kira事件、特別捜査本部・二千五◯二号室


□「XYZ(=ワィミーズの内緒話☆)」(さる作)
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XYZ・・この暗号の様な言葉は私の思い出。此れはLと私が出会うずっと以前にあった話・・・。


暗く静まり返った部屋の中、PCの灯りだけが辺りを照らしている。ソファに座り膝を抱えたままうたた寝しているLの肩にそっと手を触れる。信頼されているのか微動だにせず眼を閉じたままのLにそっと話しかける。

『L・・風邪を召されますし疲れも取れません・・どうぞ横になってお休み下さい。』

私の言葉に彼が眼を開ける。未だ眠そうな顔を向け首を振る彼を宥める様に小さく囁く。

『・・大丈夫です。皆様は別室でお休みになられましたから今起きているのは私だけです。誰もこの部屋には来ません。』

その言葉を待っていたのか・・私以外に見せる筈の無い微笑を浮かべソファーに横になり寝息を立てるL・・この方に仕える様になってもう何年たったのだろう?初めて出会った時は私が屈まなければお顔を見れなかったのに、今では私と肩を並べるまでに成られた。父親が息子に対して思う様な気持ちで寝顔を見る。・・・この子は本当に母親に似ている。一度だけ見たLと母親の写っている色褪せた写真には、Lと良く似た面立ちの・・美しいブルーの瞳をした黒髪の女性が幼いLを抱きしめ微笑んでいた。あれを見たのは・・・先代のLが亡くなって直ぐの冬の事だったな。先代の部屋をロジャーと共に片付けていた時、先代のベッドの枕の下に忍ばされて一枚の写真が其れだった。私が不思議そうにその写真を見ているとロジャーが覗き込みながらこう言った。

『・・あぁ、其れは私があの子を迎えに行く時に持たされた写真だな。先代が昔捜査の為に訪れた事がある街で、その時に世話になった人間からあの子の事を聞いたらしい・・って、如何した?』

『いや・・・この女性は幾つ位だ?』

『?・・確か・・23〜4だと言っていたかな?何故だ?』

『・・いや、この人に良く似た女性を知っているんでね・・』

ほんの少し苦い思い出だが、私にとっては大切な思い出。彼女は今、何処で何をしているんだろうか・・?そんな事を思いながら何と無くその写真をポケットにしまい込んだ。片づけがひと段落した頃、ポツリとロジャーが呟いた。

『・・さっきの話だが・・もしかして彼女の事か?』

そんな話の事などすっかり忘れかけてた時にそんな事を言われた私は困惑していたがロジャーはお構い無しに話を続ける。彼の悪い癖だ。

『彼女の事は不運だったとしか言い様が無いな。君が興味を持つ女なんてそうはいなかったが、彼女相手なら理解できるよ。』

其処まで言われた時、私の脳裏に甦るある日の記憶・・あれは私とロジャーが同じ任務に就いた時だ。その頃の私は、自分に自信を持った嫌なタイプの男だった。ロジャーはその任務の後、退任し先代Lの下で働く事が決まっていた頃で私はその事に対して物凄く不満を持っていた。その日もレストランで話しながら酒を楽しんでいたな。

『ロジャー、何故君ほどの男が得体の知れない組織に行くなんて言うんだ?』

私のこの質問にロジャーは微笑みながら答える。

『あの方の事を知ったら君もそうしたくなるさ。それに、この縦割りの世界にはもううんざりなんでね。』

理解できなかった。自分の実力を発揮できるのは、この世界だけだと固く信じていたからだ・・今、考えれば軍人特有の鉄頭だったと思う。私は首を振りながら“理解できない”と言う様な仕草をして酒を煽った。少し飲み過ぎだと咎めるロジャーを尻目に次の酒を注文しようとした時だった。

『もうお止しよ。アンタ、飲み過ぎだよ。』

背後から若い女の声が聞こえて来た。振り向くと其処にあの写真の女性と同じ黒髪の女が立っていた。違う所が有るなら、彼女の眼はグリーンだと言う事位だろう。レストランの制服を着ている彼女は忙しそうに手を動かしながら私達に笑顔で話し掛ける。

『あんた達、旅行者?だったら喧嘩は止めときな。つまらなくなるよ。特に一人は飲み過ぎだよ。』

『それはご忠告ありがとう、お嬢さん・・それこそ余計なお世話だがね。』

『キール、止めろ。絡むんじゃない。』

咎めるロジャーの声を打ち消す様な大きな声でその女は話す。

『へぇ・・アンタ、キールって言うの?あたしの好きな酒の名前だね。そっちのアンタは?』

『え?あ、私はロジャーと言います。宜しく・・ええと・・』

『ナサエル。この辺の奴等はエルって呼んでる。』

飛び切りの笑顔でそう答える彼女は私達に開く握手を求めて来た。余りにも人懐こいその笑顔と、屈託の無さに押された私達は言い争っていた事すら忘れていた。
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