うが、お調子者のあいつにはラチェットの説教の方が効くかも知れないな。

『・・・・うぅ・・・・』

そうほくそ笑む俺の隣では、オプティマスが頭を抱えながら小さい呻き声をあげていた。どうやら一仕事終えて気が緩んだらしく、一気に体調が悪くなったらしい。このままここに居させても仕方が無いし、これだけ体調が悪くなったのなら深酒には懲りただろう。今回だけは軽い説教で済ませてやるか・・・。

『・・・・懲りたか?』

『・・・もう・・・酒は飲まない・・・・。』

『そうしろ・・・俺も困ったしな。』

俺の言葉に顔を上げ、不安そうに見詰めるオプティマス・・・どうやら俺に抱き付いたのは覚えて無いらしい。ここは他の奴に同じ事をしない為にも、キチンと話した方が良さそうだな。
まったく・・・現在思い出しても恥ずかしい・・・あんな甘えた声で囁かれたら、ジャズあたりは一発KOだぞ。

『私が・・・何かしたのか・・・?』

凄く不安そうに聞いて来るオプティマスに、俺はワザと呆れた顔をしながら淡々と話し始めた。

『したさ、酒に酔って寝そうになったお前を起こす俺にいきなり抱きついてきた。』

『えっ!?・・・・うっ・・・痛・・・。』

俺の言葉に驚き、何か言おうとしたオプティマス・・・しかし自分の言葉が頭に響いたらしく、再び頭を抱え込む。昨日のメガトロンの事もあり、少し意地悪な気持ちになった俺はそのまま言葉を続けた。

『嘘を付いてどうする?お前・・・どうやら酒を飲みすぎると、傍に居る奴に抱き付く癖があるらしいぞ?俺だから良かったものの、他の奴だったらどうする!?・・・しかも猫みたいに甘えた声で、嬉しそうにあいつの名前を呼んで頬擦りまでしてきたぞ。まさかとは思うが、あいつとはもう・・・・。』

『!?・・・・ち、違っ・・・!!・・あ・・痛・・そんな・・・・そんな事・・・・・・・その・・すまん・・・本当に・・・もう止める・・・・。』

耳まで真っ赤に染めてそう謝るオプティマスを見て、俺は反省心を促せたと満足したが一応駄目押しをしておく事にした。本当に俺とかメガトロン以外の奴に抱き付いたら危険だしな。俺はそっと耳打ちした。

《・・・・それはもう良い・・・・一応メガトロンにも謝って来い。酔い潰れたのを聞いて見に来たうえ、俺に抱き付いて離れないのを見てかなり不機嫌になってたからな・・・。》

その俺の打った釘はかなり深く刺さったらしく、オプティマスの表情は強張り一気に蒼褪めてきてしまった。それを見た俺は少しやり過ぎたかなと感じ、慌ててフォローをし始める辺り俺は甘いな。

『・・・一応、酔い潰れてる事は説明はしておいたから心配するな。あいつの事だから自分がそうしたかったんだろう。上手く謝っておけ。』

『・・・あ・・・あぁ、すまない・・・。じゃあ、今からでも・・・っ痛・・・・。』

急に立ち上がろうとして再び二日酔いの頭痛に襲われるオプティマス・・・・これで二度とああ言う無茶はしないだろうと俺は安心した。
後はあの若手共を良く言い聞かせれば良い。一緒に飲みたいのは理解出来るが、度を越えてるからな。少しふら付きながらも部屋を出ようとするオプティマスに、俺は声を掛けながら肩を叩きアッサリと追い越して行った。

『無理しないで明日にしろ。でなきゃ、午前中は休んで午後に行け。そんな顔色のままじゃ、かえって心配するぞ。』

『そうか・・?』

『あぁ、俺はこのまま若手の訓練に行く。じゃあ、また夜にな。』

オプティマスはその言葉に少しぎこちなく微笑むと、軽く手を挙げる事を返事にしゆっくりと歩いて行った。それがその日午前中の出来事だった―――。

その日の夕食・・・オプティマスの姿は無く、皆もそれを気にしてはいたが二日酔いと言う事もあり誰もオプティマスの不在を口にする事は無かった。俺でさえ後で様子を見に行けば良いと考えたくらいだ。だがそれが不味かった。
その後バンブルビーや双子達の相手をしたり、数日後に迫ったレノックス達との合同演習についての打ち合わせ等・・・・気付いたら時刻は深夜に差し掛かってしまったのだ。
こんな時間に・・・・とは思ったか、あれから1度も食堂や皆の前に現れないオプティマスが気になった俺は様子を見に行く事にした。そして水も持っていくかと思い、途中にある娯楽室に寄った時・・・・いきなりオプティマスが飛び出し俺にぶつかりそうになる。

『うぉっ・・・・!?・・・オプティマス?何だ!?如何した・・・!!』

驚きそう声を上げる俺の顔を、一瞬だけオプティマスは見てそのまま何も言わずに自室へと足を早めて行った。その一瞬だけの表情が何とも苦しそうで、それが気になり追い掛けようとする俺に誰かが声を掛けてきた。その落ち着いた低い声に振り返ると、そこに居たのはメガトロンの部下で1番気性が激しいバリケードだった。そのバリケードが俺を見据えている。

『おい・・・貴様・・・アイアンハイド・・・中へ入れ。』

ディセプティコン達の中でもブラックアウトと共にメガトロン崇拝者であるバリケードは、その戦い方の激しさでもかなり目立ち俺達の手を焼かせた奴だ。無口で無愛想だが、オプティマス同様に見目が麗しいと誰かが言っていたのをふと思い出す。

『・・・・何か用か?大した用事でもないのに呼び止めたなら、俺は向こうに行きたいんだがな?』

そう言う俺をその切れ長な赤い目で睨むバリケード・・・・確かにタイプはかなり違うが、綺麗な顔立ちをしている。そのバリケードは薄い唇を余り動かさず、俺の聞いた事に関しての返答を簡潔にしてきた。

『・・・俺が用がある訳ではない。メガトロン様が貴様を呼んでいるのだ・・・・中へ入れ。』

『メガトロンが・・・?』

オプティマスの事も気になるが、メガトロンがここにこいつといた事も気になる。それにメガトロンとオプティマスが昨日の件を話し、それに対して上手くフォローも謝罪も出来なかったのかと考えた俺は中へ入る事にした。
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