(´ω`)φ【wammy's invention laboratory】


□「◯lympicは火の車 - TOSHINOBU KUBOTA - 」(さる作)
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大都会東京・・・・この街の光と闇の中、密かに息衝き時を待つ男がいる―――。

その男は《L》の名を求め・・・ライバルと共に《キラ》を追い詰める事よりも、自分自身の手で何もかも手に入れる事を望み故郷を去って来たのだ。

彼の望みはただ1つ・・・・《キラ》を追い詰め、《L》の座を手に入れる事・・・・。
その為に彼はありとあらゆる努力をし、着実に足場を固めていた―――。

その日彼は人気の無い住宅地を1人歩いていた。暗闇に紛れる様に辺りを警戒しながら歩む彼は、とある場所まで来ると突然足を止めポツリと言葉を漏らした。

『・・・・誰も見てないな・・・・。』

鋭い眼光が周囲を見回す・・・だがそこに人影は無く、闇の中に暗めの街灯が浮かぶだけだった。
彼は暫くの間そこに佇み様子を伺っていたが、やがて何かに導かれる様にすぅっと闇の中へ吸い込まれて行った。
彼はその闇の中・・・足音を立てずに階段を上がり、とある部屋へと入って行く。
静かにドアを閉じ・・・そっとドアスコープを覗き、人が近付いて来ない事を確認するとようやく安堵の表情を見せた。

『・・ふぅ・・』

髪をかき上げながら小さく溜息を付く・・・そして室内へ入るべく、身体の向きと視線を奥の明かりへと移し・・・その場に点々と落ちている物を見た途端こう呟いた。

『う・・・!・・・・あいつ・・・また!』

彼の神経を逆撫でる物・・・それは一足先にアジトに戻っていたマットの服や靴下だった。それは奥のリビングに続く廊下に点々と・・・まるでチルチルミチルのパンの様に点々と落ちている。
彼はそれを怒り心頭に拾い集めながら進み、その怒りのままにドアを思い切り足で蹴飛ばしリビングへと乗り込んだ。

『・・・くぅおらぁぁぁ!マットぉぉぉ!?・・・手ん前ぇ、何度言ったらわかんだぁぁぁぁ!!』

室内に彼の怒鳴り声が響き渡るが、名指しされたその主はあっけらかんとした顔で彼の帰宅を喜んだ。

『お、おっ帰り〜〜。お疲れさん、メ〜ロ〜。』

ゲーム機を片手にチョコレートを頬張るマットは、メロが何故怒っているのか・・・そもそも怒っている事すら分かっていない様だった。

『゙おっ帰り〜″・・・じゃねー!お前何回言えば分かんだよ!?脱ぎ散らかすなって言ってんだろ!!』

『ん゙あ゙?・・・あ――――、悪りぃ悪りぃ・・・ついウッカリ・・・。』

怒っているのにも係わらず、マットは相変わらずチョコレートを頬張りながらヘラヘラとして応えている。それを眺めるメロは、脳の血管が切れそうな感覚に陥りそうになった。
最早何を言えばマットが決まりを守るのかが分からない・・・そもそも2人でこのアパートに住んでいるのだって、マットから提案した事で決まりもマットが率先して決めた事なのに・・・・怒りのあまり絶句するメロは、他にも何かやらかしていないかと室内を見回した。
姑の様なこの日課も、潔癖な自分の性格が災いしていると分かりながらも止める事が出来ない・・・。

決まりは決まり・・・キッチリカッチリこなし、キチンとしていなければ気が済まない!そんな風に思案を巡らせているメロの目に、空の缶詰が床に転がっているのが映った。それを見たメロの顔が、一気に蒼褪めていく。そのメロの豹変振りにマットは、視線の先に何があるのかを探り同じ様に蒼褪めた。

『お・・・・そ・・ぜ・・・く・・・こ・ク・・・・・・!?』

わなわなと震えながら缶詰を指差すメロは、言葉にならない声でマットに話し掛ける・・・・。流石のマットもこの状況はまずいと感じたのか、姿勢を正しメロの言わんとする事を受け止め様とした。

『・・・゙お前、それ全部食ったのか?このクソッタレ!?″・・・・合ってるか?』

名推理だろと言わんばかりに、キリリとした顔で自信満々に言うマット・・・その態度に、とうとうメロの堪忍袋の尾が切れた。

『おっまえぇぇぇぇぇ!貴重な食料を食い尽くしやがったのかぁぁぁ!?馬鹿か手前ぇはぁ!!』

『え・・・あ?・・・あぁ、悪ぃ悪ぃ。我慢はしてたんだけどさ、腹減っちゃって・・・。明日にでも俺が買いに行って来るから、あんまりカッカするなよ・・・な?』

特に悪びれる事も無く飄々とそう言うマットに、メロの怒りが再加熱を起こした。

『ふざけんな!そんな金ある訳ねぇだろが!?給料日まで後3日あるっつうの!?如何すんだよ!!』

『えと・・・通帳に・・・』

燃料投下されました。

『お前ぇは馬鹿かぁ!あ・れ・は!?・・俺達が一日も早く“キラ”探しを始める為の、大事な資金だろうが!!』

最早怪獣並みに暴れマットを左右に振り回すメロに、マット自身は困り果てていた。
それは反省から来るものでは無く、自身の理由からくる物であった。

《 やっべ〜〜〜・・・まさか缶詰食った位でこんなに怒るなんて思ってもみなかったからな〜〜〜こんな時に、実は今日出た自分のバイト代全部使い込みましたなんて言ったら・・・・俺、天使になっちゃうんじゃないかぁ・・・? 》

そんなマットの思考がダダ漏れだったのか、はたまたメロの観察力が勝ったのか・・・急に暴れるのを止めたメロは、マットの目をきつい眼差しで覗き込んできた。何時もだったら何の事も無い眼差しも、やましい事があると物凄く痛い物に変わる・・・。何とか対抗して隠し通そうと試みるも、その視線の重さに耐え切れずものの数分で視線を外してしまう。それを見たメロは先程とはまったく違う、低い声で静かに語り始めた。
その声の低さにマットは思わず身震いするほどだった。

『マット・・・・此処にあるこのゲームソフト・・・それにこのゲーム機・・・・最新のやつじゃないか・・・・?食い散らかした缶に紛れてある菓子袋・・・・携帯のアクセ・・・これ・・・・いったい如何した?・・・お前ん所も俺と同じ給料日だったよなぁ・・・・?』

最早鬼と化したメロに言い訳は通じない・・・それどころか言い訳をすればするほど自分の生存に危機に陥ると悟ったマットはしどろもどろになりながら問い掛けに答え始める。

『い・・いや、ほら!今週の土曜日が給料日じゃん?そうしたら実際手元にくるのは月曜日で、それじゃあ大変だろうから今日〜〜あげようって・・・うちのオーナー優しいからさぁ・・・あは・・・あははは・・・。』

メロの表情は変わらない・・・むしろメロの背後の鬼が、一人増えた気がする・・。

『で、でさぁ!せっかく給料も手に入ったし、二人で何か美味いものでも〜〜とか思ってぇ。ケーキ屋寄って、出て来たら目の前で新作ゲームのデモやってんじゃん?いや、我慢はしたぜ?我慢はしたけど特別セットが残り3個ってなったら、ゲーマーとしては買うしかないなっ・・・・て・・・・。』

『ほぅ・・・・それが弾みでタガが外れ、持ち金全部使いきったと・・・・。』

物凄い低い声でそう囁かれ、マットの背筋は冷水を浴びせられた様な気がした。しかしこれに怯えて言わないでいたら、自分の立場がますますまずくなると感じたマットは反論を始めた。

『馬鹿言うな!お前がニアを出し抜くために頑張っているのを、誰よりも分かってる俺がそんな事する訳ねぇだろ!?。』

その言葉にメロはちょっと表情を変えた。
少しは自分達のやろうとしている事の大変さと、ニアを出し抜きたい自分の気持ちをそんな風に考えていてくれたのかと感心したからだ。
メロはその言葉をきっかけに、掴んでいたマットの胸倉を放し微笑した。その笑顔にマットも胸を撫で下ろし、服を直しながら微笑み返した。

『そっか・・・それなら良いか。ようやくお前も自覚をしてくれたのか。で?残りは?』

『あぁ!え・・・と・・ほら!?』

満面の笑みを浮かべながらポケットの中身をメロに手渡すマット・・・それを同じ様に満面の笑みで受け取るメロは、手の中で響く小銭の音と微かな紙の感触に身を凍らせた。

『俺にしてはかなり残した方だぜ!遠慮せず使ってくれよ!?』

自信満々にそう言うマットに、メロは壊れかけの玩具の様にぎこちない動作で自分の掌に目をやった。
ゆっくりと軽く閉じた指を開き・・・冷静になれと自分に言い聞かせながらそこにある物を見詰める・・・・。
紙が2枚・・・いや3枚?・・・500円玉が・・1枚と・・・・数えるには虚しい端数達・・・・しかも紙のうち1枚はレシートだった―――。

『な! 凄くね!? この俺が6千円も残すなんて奇跡だぜ!!・・・・・あれ?・・・・メ・・メロ??』

自分の掌と見詰めあったまま微動だにしないメロに、マットは顔を覗き込みながら不安気な声で話し掛けた。
するとメロはゆっくりと顔を上げ始めた。その様子を見て一瞬マットは安心したが、次の瞬間には恐怖に戦く事となる。

『メメメメ・・・メロぉ?』

声が裏返る程驚いている自分に驚いたマットは、マグマが競り上がる様にゆっくりと顔を上げきった。その表情はとても静かで口元は微かに笑ってはいた・・・・が、その目は真冬の北極圏の如く吹雪いていた。

『残りはどうした・・・?』

『え?』

『残り・・・・お前の給料は毎月7万だろ?・・・・残りの6万ちょいはどうした・・・・?』

『いや、だから、その・・・・・。』

徐々に迫り来るメロに、マットは徐々に小さくソファへと座り込む様に後退って行った。ついには逃げる事すら出来なくなり、仁王の形相のメロに見下ろされる形に追い込まれた。

『メメメメメロ、落ち着け! ここはひとつ冷静に話し合お・・・・!?』

『ふざけるなぁ―――!?』

『でっ!?』

マットの言葉を遮り思い切り踵落としを喰らわせながら、メロは雄叫びを上げ始めた。

『お前・・・・っ!ただでさえ役に立って無いのに・・・・!? そのチャラさにバイトは精々コンビニ・・・なのに飯は大食らいな上宵越しの金は持たないときた!!・・・・・それでもここ最近、かなり真面目で金も使わないでいたから見直してたのに・・・心底馬鹿か貴様は―――――!!』

メロの言葉に反論とか言い訳とかをしようと藻掻くも、見事に決まった踵落としに頭が上手く働かない。

『お・・・・☆☆・・・・』

目から星が出るとは正にこの事だと思ったマットに、更にメロの怒りの罵声が投げ付けられる。

『おま・・・・っ!俺が何の為に頑張ってると思ってやがる!?・・・・ハウスを出て、支援を断り、自分だけの力でニアを出し抜いて・・・・・そう考えてバイトして稼いでもう直ぐ何にも縛られず活動できる資金が貯まりそうだっつ―――とこまで来て・・・・・お前だって協力するっつ―――からここに居るんだろうがぁ!? 分かってんのかぁぁぁぁぁ!!』

・・・・・その頃、噂のニアは・・・・・・

『ジェバンニ、お茶を下さい。』

『ニア、日本での拠点確保できました。』

『そうですか、分かりました。ハルは引き続き日本での準備を進めて下さい。』

『ニア、ご希望の玩具を一通り揃えて来ました。』

『ありがとうございます、レスター・・・中々趣味が良いですね。』

『ニア、お茶です・・・・・随分呑気ですが、良いんですか?メロと言うご学友に先を越されてしまいますよ?』

『・・・・まぁそれならそれで・・・・良いんじゃないですか?・・・・・今頃何をしているやら・・・・。』

遠い目をしながら窓の外を眺めるニアは、そう言いながらクスッと微笑んだ。
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