kira事件、特別捜査本部・二千五◯二号室


□「an Englishman in N.Y.」(さる作)
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僕達が出会ったのは、ほんの小さい時だったね・・僕は身体が弱くて、何時も外で元気良く遊んでいる君達を羨ましく思っていたんだ・・。ギロロ君もケロロ君も本当に楽しそうで、見ているしか出来なかった僕は本当に寂しかったんだ。何時しか、一緒に外で遊ぶ様になった時・・僕は何時も君の手を求めて追い掛けていた。不意に振り向いて、取ってくれる手の温もりが嬉しくて・・夢中になって追い掛けていた。君は覚えているだろうか・・ギロロ君がお兄さんと出掛けていて二人だけで遊んだ時の事を・・。何時もなら早足で僕を置いて行ってしまう君が、僕の手を取り同じ速度で歩いてくれた。気持ちの良い風が吹いて、僕達の頬に触れ去って行く。誰もいない森の中を探検し、大きな木の下でお菓子を分け合ったね・・一枚のチョコレートを半分に折った時、勢いで僕の顔にチョコがついた時の事・・・今、思い出してもドキドキするよ。

『あーゼロロ、顔にチョコついてるよぉ!』

『え? 何処?』

『我輩が取ってあげるよ。じっとしててね・・』

『うん、ケロロ君。』

僕は眼を瞑り、ケロロ君がチョコを取ってくれるのを待った。頬に柔らかい感触・・指じゃなく・・!?

『えへへ〜、舐めちゃった〜。』

『ケ、ケロロ君!?』

慌てふためく僕に悪びれた風も無く、飄々としたままで君は言った。 

『だって〜ゼロロのほっぺた美味しそうだったんだもん・・美味しかったけど。』

顔が赤くなるのを感じる。熱くて汗が出て来る。其れを見たケロロ君は僕をからかう様に耳元で囁いた。

『ゼロロ・・可愛い・・本当に食べちゃおうかな?』

何時もより少し大人びたケロロ君の声が印象的だった。ホンの少し低くて、落ち着いた声・・何だか知らない人の声を聞いてる様な感覚だったのを覚えている。耳に触れる唇も、吐息も熱く感じたのは自分の顔が燃える様に赤いからだろうと思い込んだ。困惑し二の句を付けない僕を察してか、君は急に思い切り頬に噛み付いたね。あれは本当に痛かったよ・・。

『!? 痛ぁぁい!?酷いよぉ、ケロロ君。噛むなんて・・』

『食べようかっつったじゃん!?』

何時もの無邪気な、何時ものケロロ君に安心し笑顔が出る。良かった・・何時ものケロロ君だ・・そう思っていた。君の少し寂しそうな顔を見るまでは・・。何時もの様に何時もの場所で別れて帰ろうとした時、何故か気になって・・君の方をそっと振り向いたんだ。心臓がどきりと音を立てた・・夕日を受けながら僕の顔を見る君の顔は、本当に大人びていて・・とても寂しそうだったんだ・・。如何してかは・・その時知る由も無かったけれど・・。

『じゃぁね、ゼロロ。又、明日な〜。』

君は繋いでいた手を離し、一目散に走って行ってしまった。僕は君の姿をずっと見ていた・・。家に辿り着いても、食事をしていてもあの時の君の顔が忘れられなくて・・きっとあの時に君の事が好きになってしまったんだと思う・・。次の日も君と一緒に遊んだりしたけれど、君は何時もの通りだった。何も変わっていなかった。ギロロがいたせいだろうか・・?何処と無くぎこちない感じはする物の、変わっていない僕達の関係に少しの安心感と・・不安が過ぎった。今、思う・・・この時に何か行動を起こしていたら、僕達は変わらずにいられたんだろう・・きっと・・知らなかったからこそ犯す罪もある事を、僕は後に思い知る事になる。

其れからの僕達は、変わらぬ日々を過ごしていた。学校へ行き、遊んで家に帰る。時折、あの時に見せた君の顔を思い出しては一人考え込んでいた。その内に僕達は夫々に道を選び始めた。僕はアサシンとしてに道を選び、ギロロは機動歩兵に・・君はと言うと相変わらずのらりくらりとしていたね。でも先生が言っていた。

『ケロロは隊長としての資質は十分あるし、能力もある・・何故真面目にやらないんだろう?』

『“処理”がキチンと行われていないんじゃないのか?以前の記憶が残されているとか・・あの技術はまだ十分じゃないんだろう?』

・・・大人達の会話は僕にはよく分からなかった・・・いや・・分かりたくなかったのかも知れない。僕は立ち聞いてしまった事を先生達に知られない様に、そっとその場から離れて帰路に着いた。夕暮れの中、誰も居ない道に長い長い影が僕の前を歩いて行く・・さっき聞いてしまった会話が頭の中を繰り返し駆け巡る・・。

『・・・何だったんだろう・・』

そんな言葉が口から漏れた時、不意に影が重なった。

『ゼ〜ロロ、一緒に帰ろ!?』

僕の腕に纏わりつく様に君が無邪気に存在していた。僕は驚きながらも、微笑み頷いた。

『ケロロ君!?・・うん、一緒に帰ろう!』
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