kira事件、特別捜査本部・二千五◯二号室


□「accept an Invitation」(さる作)
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・・・ふと、眼を開ける。見渡す限り誰も居ない広大な砂漠の中、足首まで砂に埋もれたまま立ち尽くす僕が居る・・。風も無い白夜の様に辺りは静まり返り、一瞬自分の存在こそが間違いなのではと錯覚すら覚える。僕は・・月・・夜神月・・デスノートを使って理想の世界の下、神になる筈だった。だが、全ては無に帰した・・最後は利用していたと筈の死神“リューク”に名前を書かれ、不様に死んだ・・。僕が僕の身体を離れる時見た死顔は、欲にかられた只の薄汚い男の醜い顔だった。全ては終わってしまった・・全てはこの足元の砂の如くはかない物となった・・此処に今存在している僕も又、何れはこの空間に溶けて消え去るのみ・・全ては無駄な事だったのだ。僕は、もう疲れた・・このまま砂の上に腰掛けて白夜の様に輝く空を眺めていたら、苦しみさえ無くなりこの意識さえも飲み込んでくれるだろう・・何もかも消え失せたら・・・僕は何処に行くんだろう・・耳鳴りが心を苛む・・誰も居ない・・誰も来ない・・誰も触れない・・
嫌だ・・嫌だ・・!嫌だぁ!?こんなのは嫌だ!?淋しいのは嫌だ!?父さん!母さん!粧祐!ミサ!・・誰でも良い、声を掛けてくれ!?触れてくれ!?・・一人にしないで・・!!
顔を手で覆い、ありったけの声で叫ぶ。砂を握り締め子供の様に泣き叫ぶ。指の間から涙が零れ落ちる・・何も有る筈が無い・・何も・・・不意に冷たい指先が僕の手から流れ落ちる涙に触れた。

『・・私の名前は呼んで貰えないんですか?』

聞き覚えのあるこの声・・有り得ない・・此処に奴がいる筈が無い!?・・僕は、その“有り得ない”者を求める様に顔を上げた。涙で滲むその視界の先に僕が殺したこの世で最も求める者が、その存在を露にしていた。暗褐色の瞳に癖の有る柔らかい髪・・僕に優しく囁く形の良い唇が、柔らかく微笑む。驚きに声の出ない僕は唯、彼を見詰めるだけだった。竜崎は何も気にする事も無く、僕の頬を伝う涙を拭い髪に触れる。

『・・・如何して、此処に・・?お前は・・違う場所にいる筈だ・・間抜けな僕を嘲りに来たのか・・?』

搾り出す様に出した声は、辛らつな・・陳腐な物だった。違う・・こんな事を言いたいんじゃないのに・・

『・・ねぇ・・ライト君。私はずっと、貴方の事を呼んでいたんですよ・・?』

『え?』

『貴方の言う通り、私はこの上の・・遠い上に居たんです。穏やかな日を過ごしていました。ワタリもメロも居ましたよ・・皆で貴方の事で愚痴ったりして・・でも・・ある時、泣き声が聞こえて来たんです・・。切なくて、悲しい・・寂しいと泣く声が・・気になって声の主を探していたら、貴方がこんな所で、一人きりで泣いてるのが見えて・・・皆が止めるのも聞かずに来てしまいました。』

竜崎が僕の頬に手を当てる・・・あぁ・・温かい・・僕は竜崎の手に自分の頬を押し付ける。

『・・恨んでいないのか・・?僕はお前を殺したんだぞ・・?』

苦笑いの竜崎は僕に軽いキスをして、抱き締める。

『悔しかったですよ・・でも、それ以上に貴方が心配で・・恋しかったです・・。もう一度触れる事が出来たならと、ずっと思ってました。』

竜崎の肩が、僕の流した涙で濡れる

『こんな事・・神が許す訳が無い・・』

竜崎は、僕の顔を両手で包み込み真っ直ぐに見詰める

『ライト君・・私の名前は“エル”・・神々の一人と同じ名前なんですよ?神と同じ名を持つ私が、貴方の許に来るのに誰の許しが居るんですか?』

僕は・・結局お前に救われるんだな・・孤独に生きていた時も・・“死”の世界でもがいている時も・・

『・・この人生で一番の後悔は・・お前を殺した事だ・・お前のいない世界は、とてもつまらなかったよ・・竜崎・・僕が塵になって消えるまで、傍に居てくれ・・。』

『・・貴方の姿が消え失せても、私の魂が朽ち果ててもずっと傍に居ますよ・・』

言えなかった言葉・・・絡めあう指先・・・求め合う魂・・・今、何も無かったこの世界が色付き始める・・−。《完》

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